第103回全国高校野球選手権大会が開幕する。世代屈指の逸材が地方大会で敗退するケースが続出したが、決して人材不足という…

 第103回全国高校野球選手権大会が開幕する。世代屈指の逸材が地方大会で敗退するケースが続出したが、決して人材不足というわけではない。プロスカウトも注目する有望選手は誰なのか、投手編・打者編の2回に分けて紹介していこう。まずは風間球打(ノースアジア大明桜)を筆頭に好素材がひしめく投手編から。

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大会ナンバーワン投手の呼び声高いノースアジア大明桜の風間球打

風間球打(ノースアジア大明桜/183センチ・81キロ/右投左打)

今大会の目玉と言っていいだろう。今夏の秋田大会では最速157キロをマークし、小園健太(市和歌山)、達孝太(天理)、森木大智(高知)とともに「高校BIG4」の一角を占める。風間の大きな特徴は角度と馬力にある。身長183センチの長身に加え、腕が真上から出てくるためリリースポイントが高い。ストレートが低めに突き刺さると、打者はとらえるのが難しい。さらに高校屈指のエンジンの持ち主であり、爆発力のある剛球は打者のバットを押し込む。体をタテに使うフォームのため、タテ系の落ちる変化球を得意とする。ノースアジア大明桜は大会3日目の帯広農(北北海道)戦に登場する。



サイドスローから最速145キロの直球を投げ込む専大松戸の深沢鳳介

深沢鳳介(専大松戸/177センチ・75キロ/右投右打)

サイドスローの角度から最速145キロの快速球を放ち、ホームベースをワイドに使える投球が光る。今春のセンバツで中京大中京を8回3安打に抑え、前年秋からの大きな進化を披露。そのキレのある速球とスライダーとのコンビネーションは、バックネット裏のスカウト陣をうならせた。今夏は急成長した本格派右腕・岡本陸との二枚看板で千葉大会を制し、再び甲子園の舞台へ進んだ。専大松戸は大会4日目に明豊(大分)と対戦。春のセンバツ準優勝校との好カードだ。



愛知大会でプロ注目の中京大中京・畔柳亨丞に投げ勝った愛工大名電・寺嶋大希

寺嶋大希(愛工大名電/179センチ・76キロ/右投右打)

スリークオーターのしなやかな腕の振りから放たれる快速球は、最速140キロ台後半を計測する。スライダーを自在に操れて、カウント球にも勝負球にも使えて大崩れしない。愛知大会準決勝では中京大中京・畔柳亨丞と投げ合い、1失点完投勝利を収めている。愛工大名電は他にも投打とも能力の高い左腕の田村俊介、上背はないものの最速149キロを計測する右腕の野嵜健太も擁する。



今年春のセンバツで好投した広島新庄の花田侑樹

花田侑樹(広島新庄/182センチ・75キロ/右投左打)

春のセンバツで鮮烈な投球を見せ、もっとも株を上げた右腕。バランスのいい投球フォームから最速144キロの快速球を投げ込み、カットボールとフォークの変化球の精度も高い。だが、今夏の広島大会は右ヒジ炎症から復帰したばかりで、本調子にはほど遠かった。準決勝の西条農戦では4回2/3を投げ、9四死球と乱調。4番を任された打撃面で2本塁打を放ち、優勝に貢献した。



静岡大会で38イニング無失点の好投を見せた静岡の大型右腕・高須大雅

高須大雅(静岡/192センチ・84キロ/右投右打)

最速146キロをマークする身長192センチの大型右腕。早いテンポで投げ込み、変化球も巧みに操るが、あくまでも今の姿は素材段階と留意したい。20歳をすぎて大人の肉体を手に入れた頃に本格化するタイプだろう。今夏の静岡大会では37回を投げ、無失点と抜群の安定感を見せた。その快進撃は聖地でも続くのか。静岡は大会初日第2試合の新田(愛媛)戦に登場する。



島根大会決勝でノーヒット・ノーランを達成した石見智翠館・山崎琢磨

山崎琢磨(石見智翠館/185センチ・92キロ/右投左打)

厚みのある肉体で馬力を生かす剛腕と思いきや、コンパクトなテークバックで試合をまとめる術がある。今春まで肩の故障で雌伏の時期が続いたが、復帰した今夏は本領発揮。島根大会決勝戦ではノーヒット・ノーラン、15奪三振のド派手な投球内容で甲子園出場を決めた。高卒でのプロ入りを志望しており、今夏の甲子園でのパフォーマンスで人生を切り拓けるか。石見智翠館は大会7日目に弘前学院聖愛(青森)と対戦する。



センバツ初戦敗退の雪辱に燃える大阪桐蔭のエース・松浦慶斗

松浦慶斗(大阪桐蔭/186センチ・94キロ/左投左打)

右の目玉が風間なら、左の目玉は松浦になるだろう。今春のセンバツはコロナ禍による調整不足も相まって、不本意な内容で初戦敗退。制球を気にするあまり、腕が振れない悪循環に陥っていた。今夏はダイナミックさを取り戻し、大阪大会では苦しみながらもエースとして甲子園出場をつかみ取った。希少価値の高い左腕の好素材だけに、甲子園で本領発揮できればドラフト上位候補に浮上する可能性は十分にある。大阪桐蔭は大会5日目にセンバツベスト8の東海大菅生(西東京)と激突する。



今夏、自己最速となる50キロをマークした北海・木村大成

木村大成(北海/180センチ・78キロ/左投左打)

今春のセンバツ開幕戦に登場し、右打者のインコースに突き刺さるクロスファイアーと空振りを奪えるスライダーでアピールした実戦型左腕。とくにスライダーは、空振りした右打者の足に当たるほどの切れ味だった。調子が悪くても着実にゲームメイクできる左腕は希少なだけに、プロスカウトからの評価も当然高い。今夏は自己最速を2キロ更新する150キロをマーク。春夏連続出場となる今回は、センバツで敗れた神戸国際大付(兵庫)と大会3日目に対戦する。



身長は170センチと小柄だが、キレのいいボールを投げ込む二松学舎大付・秋山正雲

秋山正雲(二松学舎大付/170センチ・75キロ/左投左打)

身長170センチと小柄ながら、この投手のストレートの球威はすでにプロ並みだ。ボールのスピード感、強さは先輩の大江竜聖(巨人)の高校時代をはるかに凌駕する。課題の変化球もチェンジアップを決め球に使えるようになるなど向上中。東東京大会決勝戦では、試合巧者の関東一を相手に試合終盤までノーヒットピッチングを見せた。大事な試合になればなるほど力を発揮するメンタリティーも甲子園向きだろう。二松学舎大付は大会5日目に西日本短大付(福岡)と対戦する。



最速145キロの速球と多彩な変化球で打者を翻弄する樟南・西田恒河

西田恒河(樟南/175センチ・76キロ/左投左打)

派手さはないものの、数々の好左腕を輩出してきた鹿児島らしい実戦型左腕だ。最速145キロを計測するストレートとスライダー、チェンジアップなど多彩な球種を組み合わせ、打者を打ち取るバリエーションが多い。実家は浄土真宗の寺・善妙寺。名前の「恒河(ごうが)」はガンジス川のことで、「人々にとってなくてはならないもの」という意味合いが込められているという。樟南は大会6日目に三重と対戦する。

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 ほかにも右腕ならセンバツでも素材の片鱗を見せた京本真(明豊)や小畠一心(智辯学園)、和歌山大会で小園に投げ勝った智辯和歌山の中西聖輝、伊藤大稀の右腕コンビ、九州が誇る実戦型右腕の大嶋柊(西日本短大付)、日高大空(宮崎商)も要注目。2年生も投打にポテンシャルが高い田中晴(日本文理)、山田陽翔(近江)が楽しみだ。センバツでも活躍した鈴木泰成(東海大菅生)は右ヒジの状態不良で、大事を取って甲子園のベンチから外れた。

 左腕では高校屈指のゲームメイク能力を誇る代木大和(明徳義塾)、ボールのキレと完成度で勝負する野崎慎裕(県岐阜商)や永野司(倉敷商)、将来性の高い大型左腕・ヴェナルテ・フェルガス(日本航空)も見逃せない。2年生左腕も森山暁生(阿南光)、楠本晴紀(神戸国際大付)、森下瑠大(京都国際)と多士済々だ。