「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#82「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など、五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。アテ…

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#82

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など、五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。アテネ五輪に出場したサッカー元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、独自の「ミカタ」で各競技をチェック。ブラジルから来日し、日本を愛したサッカー界の侍が、他競技からの視点で熱くなったシーンを語る。

 今回は史上初の決勝進出を決めたバスケットボール女子日本代表。6日に行われた準決勝のフランス戦に87-71で勝利し、銀メダル以上を確定させる歴史的快挙を成し遂げた。闘莉王氏は日本に精通した米国人のトム・ホーバス監督のタクトを称賛。男子サッカー日本代表のみならず、すべてのスポーツのヒントになるという“日本の外国人招聘”について熱弁した。(構成=THE ANSWER編集部)

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 フランス戦は素晴らしかった。普段、バスケをそこまで見てこなかった自分もどこまでも熱くなれた。大会16日目のクライマックスだったと思う。

 正確な3ポイントシュートに緻密な連携とアジリティという、日本人の強みを前面に出した圧勝だったけれど、準々決勝のベルギー戦の大逆転勝利の時点で凄かった。このチームに感銘を受けていた。

 選手はみんな生き生きとしていた。特に、町田瑠唯選手はとてつもないプレーヤーだと思った。サイズ的には小さいけれど、1対1で圧倒的だった。身体能力の高いフランスの選手相手に、スピードで違いを見せつけていた。

 1試合18アシストなんてあまり聞いたこともない活躍。体格の大きな相手に、スピードとテクニックで対抗するというのが、日本スポーツ界の流儀。まさに日本らしさを体現していたプレーだったと思う。

 一番心を打たれたのは監督のトム・ホーバスさん。日本の文化や慣習、特性を深く理解した上での戦術。日本人の性格に合わせたコミュニケーションの仕方や選手との間にリスペクトも感じた。まさに名将だなと感じた。

 この監督に鍛えられたチームの雰囲気はすごくいい。いつも前向きで、プレーも勇敢で迷いがない。そして、苦境に陥った時の心に響くコーチング。あれはとてつもなく大きいと思う。タイムアウトでの日本語でのコミュニケーションに驚いた。状況に応じて選手にかける言葉が何よりもいい。

「プレッシャーに負けないで」という選手を鼓舞する言葉、勝つためのコーチングは心に響く。日本のことを本当にわかっているんだな、と感じた。ブラジル生まれで日本人に帰化した自分としては、ああいう場面に遭遇すると嬉しさを感じる。

サッカー日本代表の外国人に欠けていた「日本の文化の理解」

 日本の文化を理解する――。サッカー日本代表を指揮してきた外国人監督に欠けていた部分ではないか。

 日本代表でイビチャ・オシムさんという世界的名監督に指導を受けた。歴代監督の中で日本文化の理解は相当高かったが、日本語は流石に話せない。コミュニケーションは通訳を介してだった。オシムさんに並ぶほど日本を理解していた監督はこれまでのサッカー代表には存在しなかったと思う。

 どんな監督にも、それまで築き上げた指導スタイルに自信を持っていると思うけれど、国民の文化を理解し、特性を最大限に引き出した時に、どんな偉業を成し遂げられるのか――。監督選びの重要性を女子バスケ代表が今回、改めて示してくれたと思う。

 どんな競技でも、どの代表チームでも、どのクラブでも、トムさんの仕事ぶりは今後、外国人の指導者を招聘する際の大きなヒントになると思う。

 その直前に行われた男子サッカー代表の3位決定戦の結果は残念だった。女子バスケの躍動と快挙で少し癒されました。決勝の相手は6大会連続金メダルの米国。無敗の絶対王者にどんな戦いを見せてくれるのか。心から応援しています。(THE ANSWER編集部)