U-24日本代表対U-24メキシコ代表。目を奪われたのは、日本が披露したキックオフ直後のアクションだった。MF遠藤航ら…
U-24日本代表対U-24メキシコ代表。目を奪われたのは、日本が披露したキックオフ直後のアクションだった。MF遠藤航らを中心に敢然とプレッシャーをかけにいく集団的なプレーに、この一戦にかける意気込みのほどがうかがえた。初戦の南アフリカ戦には欠けていた、気合のノリの良さを見た気がした。
だがメキシコは、それに簡単に屈するほどヤワではない。初戦で強国フランスを4-1で下した威勢を早々から誇示してきた。日本の厳しいプレッシャーをはねのけ、キックオフの流れから、いきなりチャンスを掴んだ。自慢のパスワークで左サイドを突破。日本ゴールに迫ったのだ。
つまり、試合は開始早々から両軍、ハイテンションで組み合う展開になった。試合を振り返るならば、メキシコの敗因は、この"喧嘩サッカー"の状態を作り出してしまったことにある。日本に対する格上意識が、ともすると高慢で強引なプレーとなり、その足元を日本にすくわれる格好になった。

メキシコ戦で先制ゴールを奪った久保建英。高い技術が光った
前半6分だった。右サイド前方のスペースに走った堂安律の鼻先に、右サイドバック(SB)酒井宏樹の縦パスが送られる。堂安は利き足である左足にボールを持ち替えず、そのまま右足でマイナス気味に折り返した。そして、1トップを張る林大地が、左サイドに逃げたことで生まれた真ん中のスペースに、久保建英が飛び込むと、次の瞬間、メキシコのゴールネットは揺らいでいた。
メキシコにとっては、まさかの失点。ショッキングな大誤算だった。とはいえ、日本にとっても単純に喜べないゴールである。時間的に「早すぎるゴール」になりはしないか心配になった。格上意識を剥き出し、厚かましく迫ってくるメキシコをいっそう怒らせることにならないか、そう考えた。
ところがメキシコの怒りは、日本の先制点からわずか5分後、ラフプレーとなって現れた。ペナルティエリア内の左サイドで縦勝負を挑んだ相馬勇紀が、対峙する右SBセサル・モンテスに深いタックルを浴びる。VARで相馬の左足にスパイクの裏が入ったと判定され、日本にPKが与えられた。堂安がこれを簡単に決め、日本は早々に2-0とリードした。
4-2-3-1の「3」の左。相馬が務めたこのポジションは、初戦の南アフリカ戦では三好康児が先発していた。森保一監督がメキシコ戦に向け、唯一スタメンをいじった場所でもある。もし相馬ではなく、三好だったらこのPKはゲットできていなかったかもしれない。
縦への推進力、直進性という点で、相馬と三好の間には大きな差がある。中盤的なプレーを好む三好ならば、縦勝負を挑んでいなかったのではないか。この2点目は、まさに森保采配が奏功した格好だった。
メキシコはこれで完全に歯車が狂った。プレーに力が入りすぎ、自慢のパス回しに軽やかさが生まれない。日本のボールを奪う動きがよかったこともそれに輪をかけた。そうした意味では、日本ペースで進んだと言えるが、同時に日本の問題点も露呈することになった。
遠藤を中心にボールを奪うまではいいが、そこから先に問題があった。つなげない。回せない。よってボール支配率は上昇せず、前半を終了して42%対58%。メキシコに遅れをとることになった。
メキシコ戦の後半23分、日本は田中碧が前方を走る堂安に縦パスを送る。抜け出せばGKと1対1になりそうな瞬間、堂安が転倒。主審はそのマーカーであるDFホアン・バスケスのプレーを決定機の阻止と判定。一発レッドに処したのだった。
2-0でしかも相手は10人。日本の敗戦はまず考えにくい、これ以上は望めない余裕のある展開になった。ここで注目ポイントとして浮上したのは2つの点になる。
まず選手交代だ。この時点で交代カードを切っていたのは、相馬に代えて前田大然を投入した後半20分の1度だけ。交代5人枠をどう使い切るか注目された。
準決勝以降へ進出するためには、つまり、メダル獲得を目論むなら、これから体力的にきつくなる。中2日で4試合(決勝戦のみ中3日)を戦う強行軍では、消耗戦が予想される。監督には、選手の出場時間を平均化させることが求められている。
出ずっぱりの選手を減らし、使える選手を増やす。戦力が増えれば、プラスアルファの力、高揚感がチームに芽生える。というわけで、森保監督の選手交代術に注目が集まった。
◆日本の五輪3戦目フランスは戦力大幅ダウン。スペインはドリームチームで出場
ゲームをいかにコントロールするかも焦点だった。具体的には、42%対58%だった前半のボール支配率の関係を、どう改善するか。奪うだけでなく、ボールを広く動かす展開力、パスワークの発揮どころになった。
ところが、この2点とも不満が残る結果になった。森保監督が行なった交代は、計3度で終了。第1戦の南ア戦も4度で終わったので、2試合で10人分ある交代枠を、7回しか活用していないことになる。また、この日、いじったスタメンも1人のみだった。現時点で、出場時間をシェアできている状態にはない。金メダルを狙うチームの監督には相応しくない采配になっている。
2018年ロシアW杯の西野(朗)采配を彷彿とさせる、選手交代と言われても仕方がない。
選手は、そんな監督采配を何気に見ているものだ。プレッシャーが掛かると、あるいは目の前に勝利がちらつくと、固まりがちになる監督を見て、少なからず不安を覚えているのではないか。森保監督はこの傾向を、2020年1月に行なわれたU-23アジア選手権などでも見せている。代表監督の資質が問われていると言っても言いすぎではない。
自力で決勝トーナメントに進むためには2点差で負けることが許されなくなった第3戦。森保監督はフランス戦に、いったいどんなメンバーで臨むのか。この日と同じ11人を並べ、そして交代枠を使い切らないのであれば、日本の金メダルは危ない。
ボール支配率に話を戻せば、結局、前後半を合わせた数字は41%対59%と、前半の数字より広がることになった。相手は後半23分から10人で戦っているというのに、だ。日本が後半40分、失点を喫した理由でもある。ゲームをコントロールできなかったツケが響き、1点差に詰め寄られ、慌てることになった。
日本には久保や堂安など、相手に負けない技術を備えた選手を何名か擁している。実際、局面ではメキシコ以上と言いたくなる光るプレーを発揮した。その技術力がボール支配率になぜ反映されないのか。
それは日本人監督が指導するチームにありがちな、日本サッカーの構造的な問題といってもいい。ボール支配率の悪さは、7月17日に神戸で行なわれたU-24スペイン代表とのでも顕著だった。36%対64%。この傾向は、初戦の南ア戦でも見え隠れした。日本の支配率は52%を示したが、南アが5バックで自軍ゴール前を固める作戦をとってきたことを考えると、60%はほしい試合だった。
遠藤に代表される、ボールを奪う力を讃える声はいま溢れている。それを否定するつもりはないが、奪ったボールをなぜすぐに奪われてしまうのかとの批判は、なぜかあまり聞こえてこない。要はバランスの問題だが、そのあたりの改善を怠ることは、ボールを簡単に失うサッカーを肯定することになる。
個々の技術力をチーム全体にどう反映させるか。試合が進むにつれ、問題点ははっきりしてきた気がする。「メキシコと準決勝以上でもう一度対戦したら勝てるか」と問われれば、現状では5割に達していないと見る。