8月24日に開幕する東京パラリンピック。9月5日までの12日間、22競技で熱戦が繰り広げられる。日本代表選手団は史上最多で、前回の2016年リオ大会ではゼロに終わった金メダル獲得に期待が寄せられる。そこで、5回にわたって金メダル最有力候補を…

8月24日に開幕する東京パラリンピック。9月5日までの12日間、22競技で熱戦が繰り広げられる。日本代表選手団は史上最多で、前回の2016年リオ大会ではゼロに終わった金メダル獲得に期待が寄せられる。そこで、5回にわたって金メダル最有力候補を紹介する。第3回は、車いすラグビー日本代表チームだ。

随一の得点源となるキャプテン&エースの存在


右端が日本のエース池崎大輔選手、その左隣がキャプテン池透暢選手

16年リオ大会で史上初のメダル(銅)を獲得した車いすラグビー日本代表。18年世界選手権では最強軍団のオーストラリアを決勝で破り、世界の頂点に立った。現在、世界ランキングは3位。東京大会では同1位でパラリンピック3連覇を狙うオーストラリアと、同2位のアメリカが最大のライバルとされる。

金メダル獲得に欠かせないのが、キャプテンの池透暢(3.0)と、長きにわたって日本のエースとして活躍する池崎大輔(3.0)だ。池は、長身に加えて車いすの座面を高くすることで世界随一の高さを誇っている。頭上へのパスが通りやすく、日本にとっては大きな強みとなっている。

その反面、座面を高くすることでバランスを崩しやすいというデメリットも生じる。特にコンタクトプレーが許されている車いすラグビーでは、相手からのタックルで転倒することもしばしばだ。そのデメリットを埋めるため、バランスをキープするためのトレーニングを行ってきた。

また14年からキャプテンを務める池は、コート内外でリーダーシップを発揮し、チームを統率する力がある。個性派揃いのチームを一つにまとめる池のキャプテンシーあふれた姿にも注目だ。

12年ロンドンから3大会連続出場の池崎は、日本随一のポイントゲッター。その実力の高さは、世界でもトップクラスだ。近年ではアメリカのクラブチームに所属し、18、19年には全米選手権で優勝し、いずれもMVPに輝いた実績を持つ。

43歳となった今も、スピード、キレともに一級品。ゴールへの嗅覚が鋭く、ボールを持てば必ずと言っていいほどトライに持っていく力がある。厳しいマークにあう中でも、個人技で突破していくパワフルな池崎のプレーが、日本の大きな武器の一つだ。

チーム最年少と唯一の女性選手にも注目


前列右から2人目が倉橋香衣選手、前列左から2人目が橋本勝也選手

池、池崎のベテラン勢の後を追って、急成長を見せているのが、チーム最年少19歳の橋本勝也(3.0)だ。中学2年生の時に車いすラグビーを始め、高校入学と同時に日本代表の合宿に初招集。同年の18年、世界選手権のメンバーにも選出されるなど、わずか2年で日本代表入りした逸材だ。

パワーやスタミナ、スピードに加えて、クイックネスにも磨きがかかる橋本だが、何よりの武器は“負けん気の強さ”だろう。チーム最年少というポジションに甘んじることなく、自分に厳しい橋本。自らのプレーに納得がいかない時の悔しがり方は人一倍だ。「世界一のプレーヤー」を目指す19歳のパラリンピックデビューに目が離せない。

チームで唯一女性で代表に選出されたのが、倉橋香衣(0.5)だ。男女混合の車いすラグビーでは、コート上の4人の持ち点の合計が8.0点以内というルールがあり、女性選手が出場すると1人につき0.5点の追加がチームに認められる(最大10点まで)。倉橋が入るラインナップでは、0.5点分、持ち点が高い組合せが可能となり、戦略の幅を広げることができる。

男性の中でもチームに貢献するプレーが求められるが、倉橋は相手のハイポインターの動きを抑え、味方の走るコースを作るなど、重要な役割を担う。パワーでは勝てない相手にも、頭脳プレーで立ち向かう。

出場する8カ国が4カ国ずつ2つのプールに分かれて戦う1次リーグで、日本はオーストラリア、世界ランキング6位のフランス、同7位のデンマークと同じA組に入った。上位2チームが準決勝に進出することができる。

1次リーグでオーストラリアを破り、1位通過すれば金メダルへの可能性は高まるはずだ。リーグ最終戦での世界覇者との対戦に注目が集まる。