東京オリンピック開催により、延期されていた一部の試合を除いて中断していたJ1リーグが8月9日に再開。リーグ戦のクライマ…

 東京オリンピック開催により、延期されていた一部の試合を除いて中断していたJ1リーグが8月9日に再開。リーグ戦のクライマックスにあたる終盤戦が幕を開けた。

 目下の優勝争いは、首位を独走するディフェンディングチャンピオンの川崎フロンターレを、2位の横浜F・マリノスが勝ち点6ポイント差で追う展開。3位の鹿島アントラーズと1位の川崎との勝ち点差が21ポイントもあることを考えると、優勝争いは川崎と横浜FMに絞られたと見て間違いないだろう(J1第24節終了時点、以下同)。



14年ぶりに大分に帰ってきた梅崎司

 そんななか、各クラブは8月13日に締め切られた夏の移籍マーケットでさまざまな動きを見せている。

 たとえば川崎は、ドイツのデュッセルドルフに新天地を求めた田中碧、イングランドのブライトンに移籍した三笘薫(今季はローン先のベルギー1部リーグのサン=ジロワーズでプレー)を失った代わりに、重慶両江(中国)からブラジル人FWマルシーニョを補強した。

 対する横浜FMも、トゥールーズ(フランス)に移籍したオナイウ阿道が抜けた穴を埋めるべく、浦和レッズからFW杉本健勇をレンタルで加え、すでにザンクトパウリ(ドイツ)から移籍してきた宮市亮とともにピンポイント補強で攻撃陣の戦力ダウンを回避している。

 逆に派手な動きを見せたのが、ACL出場権獲得を目指すチームと、残留争いの渦中にあるチームだ。そのなかでも今夏の移籍マーケットで最も大きな話題を提供してくれたのは、三浦淳寛監督率いる5位のヴィッセル神戸だろう。

 得点ランキングのトップに立っていたFW古橋亨梧がスコットランドの名門セルティックに引き抜かれたのは大きな痛手だが、代わりにニューカッスル(イングランド)との契約を解除したFW武藤嘉紀が加入し、さらにブレーメン(ドイツ)のFW大迫勇也、元バルセロナのスペイン人FWボージャン(無所属)というビッグネームの獲得を立て続けに発表。前線の駒は一層の厚みを増した格好になった。

 昨季はエイバル(スペイン)でプレーした武藤と、ドイツで9シーズンにわたって活躍した大迫は、周知のとおり日本を代表する実績十分のFWだ。これにボージャンが加わったことで、イニエスタ、セルジ・サンペールとともにバルセロナの下部組織出身トリオも結成された。

 もちろん、チームとしての当面の目標はACL復帰となる。だが、成績うんぬんを抜きにしても、サッカーファンにとっては見どころ満載の要必見チームになった。

 積極補強という点では、7位の浦和も負けていない。出入りの人数ではOUT(8人)が上回るが、その中身はIN(5人)が勝ると言える充実の補強だ。

 まず、ミッティラン(デンマーク)からドイツ人の両親を持つデンマーク人CBアレクサンダー・ショルツの獲得を発表すると、続いてマルセイユ(フランス)から日本代表SB酒井宏樹を補強して最終ラインを強化した。

 また、中盤に水戸ホーリーホックのMF平野佑一、前線には柏レイソルの日本代表FW江坂任、ノルウェーのスターベクからJリーグ未経験の長身FW木下康介を獲得するなど、個性豊かな面々がメンバーに加わった。すでに江坂、酒井、平野は新天地デビューを飾っており、後半戦は一気にアップグレードした陣容でACL出場圏内をうかがう構えだ。

 そのほかの上位陣では、ポルティモネンセ(ポルトガル)から安西幸輝が2年ぶりに復帰を果たした3位の鹿島も気になるところ。また、MF松岡大起(→清水エスパルス)とFW林大地(→シント・トロイデン/ベルギー)が退団した4位のサガン鳥栖は、鹿島から小泉慶と白崎凌兵(レンタル移籍)を、コンサドーレ札幌から岩崎悠人(レンタル移籍)をそれぞれ補強している。

 一方、J1残留を目指して大量補強を断行したのが、現在最下位の横浜FCだ。実に5人もの外国人選手が今夏に新加入している。

 とくに新守護神としてザンクトパウリから加わったU−24ドイツ代表GKスベンド・ブローダーセンは、東京五輪では控えに甘んじたものの、その実力は本物だ。Jデビュー戦となった名古屋グランパス戦(第23節)で決定機を阻止するなどチームの勝利に貢献し、続くベガルタ仙台戦(第24節)でもファインセーブを連発。ゴールレスドローに終わった試合でMVP級のハイパフォーマンスを見せた。

 また、フィールドプレーヤーとしては、DFガブリエウ(←アトレチコ・ミネイロ)、FWフェリペ・ヴィゼウ(←セアラー/レンタル)、FWサウロ・ミネイロ(←セアラー)、MFアルトゥール・シルバ(←FC東京/レンタル)という4人のブラジル人を補強。アルトゥール・シルバ以外の3人はすでにJデビューを果たしている。

 補強効果が見え始めるのは、もう少し先のことになるだろう。だが、彼らがかかわった直近2試合で勝ち点4ポイントを、それ以前の2試合を含めると4試合で8ポイントを稼いでいる横浜FCは、残留に向けて勢いをつけたに違いない。

 同じく19位に低迷する大分トリニータは、5選手を放出した代わりに柏からFW呉屋大翔が加入し、湘南ベルマーレから梅崎司が14年ぶりに復帰。中盤にはMF野嶽惇也(←鹿児島ユナイテッド)とMF増山朝陽(←神戸)を加え、残留するための陣容を整備している。

 降格圏から3ポイント差しかない14位の清水エスパルスも、鳥栖からMF松岡大起、神戸からFW藤本憲明(レンタル)、サンフレッチェ広島からDF井林章を補強したほか、FCチューリッヒ(スイス)からコソボ代表MFベンジャミン・コロリとフラメンゴ(ブラジル)からMFホナウドという助っ人ふたりを獲得。早い時期に残留を確定させるべく、フレッシュな選手を加えることに成功した。

 それとは対照的に、16位のヴォルティス徳島はガンバ大阪からFW一美和成を、17位の湘南は鹿島から杉岡大暉(レンタル復帰)を、そして18位の仙台はFW富樫敬真(←V・ファーレン長崎)とDF福森直也(←清水)を加えたのみ。現有戦力をベースに残留を目指すことになった。

 果たして、各チームが行なった夏の補強策の結果はいかに......。とりわけ「静」と「動」でくっきり分かれた残留争いの渦中にあるチームの行方が注目される。