自国開催の東京五輪で、サッカーの五輪代表は男女ともに1次リーグを突破して決勝トーナメント進出を決めた。女子は1勝1敗1分…

自国開催の東京五輪で、サッカーの五輪代表は男女ともに1次リーグを突破して決勝トーナメント進出を決めた。女子は1勝1敗1分、男子は全出場国中唯一となる3勝。取材歴50年のサッカージャーナリスト・大住良之と後藤健生の2人はこの東京五輪と日本サッカーの未来をどう見るのか――。

●ベスト8組み合わせ
・男子
日本(A組1位)
ニュージーランド(B組2位)

スペイン(C組1位)
コートジボワール(D組2位)

韓国(B組1位) 
メキシコ(A組2位)

ブラジル(D組1位)
エジプト(C組2位)

・女子
英国(E組1位)
オーストラリア(G組3位)

スウェーデン(G組1位)
日本(E組3位)

オランダ(F組1位) 
米国(G組2位)

カナダ(E組2位)
ブラジル(F組2位)

●ベスト8以降の試合日程
女子
・7月30日(金)
17時 カナダVSブラジル
18時 英国VS豪州
19時 スウェーデンVS日本
20時 オランダVS米国

男子
・7月31日(土)
17時 スペインVSコートジボワール
18時 日本VSニュージーランド
19時 ブラジルVSエジプト
20時 韓国VSメキシコ

■「日本にだってチャンスはあるはず」

大住「次のスウェーデン戦で、もし、なでしこが運を味方につけて勝てたら、逆に良い兆しが出てくるかもしれないけどね」

後藤「そうだね。2011年だって別に圧勝したわけじゃなくて、幸運と頑張りが重なった結果だしね。当時は、準々決勝でドイツと戦うのか、もうダメだ、って空気もあったでしょ?」

大住「そうそう。グループリーグだってイングランドに負けたしね。準々決勝のドイツだって誰も勝てると思っていなかったし」

後藤「7月27日、宮城でたまたまスウェーデンというチームを見る機会に恵まれて、消化試合だったけど、見た感じではスウェーデンは効率的で、フィジカル能力がある選手もたくさんいて、しっかりはしているけど、けっこう雑な所もあった。優勝するようなチームではないだろうなっていう感じ。
もちろん、優勝候補の筆頭はアメリカだよ。そのアメリカに3-0で勝ったことあるチームがどれほどすごいのか、って見てみたら、たしかに強かったけど、雑なところもあった。だから、何かほころびがあれば、日本にだってチャンスはあるはず」

大住「日本は、チリ戦の前半はすごいチャンスがあったんだよね。けど、チリのゴールキーパーだったクリスティアネ・エンドレルが背も高くて、反応も良い、すごく良い選手だった。それで日本は点が取れなかったんだけど、もし点が取れていたら試合展開も違っていただろうし。スウェーデン戦だって同じようにチャンスは巡ってくるだろうし、そこで点をしっかり取れれば勝てないことはない。サッカーっていうのはそういうゲームだし」

後藤「あとは、運よく結果を出してくれるのを期待するしかない。その前提条件として、岩渕の完全復活が必要だけどね。まあ、守備はそこそこ安定したよね?」

大住「そうだね。センターバックの2人が割と良い。宝田沙織だって見劣りしないプレーができるし」

後藤「この間も言ったけど、メキシコとの試合を見たらセンターバック2人がミスをしていて、熊谷紗希もダメかって思った時もあったけど、本大会ではきっちりと調子を上げてきた」

大住「そう。熊谷も南萌華も良い感じだよね」

■「キーパーは無理に余計なことしない方がいい」

後藤「そこで0点にキッチリと抑えることができたなら、なにが起きるかは分からない」

大住「あとは、キーパーが余計なことはしない」

後藤「そうそう、まさに余計なことなんだよ。無理に繋ごうとしてミスをするんだから。繋げる時は繋げるべきだけど、無理はすべきではない」

大住「キーパーが切り返して相手をかわすというのを恥と思わないと。リスクを冒してはいけないポジションなんだから、そこまで相手を近づけてしまったことを失敗と感じるべき。しかも自分がボールを持っている時にね。

 横浜F・マリノスのキーパーが飯倉大樹から朴一圭に変わった、その違いというのは、そこなんだよね。2人とも同じように前に出て、同じようにボールを受けてパスをする。けど、朴一圭はリスクの一つ手前のところでプレーができていた。それがマリノスの優勝に貢献したと思う。
ああいう風に、後ろからつなぐことと、リスクを冒すというのが全然別物だということを意識しなくてはいけない。これはボランチにも言えることで、ボランチが相手をヒュッとかわすことは恥だと思わないといけないよ。僕はそう思う。
田中碧が相手を引きつけて引きつけてパスを出す時は、そういう風なリスクがないからね。見ていると危ないように見えるかもしれないけど、彼は相手にボールを晒したりはしていないから。ちゃんと後ろ向きにターンをして、しかも何とおりもの選択肢を用意した上で、相手を引きつけているから。リスクを負っていいポジションと、負ってはいけないポジションっていうのがあるということを理解しないといけない」

後藤「ボールを晒してもリスクにならないのが遠藤保仁だよね」

大住「ああ、そうだね。あれは計算ずくでボールを晒しているから」

―チリ戦では、林が立ち上がりからよく走って攻撃を活性化していました。しかし、前半で疲れてしまったのかミスが目立ちましたね?

大住「そうだね、疲れていたね。イングランド戦もそうだったんだけど、彼女は、非常に良いプレーを見せていたけれど、残念なことに1試合続かないんだよ。林だけじゃなくて、チーム全体も強度が1試合続かない」

後藤「そこはやっぱり、もっと攻撃がしっかりして、チームに攻撃の時間を作らないと難しい。すぐボールを拾われて、それを追っかけて。そんなことをしていたら、すぐに疲れちゃう。攻め切るにしても、時間を使うにしても、ボールを奪った後にどうするか、その方向性ができてないのが、あのチームの一番の問題」

■「木下はラッキーガールまではいかない感じだったね」

―女子サッカーのグランドデザインは示してもらえるのでしょうか?

大住「なにか上手くいってほしいけどね」

後藤「偶然チームができてくるとかね。それこそラッキーガールが現れたっていいんだよ」

大住「木下はラッキーガールまではいかない感じだったね、遠慮していると言うか、ちょっと早かったなという感じがした」

後藤「まだ荷が重いかもね」

大住「遠藤純は負のサイクルに陥っているし」

後藤「強い相手と戦うと、それが反転する可能性だってあるよ。それだけのポテンシャルはあるから」

大住「監督も遠藤に対する期待が過剰だと思うな。救世主になってくれ、って言う感じが使いかたに表れている。真ん中に使ったり、サイドで使ったり」

後藤「この間、大住さんが褒めすぎたせいじゃないですか?」

大住「ははは。けど、遠藤にはそれだけの才能があるんだよ。敵との間合いを試合の中で1度掴んでしまえば、あとはボンボンと行けそうな気がするんだけど、それが掴めないまま悪くなってしまっている感じ」

―かつての丸山桂里奈みたいなラッキーガール的な選手はまだいないですね。

大住「本当にね。ドイツ戦のあのゴールなんて、丸山じゃないと決められないよね。普通ならパス先を探しちゃう」

後藤「そういうタイプがいないよ。真面目な子ばっかりだから」

―体力は温存しないで、前半からファイトしてほしいですね。

大住「そりゃそうだよ。5人代えられるんだからさ」

後藤「計算して戦えるようなチーム状況ではない」

大住「代えたくないような選手でも代える、とにかく戦える選手を並べておくと言う意識で戦わないと。たとえばね、岩渕が外せないな、と思った瞬間に、そこが穴になるんだよ。フランス戦の森保監督は、そこらへんの切り替えがすごく速かった。もちろん監督にだって、うまくいくときといかない時があるんだろうけどさ」

後藤「チリ戦を見ながらメモをとっていたんだけど、前半の35分くらいのところで、岩渕が故障のあとはキレがないな、では代えるかな、って書いてあるんだよ。でも1発があるから高倉監督は置いておきたいだろうな、とも書いてあって、そのまま試合が進んで、結局は最後に岩渕が働いたからね。だから、その点は心中するしかないよね。このチームは、そうやって戦ってきたんだから」

大住「岩渕はそうかもしれない。けど、他の選手は15人で戦うつもりでいないと」

後藤「とにかく果敢に先制点を取りに行って、そしたら相手のミスも生まれてくるだろう、っていう感じの戦いかたをしないとね」

大住「そうね。粘って粘って粘って、後半なかばまで失点なしで、そこで相手がバランスを崩したところで点を奪って、あとは必死に逃げる。そういう形しかないんじゃないかな」

後藤「ゴール前に持ち込んだらVARでPKがもらえるかもしれないし。ほかにも、シュートしたら相手がハンドで止めて退場になって、そのうえPKがもらえたとかさ。そういうラッキーを引き寄せないと」

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