古橋亨梧がまるで背中から翼がはえたように、ヨーロッパで飛翔している。三笘薫、田中碧、林大地などヨーロッパ各国に散っていっ…

古橋亨梧がまるで背中から翼がはえたように、ヨーロッパで飛翔している。三笘薫田中碧林大地などヨーロッパ各国に散っていった若手プレーヤーたちの活躍も待たれる。Jリーグに目を移せば、ドイツからのGK、ポルトガルからはFWなど、代表クラスがやって来た。そして大迫勇也酒井宏樹など長らくJのピッチでは見られなかった現役代表プレーヤーが帰って来る流れも生まれている。夏の移籍市場で日本をめぐるプレーヤー勢力図は大きく変わった。これからどのように展開していくのか、お楽しみはこれからだ。

■日本サッカーの育成の果実が続々と欧州へ

 今年の夏もまた、何人もの日本人の若者がヨーロッパに旅立った。

 ヴィッセル神戸の古橋亨梧はスコットランドの古豪セルティックに移籍。ホーム・デビュー戦となったスコティッシュ・プレミアシップのダンディーFC戦でハットトリックという華々しいスタートを切った。

 東京オリンピックではバックアップメンバーとして招集されながら結局全6試合で先発出場を果たして前線で奮闘したサガン鳥栖の林大地はベルギーのシントトロイデンに移籍。そして、J1リーグで首位を独走している川崎フロンターレからは、ともにUー24日本代表でオリンピックを戦った三笘薫と田中碧の2人が、それぞれサン=ジロワーズ(ベルギー)とフォルトゥナ・デュッセルドルフ(ドイツ2部)に渡った。

 かつては、「ヨーロッパへの道」はJリーグのトップで活躍し、フル代表で名を残してからようやく門戸が開かれるものだった。だが、今ではオリンピック代表クラス、あるいはさらに若い世代の選手にも道が大きく開かれているのだ。

 オリンピックに参加したUー24日本代表の22人のうち、オーバーエイジ枠の3人を除いても19人中7人がすでに海外で活躍していたし、オリンピック終了後にさらに3選手の海外移籍が決まった。

 現在のように若い選手の方が高く評価されるヨーロッパのマーケットの状況を考えれば、“功成り名遂げた選手”よりも若い選手の方が海外移籍の可能性が高いのだろう。

 若い日本人選手が数多くヨーロッパのクラブとの契約を勝ち取れるようになったのは、これまでヨーロッパに渡った先輩たちがそれなりの実績を残してきたからだし、そして何よりも、日本選手が持つ能力が上がり、ヨーロッパのクラブが日本の若いタレントに興味を持つようになったからだ。日本の育成部門の成果と言ってもいい。

■有望選手の流出は避けられない道

 若いうちにヨーロッパに渡ってトップリーグで揉まれて彼らが成長していけば、それは日本代表の強化に直結し、また日本のサッカーにとっての大きな財産になる。

 今夏のオリンピックを見ても、「やはり海外の難しい環境の中で強度の高い試合を経験することが選手の成長をもたらす」ということを実感させられた。

 しかし、ここでわれわれは一つのジレンマに直面する。

 日本のトップクラスの選手の多くが国を離れてしまうということは、つまりJリーグのレベルが下がり、とくにスター選手が流出することによってJリーグの人気を引き下げてしまうことにつながる。感覚的に言えば、数多くの才能溢れる若者たちがJリーグから去っていくのは寂しいことでもある。

 想像してみよう。たとえば、吉田麻也冨安健洋遠藤航の守備陣を南野拓実堂安律久保建英らの攻撃陣が崩しにかかる……。そんな場面がJリーグで毎週のように見られたら、Jリーグの競技水準は格段にアップし、観客動員数も跳ね上がることだろう。「輸出超過国」としての悲哀とでも言うべきだろうか。

 たとえば、ここ数年FIFAの男子ランキングで常にトップの座を争っているベルギーでは代表選手のほとんどが海外(そのほとんどが、まさに“対岸”にあるイングランド)で活躍している。ワールドカップなどの登録選手リストを見ると、ベルギーの場合、国内組はほとんどいないのだ。

 スター選手の流出のおかげで国内リーグ(ジュピラーリーグ)の競技水準は残念ながらそれほど高くない。ジュピラーリーグは、いわば国際的な育成リーグ的存在となっており、各クラブは若い選手の個性を伸ばして海外クラブに売り込もうとしているのだ。

 日本のJリーグも、これからも若手選手の海外移籍という流れがさらに拡大していったとすれば、将来はベルギーのような状態となってしまうかもしれない。

 逆に「輸入超過国」の場合には、外国人選手が活躍することによって国内リーグで若手選手の出番が少なくなって、若手が育たなくなってしまうという危険がある。かつてイングランド代表が弱体化したことがあったが、その原因の一つが世界中のトップクラスの選手がプレミアリーグに流入したことによって、せっかくアカデミーで育った若手の出場機会が奪われたことだった。

 外国人選手の輸入にせよ、また自国選手の流出にせよ、数多くの弊害がある。そのため、かつては外国籍選手の人数にはかなり厳格な制限があったし、外国人選手との契約が禁止されていた国もあった。だが、それも遠い昔……。今では、外国人選手を禁止することなど考えられないことだし、また、その国のサッカーの発展のためにも海外との交流は避けて通れない。 

いま一番読まれている記事を読む