■チョウ新監督招へいと補強が噛み合った京都 東京五輪の開催に伴って、J2リーグは3週間の中断期間に入った。そして8月9日…
■チョウ新監督招へいと補強が噛み合った京都
東京五輪の開催に伴って、J2リーグは3週間の中断期間に入った。そして8月9日、第24節からリスタートをする。全日程の2分の1強にあたる23節までを消化したここまでを、J1昇格争いとJ2残留争いの視点から振り返ってみる。まずはJ1昇格争いを牽引する上位4チームに触れよう。
23節終了時点で首位の京都サンガF.C.は、昨シーズン8位からの躍進である。3位のアルビレックス新潟は同11位から、4位のFC琉球は同16位からだ。いずれも「歩幅広く」順位を上げている。
首位に立っている京都には、昨シーズンのアビスパ福岡が重なる。
2位でJ1昇格をつかんだ昨シーズンの福岡は、水戸ホーリーホックを2シーズン指揮した長谷部茂利監督を迎えた。長谷部監督は戦力的に十分と言えない水戸で10位、7位の成績を残し、福岡に招かれた。とくに19年のチームは攻守のバランスに優れ、首位の柏レイソルと1勝1分、同2位の横浜FCとは2分けと、J1昇格を果たした2チームに負けなかった。
福岡は即戦力の補強にも動いた。長谷部監督のサッカーを知る人材として、水戸から前寛之らを引っ張ってきた。アタッカーの遠野大弥とフアンマ・デルガド、DFラインを構成する上島拓巳、エミル・サロモンソン、ドウグラス・グローリらを獲得した。遠野はチーム最多の11得点、フアンマは同8得点を記録し、サロモンソンはリーグトップの10アシストを記録した。上島とグローリのCBコンビは、リーグ屈指の高さと強さを誇った。シーズン途中の10月には、モンテディオ山形で6得点をあげていた山岸祐也を補強し、ラストスパートの起爆剤とした。
今シーズンの京都は、J1とJ2で実績十分のチョウ・キジェ監督とともに歩んでいる。そのうえで、松田天馬、中川寛斗、武富孝介、白井康介ら、チョウ監督のもとでプレーしたことのある選手を呼び寄せた。さらに、20年は期限付き移籍先のヴァンフォーレ甲府で主力を担ったボランチの武田将平、同じく20年は浦和レッズから新潟へ期限付き移籍した左SBの荻原拓也らを獲得した。
20年の福岡に比べると、補強のスケールは小さいかもしれない。それでも、松田と荻原はここまで全試合に出場しており、18試合出場の武田も先発に定着している。また、ガイナーレ鳥取から加入した三沢直人が、21試合に出場して3得点を記録している。新監督のもとでスタメンが大きく入れ替わった意味で、京都は昨シーズンの福岡に重なるところがある。
■”先回りのマネジメント”で課題解消を狙う
大型補強をしなかったことについては、CBにヨルディ・バイス、CFにピーター・ウタカと、攻守の軸に成り得る外国籍選手がおり、アカデミー出身でプロ3年目の福岡慎平、同2年目の川崎颯太ら、見どころのある若手選手が揃っていたからでもある。チョウ監督は湘南を率いていた当時から、若い選手の育成に意欲的だ。果たして今シーズンの京都では、川崎がアンカーのポジションをがっちりとつかみ、福岡もインサイドハーフの選択肢となっている。
同じくアカデミー出身のGK若原智哉は、20年シーズンから定位置をつかんでいた。さらに、プロ5年目のCB麻田将吾も主力のケガでチャンスをつかみ、ここまで20試合に起用されている。
新加入の選手がチームを活性化し、若手選手が戦力の底上げをはかり、経験ある外国籍選手がチームの支えになることで、京都は昇格争いの中心にいる。もちろん、チョウ監督の類まれなリーダーシップは見逃せない。攻守に躍動感溢れるサッカーは、観る者を飽きさせない。52歳の指揮官はエキサイティングなサッカーと結果を、両立させようとしている。
再開後の課題をあえて探すなら、攻撃の爆発力か。
リーグ5位タイの35得点を記録しているが、無得点試合が「6」、1点にとどまった試合が「5」ある。ほぼ半分の試合で、複数得点を記録できていないのだ。失点をリーグ最少の「16」に抑えている守備は支えになるが、2点目を取って試合を決める展開を増やしたいところだ。
7月上旬にはJ3の福島ユナイテッドから、ナイジェリア人FWオリグバッジョ・イスマイラを獲得した。J3で得点ランキング2位の23歳は、即戦力に成り得る。得点力アップに向けて、しっかりと動いているのだ。”先回りのマネジメント”は、さすがチョウ監督である。