7月25日、日本がメキシコにグループリーグの2戦目で対戦した際は、2-1で勝利していた。しかし、後半なかば、メキシコは…

 7月25日、日本がメキシコにグループリーグの2戦目で対戦した際は、2-1で勝利していた。しかし、後半なかば、メキシコは退場者を出していて、数的不利な状況に置かれていたにもかかわらず、日本から1点差とするゴールを奪っている。ゲームもコントロールしていた。38%対62%とは、その後半のボール支配率の関係になる。日本はよくない終わり方をした。もう一度戦ったら勝てないぞと思いながら、タイムアップの笛を聞いたものだ。

 メキシコとの再戦になった3位決定戦。12日前からの流れは生きているのか。立ち上がりに目を凝らした。いやな流れを断ち切りたければ、チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメントのリターンマッチでよく見られるように、キックオフ直後から、第1戦を忘れさせるように飛ばしていくのが常道だ。日本としては、主導権争いで後手を踏むわけにはいかなかった。

 ところが、ボールがピッチの隅々に行き渡り、選手がひと通りプレーする姿を確認すれば、活きがよかったのはメキシコのほうだった。日本は様子見というか、相手の攻勢を受けてしまう格好になった。

 メキシコは積極的だった。前戦で日本に敗れているからなのか、技巧的で巧緻性の高いドリブルとショートパスで日本を幻惑。開始直後から試合を優位に進めていた。



3位決定戦でメキシコに敗れ、ピッチで涙を流し続けた久保建英→

 その流れから、左ウイングのアレクシス・ベガが、日本のペナルティエリア内にドリブルで侵入しようとした瞬間だった。遠藤航がたまらず足をかけてしまう。前半13分。日本はPKで先制点を奪われた。

 だが、失点で目が覚めたのか、その直後から日本は息を吹き返した。3~4分間、いいムードは続いた。しかし、好事魔多しで、遠藤が好機に相手GKギジェルモ・オチョアと接触した際、スパイクの裏を見せたことから、イエローカードを提示された。これ機に、流れは再びメキシコに傾くことになった。

 2点目を奪われたのはその直後。22分、FKから、DFのヨハン・バスケスにヘディングシュートを決められてしまう。そのマークを外してしまったのも遠藤だった。2失点に直接的に絡むことになったのは、これまで吉田麻也とともにピッチに立ち続けたオーバーエイジの選手だった。

「代えのきかない選手です」。テレビの解説者はその重要性を強調していたが、代えのきかない選手が、プレーの質を低下させた時、どうすればいいのか。短期集中トーナメントではよくある話だ。代えのきかない選手を作ってはいけない。これこそが短期集中トーナメントを戦うセオリーになる。

 遠藤、さらにはその傍らで構える田中碧は、ほぼ出ずっぱりだった。すっかり代えがきかない選手と化していた。田中は前戦のスペイン戦で、苦しげな表情を覗かせながらプレーしていたにもかかわらず、延長後半13分、橋岡大樹と交代するまでピッチに立たされていた。

 東京五輪では見かけなかったが、ユーロやCLでは走行距離のデータが表示される。チーム内で誰が多く走ったかをランキング化したものが紹介される。傾向はハッキリしている。上位にくるのはたいてい守備的MFだ。ピッチの真ん中に立っているので、当然といえば当然なのだが、この東京五輪でそれがランキング化されたなら、遠藤と田中は毎試合1、2番を占めるだろう。出ずっぱりの遠藤は、五輪の6試合のトータルでも断トツ一番ではないだろうか。

 日本は、4-2-3-1で1トップ下を務める久保建英が、MFというよりFW的な立ち位置でプレーしているので、その4-2-3-1は4-2-4にかなり近い。遠藤、田中は守備的MFというよりセンターハーフ。他より負担が大きいポジションであることは明白だ。代えのきく選手を用意しておかなければ、個人としてはもちろん、チームとしてバテてしまう。

 日本がメダルを逃した原因は何か。実はフランス戦以外、特段、褒めたくなる戦いができなかった理由について考えた時、一番に頭をよぎるのは、センターハーフ2人のオーバーワークになる。他の選択肢を用意できなかったベンチワークに問題があることはいうまでもない。

 メキシコ戦の後半35分。遠藤は途中交代でピッチを後にした。投入されたのは三好康児。それを機に布陣は4-3-3に変化した。こうした布陣の変更をまじえた戦術的交代を、なぜもっと早く行なわなかったのか。

◆新シーズン「海外組」ブレイク候補。A代表未経験もすでに活躍している選手がいる

 いずれにしても、選考した守備的MFの選手の絶対数が少なすぎたことは確かである。

 それ以外にも、無いものねだりをしたくなったのは1トップだ。林大地と上田綺世の2人は弱すぎた。11あるポジションの中で一番の弱点だった。以前、オーバーエイジ枠に最適な3人について考察した原稿でも述べたが、3人のうち1人は1トップが務まる選手を選びたかった。

 大迫勇也は不可欠な選手だった。大迫、あるいはその代役が務まりそうな鎌田大地をメンバーに加えることができなかった時点で、得点力不足は見えていた。メダル獲得は苦しくなっていた。

 試合は後半13分、CKからベガが頭で3点目を決めると、勝負は事実上、決着した。

 三笘薫が中山雄太に代わって投入されたのはその4分後。その時、期待感を抱いたわけではなかった。今大会、三笘は活躍しているとは言えなかったからだ。そもそも出場時間が少なすぎた。体調がよくないのか、調子そのものが悪いのか、定かではない。だが、この3位決定戦では、ボールを持つたびに周囲を驚かせる決定的なプレーを披露した。

 後半33分、焼け石に水ではあったが、自らの個人技で1-3とするゴールを挙げている。ここにも日本がメダルを逃した理由を見た気がした。

 久保、堂安律が2枚看板とよく言われるが、それを聞くたびに、筆者は違和感に襲われた。三笘の能力は、この2人より下ではないと、強く反論したくなった。いい選手ではあるが、どこでどう使えば一番光るのかがわかりにくい久保、堂安より、三笘のほうが使いやすい。欧州での活躍も期待できる選手と見るが、その三笘が大会を通して本領を発揮できなかったことも、日本がメダルを逃した大きな理由だ。

 遠藤、田中をボロボロになるまで使ったこと。言い換えれば、チームとしての疲労感をうまくシェアできなかったこと。1トップに相応しい選手を招集できなかったこと。さらには、三笘を生かし切れなかったこと。そしてボール支配率が上がらなかったこと......。メダルを逃した理由のほとんどは、森保一監督の采配に由来する。

 サッカー協会はフル代表監督として続投する方針を下したとのことだが、だとすれば、森保監督には今大会の反省を活かしてほしい。短期集中トーナメントを勝ち抜く術をもっと学んでほしい。現状のままでは、2022年カタールW杯本大会で大きな活躍は望めないと思う。