7月のベストセーブは苦しむチームを鼓舞する守護神の確かなセーブ スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成…

7月のベストセーブは苦しむチームを鼓舞する守護神の確かなセーブ

 スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は7月の「月間ベストセーブ」にベガルタ仙台のGKヤクブ・スウォビィクのプレーを選出。第21節の浦和レッズ戦、第22節の北海道コンサドーレ札幌戦で見せたプレーから3シーンを選出した。
 
 DAZNの別番組の企画で現役GK62名に行ったアンケートから「今季すごいと思ったGK」の第1位に選ばれたスウォビィク選手。過去には楢﨑氏もその凄さを「THE ANSWER」で語っていただけに、待ちに待った対談が実現した。

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楢﨑「スウォビィク選手、はじめまして。今日はよろしくお願いします!」

スウォビィク「楢﨑さん、はじめまして。日本のレジェンドプレーヤーに月間ベストセーブとして選出していただいて光栄です。ありがとうございます」

楢﨑「僕はレジェンドではないですよ(苦笑)。同じピッチで対戦できなかったのが残念です。ところで、スウォビィク選手はチームメイトにどのように呼ばれていますか?

スウォビィク「クバと呼ばれています。だから楢﨑さんもぜひ、そう呼んでください!」

楢﨑「ではクバ選手、よろしくお願いします。今回、7月の月間ベストセーブとして3つのシーンをチョイスさせてもらいました」

スウォビィク「実は自分のことを話すのがあまり得意ではないんです。でも貴重な機会なので頑張ります」

楢﨑「僕も苦手なので大丈夫です(笑)。リラックスしていきましょう!」

スウォビィク「よろしくお願いします」

――最初のシーンは第21節浦和レッズ戦、6分のシーンです。右サイドの西大伍選手からのクロスをキャスパー・ユンカー選手が頭で合わせて狙いましたが、スウォビィク選手が見事にセーブしました。

楢﨑「試合序盤のビッグプレーでGKとしてはリズムを掴みやすい反面、『大変な試合になるな』という予感もあったのでは?」

スウォビィク「浦和のような強豪チームとの対戦では、とにかく集中することが大切と自分に言い聞かせています。特に試合の立ち上がりは重要な時間帯なので、ここでセーブできたことはチームにとっても自分自身にとっても大きかったと思います」

楢﨑「スピードのあるクロスボールと打点の高いヘディングは守る側にとって非常に難しい。この場面はどのような思考で対応したのですか?」

スウォビィク「まずサイドからゴール前にボールが入ってきた時点で、クロスボールに対して自分が前へ出てアプローチするのか、それとも構えてシュートへの準備をするのかという判断がありました。瞬時の判断ですが、自分はシュートに備える選択をして良いポジショニングを取ることができたからこそ、結果としてシュートを防げたのだと思います」

楢﨑「GKという専門職の経験者からすれば一般的な考え方だけど、あまり語られないことをクバ選手が言ってくれました。僕も今現在、指導者の立場として、まずはクロスに対してキャッチや弾くといったプレーを狙うことを伝えていて、そのためにはゴールマウスを飛び出していいかどうかの判断があります。次に、前へ出られなかった時には正しいポジションを取ってシュートに対してリアクションする準備をしなければいけません。一つひとつの動作に順番と判断があって、クバ選手が言ってくれたことはベーシックなことだけど、それを正しく正確にやれているからこそのファインセーブです」

スウォビィク「褒めていただけるのはうれしいのですが、照れますね(笑)。ポーランドでプレーしていた時期に、あるコーチから『サッカーはチェスに似ている』と言われたことがあります。チェスは盤面上で相手の出方をうかがいながら、こちらがどのような手を打つかを判断して実行するゲームです。サッカーも似た性質があって、この場面でも相手をしっかりと見て判断できたことがシュートセーブにつながったと思います」

楢﨑「このシーン、シュートがたまたま正面に飛んできて運が良かった、で終わらせてしまう人がいるかもしれない。でも、さまざまな判断がある中で最も良いポジションを取っているからこそ正面で受けることができた。クバ選手は腕を伸ばす、体を倒すといった動作にも優れているけど、それ以前のベーシックな部分が素晴らしいパフォーマンスにつながっていることを再認識できました」

スウォビィク「日本には才能ある選手がたくさんいて、個々の技術がとても高いと感じています。だから、こういったベーシックなところで相手のストライカーに対して先手を取って行動することが大事だと感じます」

スウォビィク選手のセカンドシュートへの対応が早い理由とは

――続いてのシーンは、同じ試合の後半の立ち上がりに小泉佳穂選手とユンカー選手のシュートを連続してセーブした場面です。

楢﨑「自陣でボールを失ってしまったので準備する時間が限られていたと思います。しかもシュートブロックに入ったDFの足下を抜けてくるシュートで対応しづらかったのでは?」

スウォビィク「前半を0-0で折り返し、先制点の持つ意味が大きくなっていることは理解していました。この場面は急な展開で難しかったですが、前半立ち上がりと同じように集中力を高めていたからこそ良い反応ができました」

楢﨑「反応速度が速く、ハンドリングも強かった。さらにセカンドアクションも素晴らしくて、一連のプレーのレベルが高いという印象でした。今回選んだセーブはどれもベストセーブですが、そのなかでもあえてベストセーブを選ぶとしたら、このシーンを挙げたいです」

スウォビィク「最初のシュートをキャッチできれば良かったのですが、それができなかったので次のシュートに備えるというところですぐに頭と体を切り替えました。なんとかファーストシュートにもセカンドシュートにも良い反応ができました」

楢﨑「日本では体が大きく且つ素早く動ける選手を見つけるのが難しいという認識ですが、ヨーロッパのGKは日本人以上に大きくても俊敏な動きをできる選手が多くいます。クバ選手がJリーグで実際にこういったプレーを見せてくれることは、日本人の大きな選手にとっても希望や可能性を示していると思います」

――最後は、第22節北海道コンサドーレ札幌戦での86分の場面。チャナティップ選手が振り向きざまに放ったシュートを右手でセーブしました。

楢﨑「このシーンは、シュート地点の距離が近くもなく遠くもなく難しい距離感だったと思います。それなのにダイビングの動作がとても素早かった」

スウォビィク「試合終盤でしたが、1-1という状況で絶対に失点するわけにはいきませんでした。確かに難しいリアクションを求められるシュートでしたが、ギリギリのところでセーブできました」

楢﨑「3つのシーンすべてにおいてセカンドシュートへの動きがとても速かったことにも注目したいです。札幌戦では結果的に相手がオフサイドポジションにいましたが、それでもシュートをしっかりセーブしていましたよね?」

スウォビィク「セカンドシュートへの対応は自分の意識や性格が出ているのかなと。ファーストシュートをキャッチできなくても、最後まで戦い抜くというポリシーを発揮できたと思います。仙台には石野智顕GKコーチという素晴らしい指導者がいます。彼のおかげで日々レベルの高いトレーニングができていますし、一緒に仕事をできて光栄に感じています」

楢﨑「石野くんは僕と同い年で高校時代に対戦していました(編集部注:楢﨑氏は奈良育英高校、石野氏は清水商業高校/現静岡市立清水桜が丘高校)。彼は僕よりも有名なGKでした(笑)。これまでも月間ベストセーブに選ばせてもらっていますが、すべてに共通しているのは日々のトレーニングあってこそのセーブということ。クバ選手が話しているとおりだと思います」

スウォビィク「自分のキャリアや人生において大切にしているのは、まず今日の練習でうまくなること。そして明日の練習では昨日の自分より進化すること。そういった意識で毎日を過ごしています」

母国・ポーランドと日本とのGKトレーニングや指導法の違い

楢﨑「毎日を高い意識で過ごすことが高いパフォーマンスにつながっているのですね。トレーニングの話題になったので、ぜひ聞いてみたいのですが、ポーランドと日本の指導法やトレーニングで違いを感じることはありますか?」

スウォビィク「一概に比較することはできませんが、ポーランドのGKコーチもさまざまです。ニュージェネレーションもいますが、いわゆるオールドタイプの指導者もいます。自分が若い頃は、1年間を1週間ずつに区切って同じサイクルでトレーニングを行っていました。だから何週間か経過した頃には次にどんな練習をするのかが分かってしまい、成長していることを実感しにくかった時期もありました。その一方で前所属クラブでは、実戦に近いトレーニングが多く、現代サッカーに求められている要素をトレーニングに落とし込んでくれていましたね」

楢﨑「確かに指導者それぞれで考え方は違いますよね。いろいろなコーチから教わることで、良い部分を吸収していくというのは日本でも同じイメージかもしれないです」

スウォビィク「大切なのは、いかに実戦に近いトレーニングを積むかだと思っています。それが試合に向けた良い準備につながるのではないでしょうか」

楢﨑「すべてのポジションに共通していることですが、特にGKは何歳になっても学ぶこと、得ること、吸収できることがあるポジションです。僕も現役時代はそういった考えで毎日取り組んでいましたから」

スウォビィク「そのとおりだと思います。自分はまだまだハングリーですし、日々成長していきたいと思っています。昨日の自分よりもっと良い選手になっていきたいです」

――最後に、スウォビィク選手から楢﨑さんへ何か聞いておきたいことはありますか?

スウォビィク「実はYouTubeで楢﨑さんのプレーを見ていたのでとても尊敬しています。そういった方に自分のプレーをベストセーブに選出してもらい、こうして対談できたことを光栄に思っています。本当にありがとうございました」

楢﨑「こちらこそ貴重な時間を割いてくれてありがとうございます。最後に僕からも一つ聞いてみたいことがあるんですが、日本でGKをやっている人は変わっている人が多いということになっているんだけど、ポーランドではいかかですか?(笑)」

スウォビィク「ポーランドでもGKは少し変わっている人間が多いという認識です(笑)。どんなに悪天候でも劣悪な環境でもプレーし続けなければいけないですし、ゴールを守るためには汚れても痛くてもダイビングしなければいけません。確かに少し変わっている人にしか務まらないポジションかもしれませんね(苦笑)」

楢﨑「ポーランドも同じでしたか(苦笑)。以前、川崎フロンターレのチョン・ソンリョン選手にも同じ質問をしたのですが、韓国でも同じ認識でした」

スウォビィク「それは興味深いですね(笑)。自分が小さい頃、雨が降っている日に練習をしていたら、泥だらけの練習着が水を吸って重くなってしまい、それをカバンに詰めて持って帰って一生懸命に洗濯していました。でも、そうやって努力した日々が自分の糧になっています。何かをすれば、何か大きなものが返ってくる。それが僕にとってのGKというポジションの魅力です」

楢﨑「その精神を僕も指導者として伝えていけるように頑張ります(笑)。今日は貴重な話を聞かせてくれて本当にありがとうございました。今度は対面で会えるのを楽しみにしています」

スウォビィク「こちらこそありがとうございました。また自分のプレーを選出してもらえるように頑張ります!」

■楢﨑正剛

1976年4月15日生まれ、奈良県出身。1995年に奈良育英高から横浜フリューゲルスに加入。ルーキーながら正GKの座を射止めると、翌年にJリーグベストイレブンに初選出された。98年シーズン限りでの横浜フリューゲルス消滅が決まった後、99年に名古屋グランパスエイトへ移籍。2010年には、初のJ1リーグ優勝を経験し、GK初のMVPに輝いた。日本代表としても活躍し、国際大会では2000年のシドニー五輪(OA枠)、02年日韓W杯などに出場。19年1月に現役引退を発表し、現在は名古屋の「クラブスペシャルフェロー」に加え、「アカデミーダイレクター補佐」および「アカデミーGKコーチ」を兼任。21年からはJFAコーチとしても活躍している。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)