国内ロードレースのプロリーグ「三菱地所JCLロードレースツアー2021」の今季第5戦「コーユーレンティアオートポリスロードレース」が8月8日、大分県日田市のオートポリスインターナショナルレーシングコースで開催された。オートポリスは、2007…

国内ロードレースのプロリーグ「三菱地所JCLロードレースツアー2021」の今季第5戦「コーユーレンティアオートポリスロードレース」が8月8日、大分県日田市のオートポリスインターナショナルレーシングコースで開催された。


オートポリスは、2007年には全日本選手権、2013年にはインターハイに用いられるなど、ロードレースにも馴染みのあるサーキットである。07年のレースは深い霧の中の開催となり、サバイバルレースが展開された。今回も接近する台風の影響が現れ始めた中のスタートとなり、また、厳しいレースになることが予想された。

サーキットは標高800mの山肌に設けられており、前半が下り基調、後半が上り基調となるアップダウンコース。4.674kmのサーキットを25周する116.85kmで競われる。ラスト1kmからの500mは7%程度の勾配が続く。展開次第では集団が、大きくばらけることもあるだろう。



スタートラインに並ぶリーダージャージを着る選手たち(各カテゴリーの首位選手)

スタートラインには、各リーダージャージが並ぶ。個人総合のリーダー、イエロージャージとスプリント賞であるブルージャージを新城雄大 (キナンサイクリングチーム)が保持しており、ブルージャージは繰り上げで次点の小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が着用。山岳賞であるレッドジャージは山本元喜(キナンサイクリングチーム)、新人賞のホワイトジャージは、本多晴飛(VC福岡)が着用する。



ホームチームとなるスパークルおおいたレーシングチームが最前列に並ぶ

地元チームであるスパークルおおいたレーシングチームを前列に迎え、レースがスタート。国際レース以外では通常は認められないチームカーの運用が認められ、華やかな隊列がサーキットを回ることになった。チームカーの運用に不慣れなチームも多く、実戦への訓練の場として、チームカーを走らせることになったのだという。



チームカーが連なり、サーキットには臨場感のある光景が広がった

東京五輪に日本代表として出場した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)がリーグに復帰し、3月の開幕戦以来、久しぶりにレースを走ることになったことも注目を集めていた。スタート直後から雨が降り始め、一気に路面はウェットコンディションに。台風の影響を受け、雨は次第に強くなり、選手たちに容赦なく強く降りつける。



集団から抜け出したい選手たちのアタックが繰り返される。先頭は果敢に攻めた宮崎泰史(スパークルおおいたレーシングチーム)

悪天候にもかかわらず、レースは序盤から活性化し、激しいアタック合戦が展開された。地元を背負う宮崎泰史(スパークルおおいたレーシングチーム)らが繰り返しアタック。小さな逃げの発生と吸収を繰り返し、雨の中、選手たちの体力を奪っていくが、なかなか大きな動きが生まれない。
アップダウンが続くサーキットでは、上り区間も長く、展開の中で力を使い果たし、脱落していく選手が徐々に増えて行った。最初の周回賞が設定された 10 周目を前に集団は大きく割れ、23 人にまで絞られた。



次第に集団は絞り込まれていった

アタックと分裂、合流を繰り返し、先頭集団はさらに人数が削られていく。集団に残ったのはわずか 10名だった。ここには、那須ブラーゼン(谷順成)、宇都宮ブリツッエン(増田)チーム右京 相模原(石原悠希)、ヴィクトワール広島(阿曽圭佑)、スパークルおおいたレーシングチーム(孫崎大樹)と、5チームが1名ずつメンバーを残したが、唯一、キナンサイクリングチームは、ここに 5 人のメンバーを残していた。



単騎ながら、状況を打破するために攻撃し続けた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

圧倒的な数的有利の中、各選手が次々と攻撃を繰り返していく。増田が先頭に立ち、ペースアップを図るなど、対抗策を講じるが、5名で攻撃を繰り返すキナンに対し、一人では太刀打ちする術がない。ラスト3周、キナンは山本元喜、弟の大喜が連続してアタックを繰り出した。このカウンターで、ベテラン畑中勇介(キナンサイクリングチーム)が勝負勘を生かした絶妙なタイミングで飛び出す。キレのあるアタックは一発で決まり、このまま集団との差を開いていく。

キナンの波状攻撃に対応してきた他チームのメンバーには、なおも残るキナンメンバー4名を振り切り、畑中を追う余力はない。



落ち着いた様子で独走を続ける畑中勇介(キナンサイクリングチーム)

畑中は安定したペースを刻み、独走を続けていく。



独走を続け、笑顔でフィニッシュラインを越えた畑中



2位の座は石原悠希(チーム右京 相模原)が勝ち取った

畑中は残り2周半を独走し、後続に1分半ものタイム差をつけてフィニッシュ。今季キナンに加入して以来、初めての優勝であり、2017年の全日本選手権の独走優勝を彷彿(ほうふつ)させる走りだった。
2位には石原が、3位に山本大喜が入り、キナンは表彰台の1~3位を占める結果になった。



キナンが表彰台を独占した



イエロー、ブルージャージは畑中の手に移った

このレースを経て、イエロージャージとブルージャージは、ともに畑中が獲得した。新人賞のホワイトジャージは宇賀隆貴(チーム右京 相模原)に移った。山岳賞のレッドジャージは山本元喜(キナンサイクリングチーム)が守っている。



今回も強さを見せたキナンサイクリングチーム。イエロージャージはチーム内で畑中に移動した

スランプが続き、久しぶりの優勝となった畑中は表彰台で喜びを語った。前戦で調子の良さを感じ、そのあとさらに調子が上がっていることを感じていたと言う。もともと勝利を託されていたわけではないが、コースに向いていることがわかり、自分で勝負するという理解で走っていたそうだ。最後は「後ろはチームメイトに任せ、フィニッシュまで自信を持って走った」と振り返る。勝利に際し「応援してもらい、いつも完璧な状態でスタートラインに立たせてもらっている」と、チームへの感謝を強く語った。

次節は9月に山口県で開催される山口ながとクリテリウム。広島、大分と好調を見せたキナンが首位を走り続けるのか、増田が復帰したブリッツェンが首位を取り返すのか、注目したい。

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【結果】JCLプロロードレースツアー2021
第5戦コーユーレンティアオートポリスロードレース 116.85km
1位/畑中勇介(キナンサイクリングチーム)2時間52分13秒 0
2位/石原悠希(チーム右京 相模原)+1分35秒140
3位/山本大喜(キナンサイクリングチーム )+1分36秒80
4位/谷順成(那須ブラーゼン)+1分37秒50
5位/山本元喜(キナンサイクリングチーム)+1分40″秒40
6位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン )+1分41秒30

【イエロージャージ(個人ランキングトップ)】
畑中勇介(キナンサイクリングチーム)

【ブルージャージ(スプリント賞)】
畑中勇介(キナンサイクリングチーム)

【レッドジャージ(山岳賞)】
山本元喜(キナンサイクリングチーム)

【ホワイトジャージ(新人賞)】
宇賀隆貴 (チーム右京 相模原)

【コーユーレンティア敢闘賞】
宮崎泰史(スパークルおおいたレーシングチーム)

【地元賞】
やまとや弁当(10周目の周回賞)小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
河野電気(15周目の周回賞)増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
コスモレンタル(20周目の周回賞)畑中勇介(キナンサイクリングチーム)

画像提供:JCL ロードレースツアー(株式会社ジャパンサイクルリーグ)
三菱地所 JCL ロードレースツアー2021公式サイト

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【過去のレポートはこちらから】
JCLロードレースツアー2021第4戦
JCLロードレースツアー2021第3戦
JCLロードレースツアー2021第2戦
JCLロードレースツアー2021開幕戦