アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)は男子本戦の初日、シングルス1回戦で初出場の西岡良仁(ミキハウス)…

 アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)は男子本戦の初日、シングルス1回戦で初出場の西岡良仁(ミキハウス)がエリアス・ウマー(スウェーデン)を6-4 6-1で下して2回戦進出を決めた。

 今季最初のマスターズシリーズ、インディアンウェルズ大会の男子シングルスのドローに名を連ねた日本人は錦織圭(日清食品)と西岡のみ。その西岡も前日の予選2ラウンド目で敗れていたのだが、リシャール・ガスケ(フランス)が欠場したためにラッキールーザーとして本戦入りが叶った。その本戦の初戦の相手が、前日の予選で敗れた相手と同じ、20歳のウマーだった。

 ガスケが欠場したときドローはまだできていなかったが、予選はすでに始まっていたため繰り上げエントリーは叶わず、本戦ドローには初めから予選通過者12名とラッキールーザー1名を合わせた13名分の枠が〈予選通過者/ラッキールーザー〉として空けられていた。偶然、その〈予選通過者/ラッキールーザー〉同士が1回戦で対戦するところに、西岡とウマーが入ったというわけだ。

 実に珍しいことかと思いきや、西岡は3年前にも経験があるという。そのときは立場が逆で、予選でベンジャミン・バレレ(モナコ)に勝って本戦入りした西岡の1回戦の相手がまた、ラッキールーザーで上がってきたバレレだった。西岡はふたたび勝ったが、「同じ相手とやるのは、たぶん向こうのほうが嫌だったと思う。負けたほうは向かっていける」と言ったのは、経験談でもあったのだ。

 前日は3-6 1-6で完敗したにもかかわらず、ポジティブな気持ちで勝利をつかめた原因は、それだけではなかった。前日の自分が連戦による精神的な疲労から絶不調だったこともラッキーだったという。

「相手は状態がいいときの僕を知らないので、いい入り方ができればプレッシャーをかけられる」

 西岡のほうは、ウマーがどう自分を攻略したかわかっていた。ボールが高く弾むサーフェスを利用し、小柄な西岡に対してスピンをかけた「中ロブ系」でしつこく攻め、西岡はミスが増えて苛立ちが募った。

 「同じ相手に2日連続で負けるのは嫌だった」という気持ちが、前日とは別人の粘り強さを生んだ。我慢してラリーを続け、なるべく前に入って攻める姿勢を貫いた。冷静に試合運びができれば、世界ランク70位の西岡と158位のウマーの間の差を見せることができるはずだ。

 いきなり第1ゲームで2度のデュースのあとブレークし、すぐにブレークバックを許すが、第9ゲームで2度目のブレークに成功。ウマーも簡単には引かなかった。第1セットの計10ゲームのうち複数のデュースにもつれたゲームは5つあり、両者合わせて3つのブレークゲームはすべてその中に含まれている。2日連続で対戦した両者の意地の見せ合いのような展開だった。

 第2セットは西岡がより一方的に試合を進め、4ゲームを連取してリードを広げると、結局6-1で締めくくったが、このセットも西岡がブレークした3ゲームのうち2ゲームは3度のブレークの末のブレークだった。

 予選で敗れたときに「しばらく休んでマイアミに備えよう」と少しほっとしていたというが、会心のリベンジは短時間でスイッチを入れ直せた証拠だろう。次は第19シード、身長211cmの超ビッグサーバー、イボ・カルロビッチ(クロアチア)という大難関に挑む。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)