アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)は本戦4日目、男子シングルスはボトムハーフの2回戦が行われた。これ…

 アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)は本戦4日目、男子シングルスはボトムハーフの2回戦が行われた。これが初戦となる第5シードの錦織圭(日本/日清食品)は、世界ランク41位のダニエル・エバンズ(イギリス)に6-3 6-4で快勝。リオ(ATP500)での1回戦負けのショックは引きずらず、3回戦に駒を進めた。

 まずはホッとひと安心といった心境だ。 全豪オープンからこの大会までの間に南米のクレー2大会をはさんだ錦織は、いずれも第1シードとして臨みながら準優勝と1回戦敗退という結果に終わり、特にメンタル面の回復具合が懸念されていた。

 この2回戦は錦織の初戦となるが、相手のエバンズは1回戦で世界ランク82位のダスティン・ブラウン(ドイツ)に圧勝したばかりか、アンディ・マレー(イギリス)とのダブルスでも初戦突破。コートにも慣れ、勢いに乗っている。このところの成長著しく、1年前のランキングは150位台だったが、今年シドニーでツアー初の決勝に進出し、全豪オープンではグランドスラム自己最高の4回戦に進出。キャリア最高の時期を楽しんでいるといっていいだろう。錦織にとっては2013年の全米オープン1回戦で敗れた相手でもある。嫌な記憶だ。

 ただ、傍目の心配をよそに、錦織自身は「しっかり練習できているし、ネガティブなことを考えたとしたら10%くらい」と話し、南米からの流れに関しても「2、3日は引きずりましたけど、意外と早く忘れた」と振り返った。

 立ち上がりのサービスゲームこそ、ダイナミックなフォームから強気で攻めてくるエバンズにいきなりブレークダウンを喫したが、すぐにブレークバックできたことで落ち着いたという。

 「少しは焦りもありましたけど、爆発力があってネットプレーも上手いことはわかっていたので」

 第8ゲームで3度のデュースの末にブレークし、サービング・フォー・ザ・セットは2度のデュースのあとに締めくくった。

 第2セットは錦織が先にブレークしてすぐにエバンズがブレークバックと、第1セットと逆の展開で始まった。しかし、その後の錦織のサービスゲームは安定し、第4ゲーム、第6ゲームと続けてラブゲームでのキープ。ネットに出て早くポイントを終わらせようとするエバンズに対し、パッシングショットが正確に決まり出した。サービスでリズムをつくり、ブレークにつなげたのが第9ゲーム。反撃は許さなかった。

 終わってみれば1時間25分の快勝。しかし相変わらず、ここで使用されているコートもボールも好きではないという。ボールが高く弾み、飛びの感覚もつかみにくいと、不満をこぼす選手は少なくないが、「無理やり好きだと思うようにしていたところはある」と錦織。苦手と言いつつ昨年はベスト8まで進んだ。

 3回戦の相手は、第25シードのジル・ミュラー(ルクセンブルク)。左利きの33歳で、彼もまた今年になってツアー初優勝を果たし、自己最高ランキングを更新するなど、息の長い選手である。過去の対戦成績は錦織の3勝。直近となる昨年のバーゼル(ATP500)ではフルセットの接戦だったが、好きなコンディションでなら負けないはずの相手だ。〈思い込み〉をどんどん深めていきたい。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)