もはやカムバックについて話すのはよそう。ロジャー・フェデラー(スイス)は帰ってきたのだ。  スイス人対決となった「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/本戦3月9~19日/賞…

 もはやカムバックについて話すのはよそう。ロジャー・フェデラー(スイス)は帰ってきたのだ。  スイス人対決となった「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の男子シングルス決勝で、フェデラーはスタン・ワウリンカ(スイス)を6-4 7-5で倒し、大会最多タイ記録となる5度目の優勝を決めた。

 フェデラーは、いくつかの故障のため昨年の大半を休養に充てることを強いられたあと、今年1月の全豪オープンで18度目のグランドスラム・タイトルを獲得していた。  「僕にとっての、夢の疾走は続いている」とフェデラーは言った。  フェデラーは、このマスターズ1000の大会の間中、自分は“まだ復帰を果たそうと努めている最中なのだ”ということ、そして年の最初の3ヵ月以降のプランは立てておらず、まずは自分(の体)がどう感じるかを見てみるつもりだということを、皆に思い出させようと努め続けていた。  しかし今の彼は、よりビッグなことを考えたくなってきたかもしれない。  「全豪オープンとインディアンウェルズで優勝するというのは、僕のプランには入っていなかった。ゴールはウィンブルドンまでにトップ8に食い込むことだったんだ。だから僕は、そこにずっと早くたどり着いたことになる」とフェデラーは言った。

 「これから、シーズンの残りの期間のためのプランを立てることにするよ。特にマイアミのあとのクレーコート・シーズンのためのね。そしてそれから、何を目標にするかを見てみることにする。というのも、この夢のようなスタートのあと、明らかにゴールは変わりつつあるからね」  5度目の優勝を遂げたフェデラーは、キャリア90番目のタイトルを獲得し、オープン化以降のタイトル数のリストで、ジミー・コナーズ(アメリカ)、イワン・レンドル(アメリカ)に次ぐ3位の座をキープしつつ、今大会の優勝数で、今回は4回戦で敗れたノバク・ジョコビッチ(セルビア)とタイ記録を刻んだことになる。  35歳と7ヵ月のフェデラーはまた、1981年に31歳と5ヵ月で優勝したコナーズを抜き、インディアンウェルズの歴史上、もっとも年齢の高いチャンピオンとなった。  「本当に素晴らしい年のスタートとなった」とフェデラーは言った。「昨年はひとつもタイトルが獲れなかった。この変化は劇的だ。素晴らしい気分だよ」。  フェデラーが、マッチポイントでワウリンカをベースラインの後ろに釘付けにしつつ、フォアハンドのハイボレーを決めたとき、彼の双子の娘たちは、コートの上のボックス席で声援をあげながら飛んだり跳ねたりした。  フェデラーは今大会で戦った5試合を通し、一度しか自分のサービスゲームを落としておらず、それはワウリンカに対する決勝の、第2セット第1ゲームで起きた。彼はそこまで、4回戦のラファエル・ナダル(スペイン)に対する試合で、ブレークポイントを1つしのぐ必要があっただけで、1セットも落としていなかった。

 フェデラーは準決勝でニック・キリオス(オーストラリア)が棄権したため、不戦勝で勝ち上がっていた。  「彼の現在のプレーぶりは、ただただ美しい」とワウリンカは言った。「すべてが完璧であるように見える。彼の動きのよさは、実に驚くべきだ。素晴らしいタッチも擁しているよ。彼はテニスコート上でやり得るすべてを実践している」。  フェデラーは80分かかったこの決勝で23本のウィナーを刻み、そのうち16本はバックハンドからだった。一方のワウリンカは、1万7382人と発表された観客たちの前で17本のウィナーを決め、21本のアンフォーストエラーをおかした。  フェデラーはワウリンカとの対戦成績を20勝3敗とリードを広げ、ハードコート上での対戦記録に至っては、これで15戦全勝とした。  「彼は史上最強の選手だから、我々は皆、彼に負けることに慣れているよ」とワウリンカは言った。(C)AP