東京オリンピックで、南アフリカとメキシコに連勝したU-24日本代表。しかし、勘違いしてはならない。1人少なくなったメキ…
■南アフリカを破壊した久保建英の「技術の粋」
初戦の南アフリカ戦も、1対0で勝利したもののかなり苦しい試合だった。
内容的には日本が完全にボールを支配して何度も決定機を作った。だが、ファイブバック気味で守りを固めた南アフリカはゴール前にけっしてフリーのスペースを作らず、日本の選手はなかなかペナルティーエリア内に進入できず、また、せっかくの決定機にもなかなかシュートが枠をとらえられず、時間だけが過ぎていった。
そんな嫌な展開の中、残り時間も少なくなってきた71分、久保建英がまさに「個の力」によって打開して見せた。
遠くのスペースを見る“眼”を持つ田中碧が、右サイドに張っていた久保を見つけてロングボールで一気にサイドチェンジ。これを久保が左足で鮮やかにコントロールして、そのまま中に切れ込んで、左足でファーサイドに正確なシュートを決めたものだ。
ボールを足の近くにおいて小さなスイングで繰り出すキックは相手守備陣にとって非常にタイミングがつかみにくかっただろうし、体の正面を中央方向に向けたままのキックはGKにとってコースが読みにくかったはずだ。
まさに久保建英という選手の「技術の粋」が詰まったシュートであり、久保にとってはトレーニングを積み重ねてきた得意の型から生み出した会心の決勝ゴールだった。
相手の守備に苦しみ、パスを使った崩しではゴールまで届かないという嫌な流れの中で、日本は最後は「個の力」によって初戦をものにしたのである。
■なでしこの「個の力」がカナダの壁を打破
そういえば、女子代表(なでしこジャパン)の初戦でチームを救ったのも「個の力」だった。
女子のグループEでは、イングランド主体の英国が一つ抜けている。そして、チリはランキング的にも実力的にも格下と呼んでいい。つまり、日本とカナダは2位争いの当面のライバルであるだけに、初戦は両チームにとって非常に重要な試合だった。
ところが、日本は開始わずか6分で失点してしまう。右サイドのニシェル・プリンスからのマイナス気味のクロスに対して、ワントップのジェイニーン・ベッキーが走り込んだので、カバーに入った熊谷紗希はベッキーに対応せざるを得なかったため、ワンテンポ遅れて走り込んだ38歳の大ベテラン、クリスティーン・シンクレアのマークができなくなってしまったのだ。
この6分の失点がなでしこジャパンにとっては大きな重荷となった。
その後も何度か危険な場面はあったものの、日本の守備陣はしっかりと守り切ったし、ボールを持つ時間は次第に増えた。だが、守った後にどのように展開するのか、そして、そのためにどのタイミングで、どのようにしてボールを奪うのかといったチーム全体の戦略が今の女子代表からは見えてこない。
新しい日本の「10番」岩渕真奈のテクニックは十分に通用するのだが、ワントップの菅澤優衣香がボールを収めることができず、岩渕は孤立してしまう。しかも、カナダのセンターバックは、カデイナ・ブキャナンを中心に非常に強力だった。
こうして、カナダの守備を崩せないまま時間だけが経過していった。そんな、敗色濃厚と思われた84分。前線で岩渕が動き出したのを右サイドにいた長谷川唯が見逃さなかった。Uー24日本代表の南アフリカ戦で逆サイドにいた久保を田中が見逃さなかったのと同じように、長谷川は岩渕の前、そしてカナダ守備陣の裏に正確なロングボールを送り込んだ。そして、DFと競り勝った岩渕が相手DFとGKの動きをしっかりと見定めて、ボールがバウンドした瞬間に合わせてダイレクトのシュートを決めたのである。
コレクティブなサッカーを目指す日本代表だが、相手が強ければ、あるいは守りを固めてきたら、パス・サッカーだけで崩すのが難しいこともある。そんな場合に「個の力」でチームを救ってくれる存在がいるのはとても心強い。
だが、それだけに頼っているのでは勝利の確率を上げることはできない。日本が本来目指しているような中盤でのビルドアップから、しっかりと形を作って攻め崩すような得点をコンスタントに生み出せるようになった時、ワールドカップ(あるいはオリンピック)で確実に上位進出を狙えるのだろう。