競泳界の英雄マイケル・フェルプス。今大会はキャスターとして初来日 歴代最高のスイマーと言われるマイケル・フェルプス(アメリカ)。オリンピックには2016年のリオ大会まで5大会連続出場し、団体も合わせると金メダルを23個も獲得している。オリン…



競泳界の英雄マイケル・フェルプス。今大会はキャスターとして初来日

 歴代最高のスイマーと言われるマイケル・フェルプス(アメリカ)。オリンピックには2016年のリオ大会まで5大会連続出場し、団体も合わせると金メダルを23個も獲得している。オリンピックでのメダル獲得数で歴代1位を記録するなど、まさにオリンピックを象徴する選手と言える。

 そのフェルプスがテレビ局の競泳解説のために初来日し、東京に設けられたオメガのショーケーシングに訪れたところを直撃。日本人選手、そしてアメリカの強さについて話を聞いた。

――大橋悠依選手が400m個人メドレーで優勝しました。フェルプスさんは現場でその様子を見ていましたが、今回の彼女の泳ぎはどうでしたか。

 私は技術を重んじてきたスイマーなので、大橋選手の技術面をよく見ていました。決勝での彼女の泳ぎについては、背泳ぎが非常にすばらしかったですね。ストロークの時に水をしっかりかき上げて効率的に水の中で前進していました。本当に技術的にすばらしいですね。前日の予選でかなりいい手応えを掴んだのが、金メダルの結果につながったと思います。

――また400m個人メドレーで金メダル確実とまで言われていた瀬戸大也選手が、予選で全体の9位となり、決勝に進めませんでした。フェルプスさんは彼とレースをしたこともありますが、彼の泳ぎの印象とこの種目での敗因をどう分析しているのか教えてください。

 瀬戸選手とは過去に対戦していますが、本当にすばらしいスイマーだという印象を持っています。私はこの400m個人メドレーで世界記録を保持していますし、表も裏もよくわかっている種目なので、彼の予選落ちの理由についても分析できています。瀬戸選手は最初の50mをとばしすぎたのではないかと思います。400m個人メドレーで最初の50mをとばしすぎると、最後の50mがかなり厳しくなります。そこが敗因だったと思います。

 彼に伝えたいのは、この敗戦をモチベーションにして這い上がってもらいたいということです。もう一度この種目で優勝してほしい、それが私の願いです。

――瀬戸選手にはまだ200メートルバタフライ、200メートル個人メドレーが残されています。彼にアドバイスするとしたら、どんなことですか。

「今回の敗戦をきっぱりと忘れてほしい」ということです。実は私にも同じような経験があります。勝てると思っていた2012年のロンドンオリンピックでの個人メドレーで、4位になってしまったことがありました。その時は非常に落ち込みました。しかしそのほかに出場する種目がありましたので、その結果を完全に忘れることにしたんですね。結局、ロンドン大会では、金メダル4個と全体的にはいい結果を残すことができました。だから瀬戸選手には、これから出場する種目に100%集中してほしいですね。

――今大会は、夜に予選が行なわれ、午前に決勝が行なわれます。男子の400m個人メドレーの決勝では、ほとんどの選手が予選よりもタイムを落としていました。この競技スケジュールは北京オリンピック以来のことで、フェルプスさんも経験しています。日をまたいでのコンディション作りは難しいのでしょうか。

 もし私が出場するのであれば、金メダルの機会が与えられている限り、いつでも喜んで泳ぎます。基本的にコンディションの問題はないと思います。アメリカの選手に関しては、しっかりとその時間に対応するために練習をしてきました。

――今大会でも、そのアメリカ勢は安定した強さを見せています。瀬戸選手も出場した400m個人メドレーでは、決勝でアメリカのチェース・ケイリシュ選手が金メダルを獲得しました。フェルプスさんは、彼に大会前にアドバイスを送ったという報道もありましたが、どんな思いで見ていましたか。

 彼のことは6歳の時から知っています。これまでほとんど同じトレーニングをしてきて、弟のような存在なんです。アドバイスというよりは、ただ私が歩んできた道を見せること、それを彼に示したことで、それを彼なりに解釈して金メダルを獲得したというわけです。



2004年以来オメガのアンバサダーとなっているフェルプス。

「オメガは私にずっと寄り添ってくれている。もはや家族同然です」

――そのケイリシュ選手を含め、大橋選手が優勝した400m個人メドレーでは2位エマ・ウェイアント、3位ハリ・フリッキンガーがアメリカの選手でした。アメリカの選手は高確率で決勝に残っています。どうしてアメリカのスイマーは強いのでしょうか。

 特別な育成方法があるわけではありません。今大会で考えられるのは、オリンピックが1年延期となったこの期間で、それをプラスに考えるかマイナスに考えるかで違いが出てきたのではないかと思います。プラスに考えられた選手は、この1年を生かしていいトレーニングをして結果を出しているということだと思いますよ。

【Profile】
マイケル・フェルプス
1985年6月30日生まれ、アメリカ・ボルチモア出身。天才スイマーとして若くから注目を集め、2000年、15歳の時にオリンピックに初出場。その後2016年のリオ大会まで連続5大会出場し、個人・団体を含め23個の金メダル、3個の銀メダル、2個の銅メダルを獲得した。オリンピックでのメダル獲得数は史上1位。400m個人メドレーの世界記録保持者。