日本代表は海外組の3人を核に、12人全員の力を結集して良い結果につなげたい(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)世界を…

日本代表は海外組の3人を核に、12人全員の力を結集して良い結果につなげたい(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)
世界を驚かせる挑戦がいよいよ始まる
5人制男子バスケットボールの日本代表が、45年ぶりにオリンピックの舞台に戻ってくる。2019年3月30日に、コートジボワールのアビジャンで開催されたFIBAの理事会で、今大会での開催国枠適用が承認された時点で、すでに歴史が動き出しているが、その後の強化・選考を経た最終の12人がコートに立つ情景を想像し、感慨深い思いに浸っておられる関係者やファンもきっと多いことだろう。
大会が近づくにつれ、日本代表はあらゆる世代からの祝福に値する成果を見せ始めている。バスケットボールに熱を注いだあらゆる世代の人々が、あらゆる異論や反論の壁を越えて声援を送ることができる12人が戦う準備をしている。おめでとう、頑張れ、信じているぞ――無観客の会場で、彼らはきっとそうした人々の思いを受け止めて戦ってくれるに違いない。
5人制男子バスケットボールの競技フォーマットは女子とまったく同じだ。出場12チームが4チームずつ3つのグループに分かれて総当たりのグループラウンドを行った後、各チームの上位2チームと、3位の中で成績が上位の2チーム(計8チーム)でノックアウト方式のメダルラウンドへと進む。12チームのグループ分けは以下のようになっている。
グループA: イラン(23)、フランス(7)、アメリカ(1)、チェコ(12)
グループB: オーストラリア(3)、ドイツ(17)、イタリア(10)、ナイジェリア(22)
グループC: アルゼンチン(4)、日本(42)、スペイン(2)、スロベニア(16)
※カッコ内はFIBA世界ランキング
ランキングを見れば、男子日本代表は出場全チーム中で唯一トップ25から大きく逸脱した下位チームというのが現実だ。しかも、本番の初戦では、FIBA世界ランキング2位のスペイン代表と闘うことになっている。チームリーダーの東野智弥技術委員長が最終メンバー発表時に語ったのは、「世界を驚かせるバスケットボール」をすること。限りなく大きな挑戦だ。しかし、日本代表は7月に入ってからのウォームアップ・シリーズで、その挑戦に向かう準備が相当高いレベルでできていることを感じさせた。
対戦した相手はすべてFIBA世界ランキングでは格上のハンガリー代表(38位)、ベルギー代表(37位、2試合)、フィンランド代表(32位)、そしてフランス代表(7位)。この5試合で日本代表は、最高位のフランス代表との試合における大金星を含め3勝2敗と勝ち越している。海外組のプロ3人がそろった直近の2試合はいずれも白星。また、敗れた2試合はいずれも2ポゼッション以内の僅差だった。
ロスター12人の核は、エキジビション2試合に出場してチームトップの平均21.5得点、6.5リバウンド、2.0アシストを記録した八村 塁(ワシントン・ウィザーズ)と、5試合すべてでスターターを務め平均18.2得点、5.8リバウンド、2.6アシスト、1.6スティールの渡邊雄太。得点面では比江島 慎(宇都宮ブレックス)も5試合で平均11.2得点。さらにエドワーズ ギャビン(千葉ジェッツ)が平均10.8得点と、2ケタアベレージが4人いる。
また、ウォームアップ・シリーズでは際立った数字を残していないものの、2試合を通じてやはり馬場雄大(メルボルン・ユナイテッド)のプレーぶりは力強さを感じさせている。フランス代表に対する勝利を決定づけたのも、馬場のスティールからのダンクだった。
比江島は3P成功率が61.5%と好調だ。フィナーレの対フランス代表戦では2Pショットとフリースローも含め放ったショットすべてが成功。自信を感じさせるアグレッシブなアタックが好結果を生んだ。
エドワーズはリバウンドがチームトップの平均7.8本で、フィールドゴール成功率も64.3%と高確率だ。彼ら4人に加え、平均7.6得点、フィールドゴール成功率48.3%、3P成功率も36.4%と得点力を示しつつ3.4アシストにチームトップの1.8スティールと攻守に力を発揮しているビッグガード、田中大貴(アルバルク東京)の存在がさらに相手チームに脅威をもたらしている。

日本代表と同組のスペイン代表とアルゼンチン代表はFIBAワールドカップ2019のファイナリスト(写真/©fiba.basketball)
ポテンシャル示した前哨戦5試合
しかし、核となる4人がエキジビションと同レベルで活躍したとしても、グループラウンドで1勝するには足りないだろう。
スペイン代表はFIBAワールドカップ2019のチャンピオンであり、ここに至るまでに5試合行ったウォームアップ・ゲームでも、負けたのはFIBA世界ランキング1位の意アメリカ代表との試合だけだ。パウとマルクのガソル兄弟をはじめ、ルディ・フェルナンデスやセルヒオ・ロドリゲス、リッキー・ルビオら過去・現在のNBA プレーヤーが健在ぶりを示している。
リトアニア、カウナスでの最終予選を勝ちぬいたスロベニア代表は、NBAオールスターで身長201cmのルカ・ドンチッチという、現在世界最高のポイントガードの一人を擁するチームだ。その最終予選では、戦った4試合で平均106.0得点という爆発的なオフェンス力を見せていた。平均21.3得点、8.0リバウンド、11.3アシストのドンチッチさえ何とかすれば勝てる…のは正解かもしれないが、それが極度に難しいことは、NBAファンならずとも感じてもらえるのではないだろうか。
グループ戦の最後に対戦するアルゼンチン代表はFIBA世界ランキング4位で、スペイン代表とともにFIBAワールドカップ2019の決勝に進出したチームだ。大ベテランのルイス・スコラのリーダーシップの下、デンバー・ナゲッツのポイントガード、ファクンド・カンパッソら現役NBAプレーヤーを中心に知略・戦略で対抗してくる。ラスベガスでのエキジビション3試合は、ナイジェリア代表、オーストラリア代表、アメリカ代表に対しいずれも黒星で終わったが、セルヒオ・エルナンデスHCはまったく動じていない。
日本代表にとって非常に明るい材料は、真の強豪と呼べるこれらのチームへの挑戦を前に、エキジビション・ゲームで光るプレーを見せたのが、前述の6人だけではなかったことだ。例えば金丸晃輔(島根スサノオマジック)は、この5試合で3Pショットを39.1%の確率で決めた。海外組がそろってからの2試合で5本中1本しか決められていないが、逆にそれだからこそ本番で確率が上向くことが期待できる。
富樫勇樹(千葉ジェッツ)はBリーグでのチームメイトであるエドワーズとの速攻を演出したり、スピードを生かしたドライブや1対1から思い切りよく放つ3Pショットで相手にダメージを与えていた。2Pショットの成功率は75.0%と非常に高い。アシストも5試合中3試合で3本記録しており、おおむね流れを掌握できている。

つなぎのプレーメイカーとして好プレーを見せた富樫の存在も頼もしい(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)
張本天傑(名古屋レッドダイヤモンドドルフィンズ)とシェーファー アヴィ幸樹(シーホース三河)は、体を張ったリバウンドとディフェンス面での存在感に加え、相手のディフェンスをアウトサイドに引っ張り出せるシューティングレンジを示した。渡邉飛勇(琉球ゴールデンキングス)も、ワンポイント的な起用の中で、獲るべきリバウンドを獲った。彼らバックアップ・フロントラインの貢献があってこそ、八村と渡邊の能力が全開で発揮できるというものだ。
フランス代表相手には出場機会がなかったベンドラメ礼生は、6月のアジアカップ2021予選の段階から、試合の流れを変える重要なプレーをたびたび成功させた。相手のガードに対する非常にアクティブで執拗なディフェンスが効果的で、“ゲームチェンジャー”としての存在価値を大いに感じさせている。

日本代表は中心となるプレーヤーだけでなく12人の総力戦で活路を見出したいところ(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)
慌てず序盤を組み立て好機をつかめ!
FIBAワールドカップ2019の初戦でトルコ代表と対戦した際、日本代表は最初の5分余りで5-15と先行された。最初の得点(ファジーカス ニックの3Pショット)までは約2分半かかっており、その間に3つターンオーバーを犯していた。
一方、今回のウォームアップ最終戦となったフランス代表との試合では、先行されたものの八村と渡邊の得点で対抗。しかも前半はターンオーバーを一つも犯すことなく安定感のあるオフェンスを展開した。その結果が第1Q終了時点で18-14、前半終了時点で46-30という優位な展開だった。
特に初戦の対スペイン代表戦でこの時間帯をしのぐことができれば、その後の戦いに活路を見出すことができるだろう。
そこから先はどうなるか誰にもわからない。夢を並べて終わるとすれば、もし3試合を通じてそのような展開ができれば、勝機がどこかで訪れる。その勝機をつかんでもしも1勝でもできた場合には、8強入りの可能性が見えてくる。
さらに、仮に8強に入れる場合、それはもう、どこがどこに勝っても負けてもおかしくない舞台だ。日本は堂々と、引け目を感じることなく金メダルを語れる存在となっている。この段では、ラマス フリオHCの経験と采配もより大きな意味を持ってくるだろう。
※次ページ: TV放送予定と全試合日程
☆テレビ放送予定 ※変更の場合あり
7月26日(月): 日本対スペイン NHK Eテレ(20:45-ライブ)
7月29日(木): スロベニア対日本 NHK総合(13:05-ライブ)
8月1日(日): アルゼンチン対日本 NHK BS1(13:30-ライブ)
8月3日(火): 準々決勝 NHK総合(13:05-ライブ)
8月7日(土): 決勝 NHK BS1(11:20-ライブ)
☆gorin.jp
https://www.gorin.jp/
※上記URLで「競技」ボタンから「球技・ラケット」を選択すると、3人制、5人制のバスケットボールを選べる
☆全試合日程
7月25日(日)予選ラウンド
10:00-12:00 グループA イラン対チェコ
13:40-15:40 グループB ドイツ対イタリア
17:20-19:20 グループB オーストラリア対ナイジェリア
21:00-23:00 グループA フランス対アメリカ
7月26日(月)予選ラウンド
13:40-15:40 グループC アルゼンチン対スロベニア
21:00-23:00 グループC 日本対スペイン
7月28日(水)予選ラウンド
10:00-12:00 グループB ナイジェリア対ドイツ
13:40-15:40 グループA アメリカ対イラン
17:20-19:20 グループB イタリア対オーストラリア
21:00-23:00 グループA チェコ対フランス
7月29日(木)予選ラウンド
13:40-15:40 グループC スロベニア対日本
21:00-23:00 グループC スペイン対アルゼンチン
7月31日(土)予選ラウンド
10:00-12:00 グループA イラン対フランス
13:40-15:40 グループB イタリア対ナイジェリア
17:20-19:20 グループB オーストラリア対ドイツ
21:00-23:00 グループA アメリカ対チェコ
8月1日(日)予選ラウンド
13:40-15:40 グループC アルゼンチン対日本
17:20-19:20 グループC スペイン対スロベニア
8月3日(火)準々決勝
10:00-12:00
13:40-15:40
17:20-19:20
21:00-23:00
8月5日(木)準決勝
13:15-15:15
20:00-22:00
8月7日(土)メダルセッション
11:30-13:30 決勝戦
20:00-22:30 3位決定戦・表彰式
文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)