町田(左)とブリアナ・スチュアート(右)。富士通とシアトルのユニフォームでマッチアップするのも見てみたい(写真/©fib…

町田(左)とブリアナ・スチュアート(右)。富士通とシアトルのユニフォームでマッチアップするのも見てみたい(写真/©fiba.basketball)


国際的な価値を高めた日本の女子バスケットボール

 

 東京オリンピックの女子バスケットボールは、5人制も3人制も、想定していた以上の喜びを人々の心に届けたのではないだろうか。各種の媒体での露出状況や反響を見れば、彼女たちの戦いぶりは、バスケットボールファンの範囲を越えたスポーツファン、あるいはより一般的なさらに広い範囲の人々の心を動かしたことが感じられる。

 

 5人制女子日本代表は、ホーバス トムHCとプレーヤーたちを信じていた人にとっては想定内の「惜しい銀メダル」。3×3女子代表は、最終順位こそ目標に届かなかったものの、金メダルを獲得した女王アメリカ代表に勝利した唯一チームとなり、最後の試合も最後の最後まで勝利を信じた結果の5位。どちらも強かったし、国内のみならず海外のファンや競技関係者からの称賛の的となっていた。

 

 スーパースターも誕生した。身長162cmのポイントガード、町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)は、オリンピックにおける1試合あたりの最多アシスト新記録(18本)を樹立し、平均12.5本という好成績で堂々今大会のアシストランキング1位に輝いた。このパフォーマンスとチームとしての銀メダルフィニッシュにより、町田は今大会のオールスター・ファイブ(いわゆるベスト・ファイブ)に選出されている。

 

 町田のパフォーマンスに対する高評価と好意的な反響もワールドワイドだった。NBAのロサンゼルス・レイカーズの大ファンとして知られる、人気ロックバンド「レッドホットチリペッパーズ」のベーシストFLEAが、ソーシャルメディア上で町田のプレーぶりに驚嘆する投稿をして話題になったが、そうした非常に前向きな投稿をしていた人々の中には、WNBAを含む各国の有力リーグ関係者や、その舞台でプレーするスターたちを支援するエージェントなども含まれていた。

 

 Wリーグ公式サイトには、10月12日(火)に開幕予定の第23回Wリーグ(2021-22)シーズンの「NEW AGE 新時代へ。」というスローガンが掲げられている。東京オリンピックにおける女子プレーヤーたちの大活躍は、自らの価値を高めると同時に、まさしく日本の女子バスケットボール界を新時代へとけん引してくれたように思う。


 東京オリンピック開幕の1ヵ月半ほど前の6月8日、WNBAのレギュラーシーズンゲームにおける定例の試合前会見に、リーグコミッショナーのキャシー・エンゲルバートが登壇した。その機会に、エンゲルバート氏の日本・アジア市場に対する見方を聞かせてもらったのだが、NBA同様にWNBAもリーグのグローバル化に興味を持っていることがわかった。以下はそのときの問答だ。

 

☆次ページ: エンゲルバートコミッショナーとのQ&A

エンゲルバートコミッショナーは日本進出に積極性を持っている様子だった

 

WNBAに日本進出の考えは実際にある


――アジアの市場、特に極東地域に関する見方を教えてください。プレーヤー・プールとして素晴らしいし、我々の国からリーグが経済的な後押しを得られる可能性も高く、影響力を強め前進していけるのではないかと思うのですが。

 

エンゲルバート それは、我々のリーグをいかにして世界に広めていくかという問題そのものです。NBAは素晴らしい形でそれを実現していますが、私もこの点には注力していくつもりなんですよ。パンデミック後にシーズンをまたいで、いかにしてアジアを含む世界に展開していくか、アジアのタレントの育成にどのように着目していくか。

 

 今年のドラフトを振り返ると、全体2位のプレーヤーは国外からのプレーヤー(フィンランド出身のアワク・クイアー)でした。アジアから来るプレーヤーがリーグにもっと増えてほしいと思いますし、どのように私たちのリーグを日本や中国、インドなど国々に届けるかについて思いを廻らせるのは楽しいです。


 これらの国はどこも非常にバスケットボールの人気が高いのを知っていますし、3×3が今回のオリンピックに登場し、オーストリアで出場権を獲得したアメリカ代表チームはWNBAプレーヤーたちで構成されている。アジアはもちろん、他の地域でも競技普及を図る方法がたくさんあると私も思います。
 このリーグでは、女性がプロのプレーヤーとして生きていけるのだという模範を、若年層の女性に示しています。パンデミックの影響を受け国外に向けた動きが鈍ってしまいましたが、彼女たちがそのようなロールモデルであり続けることができるようにするためにも、アジアを含む世界の諸地域に展開していくことで我々が何をできるのか、もう一度見直すのは重要ですね。

 

――WNBAジャパンゲームスのような構想を実際にお持ちですか?

 

エンゲルバート それができたら素晴らしいですね。どこかの時点で、来年か2023年か…。“グローバルゲームス”ができたらよいと思っています。例えば日本でプレシーズンゲームを開催するなど、考えられることはありますものね。


 当座はリーグを生まれ変わらせる活動を継続していきます。ファンベースを拡大するためのデジタル・プラットフォームへの投資などですね。でもあなたがおっしゃるようなグローバルゲームも、NBAでこれまでにできていることでもありますし、戦略化して今後数年のうちに実行できないか検討したいです。

 

左のプラムはWNBAのラスベガス・エイセズで、右の山本はWリーグのトヨタ自動車アンテロープス。3×3も両国トップリーグ対決だった (写真/©fiba.basketball)

 

3×3イベントでも面白い


 その後、オリンピック開幕直前の7月14日にラスベガスで行われたWNBAオールスター・ゲームのズーム会見でも、エンゲルバートコミッショナーの会見があった。そのときにもリーグのファンベース拡大にはグローバル化が欠かせないとの認識を示し、日本との交流を活性化させることについても「議論に応じる用意は常にあります」と積極性を感じさせるコメントを返してくれていた。


 エンゲルバートコミッショナーは「どこかの時点で、来年か2023年か…」と話していたわけだが、このオリンピックの状況を受け、WNBAの「日本進出構想」がにわかに活気づく可能性もあると思う。東京オリンピックでの日本代表対アメリカ代表戦は、5×5も3×3もすなわちWリーグ選抜とWNBA選抜の戦いだったのであり、その反響が大きかったことも、日本のプレーヤーたちのレベルの高さもエンゲルバート自身が間違いなく認識している。

 

 例えばWNBAのチームが1チーム来日し、日本国内のチームや選抜チームとエキジビションを行うような興行企画ができたら楽しい。それがチーム丸ごとではなく4-5人が来日して行う3×3のイベントであっても、非常に面白いセッティングができる。どちらにしても、日本の女子バスケットボールが飛躍的にレベルアップできるきっかけを提供することになるだろう。


 コロナ禍がどのような結果をたどってどのように終息していくかが非常に大きなファクターだが、WNBAの動向は注視していきたい。今年のシーズンは5月に開幕したが、このオリンピック期間中は「オリンピック・ブレイク」としてリーグ行事をストップしていた。今後はアメリカ時間の8月12日(木)にコミッショナーズカップというイベントがあり、15日(日)からシーズン後半戦が再開される。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)