「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#25「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など、五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。アテ…

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#25

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など、五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。アテネ五輪に出場したサッカー元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、独自の「ミカタ」で各競技をチェック。ブラジルから来日し、日本を愛したサッカー界の侍が、熱くなったシーンを語る。今回は柔道男子73キロ級で連覇を達成した大野将平(旭化成)。前回リオデジャネイロ五輪の金メダルを現地観戦していた闘将は、大野の表情にニッポン柔道の強さを感じた。(構成=THE ANSWER編集部)

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 大野選手、すごいね。素人でもはっきりとわかる強さ。技も豪快に決まる。投げ技がすごく綺麗で、見ていると心が自然と熱くなった。

 実際に柔道の公式戦をアリーナで見たのは2016年のリオデジャネイロ五輪だった。当時は名古屋グランパスを退団して、ブラジルで半年間の引退生活を送っていた。テレビ解説の仕事で観戦したけれど、すぐ後ろの席は日本代表スタッフゾーンで井上監督もいた。緊張感が漂っていたし、チーム全体で戦っている一体感も伝わっていた。会場ではブラジル人女子のシルバ選手の金メダルで大盛り上がりだったけれど、一番印象に残っているのが、大野選手の強さ。5年前から凄かった。

 ビックリするほど強かった。体幹が圧倒的に強い。どんな相手に仕掛けられても体勢が全く崩れない。畳から根が生えているようなイメージ。その上、繰り出す技の切れ味も凄まじい。

 一番驚いたのは勝った後のボディランゲージ。試合前と何も変わらない。喜びや感情を一切、表に出さない。これがサムライなのか、渋すぎるでしょう、と驚いた。

 日本の柔道家は金メダル以外で喜ばないイメージがある。ブラジル人選手なら銅メダルでもお祭り騒ぎだけれど、大野選手は金メダルを獲得しても、何も変わらなかった。覚悟の強さを感じた。

 5年ぶりの五輪で心から楽しみにしていたのは、大野選手。やっぱり強かった。前回の決勝で対戦したルスタム・オルジョフ選手を準々決勝で倒したけれど、全く隙がなかった。モノが違うね。

 阿部兄妹が同時金メダルで、日本でまた柔道フィーバーが起きそうな気配を感じる。柔道の駆け引き、一瞬で決まる勝負は素人目にも面白い。ブラジルも最近、強くなってきた。夏の五輪で一番メダリストの数が生まれる競技が柔道ではないかという期待感も高まっている。

 柔道は競技名が日本語。日本発祥のスポーツならば、日本人が競技のトップに常にいてほしいと個人的と願っている。(THE ANSWER編集部)