試合の開催が正式に報じられたのは、キックオフまで2時間という段階だった。来日するや南アフリカのスタッフ1人と選手2人の…
試合の開催が正式に報じられたのは、キックオフまで2時間という段階だった。来日するや南アフリカのスタッフ1人と選手2人の新型コロナ感染が判明。冬の母国から高温多湿な日本にやってきた国の選手たちは、満足な練習が積めぬまま初戦に臨むことになった。さらに出場不可能な故障者も抱えていた。この日本戦では、0-1でリードされる展開になったにもかかわらず、実際、わずか2人しか選手を交代できなかった。
だが、この「アウェー指数」がマックスに達しようかという南アフリカから、「ホーム指数」がマックスに達しようとする日本は、なかなか先制点が奪えない。後半26分まで0-0で推移する大苦戦を強いられた。交代でベンチに下がった中山雄太が主審に抗議して、イエローカードをかざされる様は、いただけなかった。

後半26分、久保建英のゴールで南アフリカを振り切った日本
南アフリカのデービッド・ノトアン監督は、自らが立てた守備的な作戦について、今ごろ、失敗だったと後悔しているに違いない。
立ち上がりから南アフリカは、4-2-3-1を敷く日本に、5バックになりやすい守備的な3バックで受けて立った。後ろに人が多い布陣を用いて、自軍ゴール前を固めようとした。
一転して南アフリカが布陣を攻撃的な4-3-3に変更したのは、先制ゴールを奪われた後半26分以降。すると、急にパスコースが開け、ボールはピッチを広く鋭く、駆け巡った。過去に見た南アフリカのサッカーの中で、最もよかったと言いたくなるほど、劇的に変化した。
もし、南アフリカが最初から4-3-3を用いて正攻法で向かってきたら、日本は危なかった。コンディションのいい中で対戦したら、さらに大苦戦していただろう。実は薄氷を踏む勝利であったことを、我々はもっと心配したほうがいい。
後ろを固める相手に対峙する時のセオリーはサイド攻撃だ。それが唯一の方法になる。しかし日本は、そこが徹底されているようには見えなかった。終始ベンチ前に立って観ていた森保一監督からは、どんな指示が飛んでいたのだろうか。
相手が引いて構える時は、それこそ大外から丹念に、皮を1枚ずつ剥ぐように侵入していくのが基本。先日、日本が対戦したスペインは、ウイングとサイドバック(SB)、それにインサイドハーフを加えた3人で、サイドに数的優位な状況を作っていた。
相手のセンターバック(CB)をサイドにおびき出すことができれば、しめたもの。中央が手薄になったそのタイミングで、マイナスの折り返しを送れば、後は合わせるだけになる。シューターは、相手GKとディフェンダーとボールを瞬間、同時に視界に捉えることができるので、そのキックの難易度は下がる。得点の期待が高まる瞬間となる。
だが、このセオリーにしたがった攻撃が、日本はできていなかった。サイド攻撃は散発。ウイングとSBが中心となり、サイドで数的優位を作りながら、コンビネーションでえぐっていくシーンは、右サイドで1、2回あったかどうか。左は、ほぼ単独攻撃に限られた。
引いた相手をどう崩すか。考えながらプレーしているようには見えなかった。ベンチから指示が飛んだフシも見られなかった。4-2-3-1の2列目に並ぶ(左から)三好康児、久保建英、堂安律の3人は、早い段階から真ん中の密集地帯に入り込み、難易度の高い、強引とも言うべき無謀な突っ込みをくり返した。
身長167センチ(三好)、173センチ(久保)、172センチ(堂安)。3人は本来なら、「柔よく剛を制す」の精神で、相手の大型CBに対峙することが求められるはずだ。鮮やかな決勝ゴールをマークし、帳尻を合わせる格好になった久保はともかく、堂安、三好は貢献度の低いプレーに終始した。
この3人についてさらに言うならば、それぞれはポジションを頻繁に変えていた。堂安のポジションはどこなのか。久保のポジションはどこなのか。不鮮明な状態に陥った。流動的といえば聞こえはいいが、流動をくり返せば3選手の絶対的な幅は失われる。サイド攻撃が疎かになる理由でもあり、引いて守る相手の術中にはまる原因のひとつでもあった。
各人のフィーリングに委ねる規律のない流動性は、最後まで改善されることはなかった。
◆日本サッカーの「名手」たちを比較・ランク付け
しかも、この3人はともに左利きだ。意外性に富んだ組み合わせを売りにしようとする目論見なのだろうが、実際にはその負の側面である、バランスの悪さ、調和の悪さを露呈させることになった。流動的な動きをくり返す3選手がこの状態では、チャンスは膨らみにくい。
そしてさらに厳しく言うならば、三好は本来、左ウイング(4-2-3-1の3の左)を任せるには、突破力不足である。4-3-3のインサイドハーフが適していると見える選手だ。そんな三好を活かすには4-3-3を併用するしかない。
4-3-3のほうが、堂安、久保が流動的に動く癖も抑えられる。早い段階でテストすべき布陣だと思う。試合中に4-2-3-1から4-3-3に変化させれば、戦術的交代の幅も広がるだろう。
もうひとつ森保監督に疑問を感じたのは、選手交代を4人で打ち止めにしたことだ。交代枠5人を使い切らずに試合を終えたツケは、大会の終盤、必ず現れる。6試合戦うことを目標に据えて臨む監督としては、いただけない采配だった。選手を代えて同点にされたらどうしようとの不安が、行動を萎縮させるのだろうが、その余裕のなさは、短期集中トーナメントを主戦場にする代表監督にとって、致命的な問題になる。
できるだけ多くの選手を使い、そして4-2-3-1の3を機能させる。次戦メキシコ戦の森保采配でなにより注目すべきはこの2点。改善の余地が見られないと、先行きへの不安はさらに広がることになるだろう。