「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#12「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカ…
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#12
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。多くのプロ野球選手も加入するパフォーマンスオンラインサロン「NEOREBASE」主宰、ピッチングストラテジストの内田聖人氏は今大会、投手の“球”を独自に解説。金メダル獲得を目指す侍ジャパンは24日に壮行試合・楽天戦(楽天生命)に3-5で敗れた。2番手で2回1失点2奪三振だった森下暢仁投手(広島)の武器の一つ、カーブについて聞いた。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原英彰)
◇ ◇ ◇
まず、森下投手の凄さはコントロールにあります。どの球種でもストライクが取れるし、三振も取れる。この日投げた球種でもストレート、カットボール、カーブ、チェンジアップ、どれも精度が高い。国際試合で初見の打者はなかなか狙いを絞れないのではないでしょうか。
投球動作では、森下投手の特徴は体を倒すようにして、腕を真上から投げ下ろす。メジャーでいうと、クレイトン・カーショー投手に近い。
ストレートは縦のホップ成分が強く、その真逆のカーブをうまく組み合わせている印象です。狙い球からカーブは抜けることが多いので、例えば、初球に投げるなど、打者からしても嫌な球になると思います。
森下投手のカーブは“強いカーブ”の印象です。ただ抜くだけではなく、全身を使ってボールに圧力をかけ、回転をかけられている。回転数がかなり高い印象で、毎分2700回転というデータもあるようですし、2イニング目の山崎剛選手には初球から2球続けた点を見ても自信があると思います。
いろんな年代の指導をしていますが、カーブは「一番最初に覚える変化球」のイメージが強いですが、実は「一番難しい変化球がカーブ」という可能性すらあります。
「一番難しい変化球」をハイレベルに操る森下の凄さ
ストレートは押し出すように腕を振りますが、カーブは手首をひねるくらいに振る。ストレートは綺麗なバックスピンをかけますが、トップスピンをかける球種なので、ストレートと同じ軌道では投げられない。もし、同じ軌道で投げたらワンバウンドしてしまいます。
カーブの場合、どんなに良い投手でもリリースの位置はずれやすい。バスケのフリースローのように直線的な軌道のコントロールだけじゃなく、(リリースの)奥行きもコントロールしなければいけない。だから、難しい。「一番最初に覚える変化球」の認識も違う可能性すらあります。
アマの投手を見ていて、よくあるエラーパターンは手先だけで曲げようとすること。だから、なんとなく“遅いだけの球”になってしまう。森下投手はスピン、しかもトップスピンをストレートと真逆のような回転で投げているので、変化量はかなり大きい。
基本的に多投する球種ではなく、ストライクが欲しいところで意表を突いたり、ギリギリで空振りが取れるコースに投げたりが求められる。球速が遅い分、ミスが許されない球種でもあります。それをハイレベルに操れているというだけでも森下投手の凄さが分かります。
トップレベルを目指す中高生は「侍ジャパンの投手はそれだけの技術があるんだ」と感じ、注目してみたらより東京五輪が楽しめると思います。
■内田聖人 / Kiyohito Uchida
1994年生まれ。早実高(東京)2年夏に甲子園出場。早大1年春に大学日本一を経験し、在学中は最速150キロを記録した。社会人野球のJX-ENOEOSは2年で勇退。1年間の社業を経て、翌19年に米国でトライアウトを受験し、独立リーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。チーム事情もあり、1か月で退団となったが、渡米中はダルビッシュ有投手とも交流。同年限りで指導者に転身。昨年、立ち上げたオンラインサロン「NEOREBASE」は総勢400人超が加入、千賀滉大投手らプロ野球選手も多い。個別指導のほか、高校・大学と複数契約。自身も今年自己最速を更新する152キロを記録。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)