第89回選抜高校野球が19日から開幕する。3年連続9度目の出場となる名門・大阪桐蔭は今回も優勝候補の一角。早実・清宮幸太郎、履正社・安田尚憲が大きな話題を集めているが、大阪桐蔭の新2年生、根尾昂選手もブレイクの予感が漂う注目の一人だ。■19…

第89回選抜高校野球が19日から開幕する。3年連続9度目の出場となる名門・大阪桐蔭は今回も優勝候補の一角。早実・清宮幸太郎、履正社・安田尚憲が大きな話題を集めているが、大阪桐蔭の新2年生、根尾昂選手もブレイクの予感が漂う注目の一人だ。

■19日開幕の選抜、投手&遊撃&外野をこなす2年生・根尾昂に漂うブレイクの予感

 第89回選抜高校野球が19日から開幕する。3年連続9度目の出場となる名門・大阪桐蔭は今回も優勝候補の一角。早実・清宮幸太郎、履正社・安田尚憲が大きな話題を集めているが、大阪桐蔭の新2年生、根尾昂選手もブレイクの予感が漂う注目の一人だ。

 根尾が与えた中学時代の衝撃は大きかった。岐阜・飛騨高山ボーイズでプレーしていた時のピッチングだった。中学生ながら145キロを計測し、その様子をファンが動画投稿サイトにあげると「完成度が高い」と関係者らからも驚きの声が出た。学業も有終で、成績は学年トップクラス。中学2年の時はアルペンスキー、スラロームの大会で全国大会に出場し、優勝。世界大会にも出場したほどの腕を持つ。3年生になってからは野球に専念。全国の強豪校から誘いを受けたが、甲子園の舞台に立つことも夢見て、大阪桐蔭へ進学した。幼少時からスキーを楽しんでいたため、体幹の強さやフットワークの軽さ、柔軟性は培われていた。

 投手に加え、内野・外野もこなせるが、今回の大阪桐蔭の投手は3年生の徳山壮磨、香川麗爾ら力のある投手がいるため、根尾は野手としての出場が多い。これまでも投手だけでなく遊撃、中堅、右翼とプレーしている。試合をチェックしているプロのスカウトは「あれだけの柔軟性を持っていれば、どのポジションでもできる。投手で獲得しても、内野でも、外野でも、こちら(プロ)側が獲る時に決めればいいのでは」と、その対応力に将来性を感じている。

 今大会は5番、6番の打順を任される見込みだが、すでに4番も経験済み。「初めて4番と言われた時は『オーッ』、どうやって打とうかとか思いましたが、自分がそういう思いではいけない、と思い、アウトカウントや走者の状況が違うだけだと考えました」と気持ちをすぐに切り替えて打席に入り、本塁打を放った。まだ16歳ながら、冷静な頭を持っている。

■“使いやすい選手”で貢献、「複数守れれば、その時のベストオーダーが組める」

 複数のポジションをやっていることに関しては「(試合に出る)9人を監督さんが決める上で、複数守れれば、その時のベストオーダーが組めると思います。『アイツはこのポジションもできる』と思ってもらった方がいいと考えています」と打順や守備位置のこだわりはない。西谷浩一監督も新チームのスタート当初から流動的にオーダーを決め、勝ち進んできた。その時のベストを組むために根尾のようなオールラウンダーは貴重な存在だ。

 固定しないメリットは他にもある。根尾は内野を守っていると、外野手のポジションどりも気になるという。外野を守っていても、バッテリーの配球や、打者に応じたショートの動きなど、自分が守っていないところの守備も注視するようになった。それによって野球観が広がったことを実感している。グラブも投手、内野、外野と3つ持っている。手入れ時間も3倍だが、グラブ磨きをしている時は「楽しい」と話す。

 根尾は監督が使いやすい選手になることを求めている。それが一番、勝利に近いとわかっているからだ。複数のポジションをこなすのは高校生であれば当然であって、その中で根尾は自分の可能性を見つけようとしている。チームのためにも自分のためにも、どのポジションが1番いいか、現時点で決める必要はない。

 今大会は背番号7を着けて甲子園のグラウンドに立つ。初戦は第6日の宇部鴻城(山口)戦。果たして、躍動するのは、マウンドの投手か、黒土の遊撃か、芝生の外野か。今大会、そして、これからの飛躍を見守っていきたい選手である。