―シーズンお疲れ様でした。どんなシーズンでしたか?  今シーズンはいいチームで終わってしまったなという感想です。試合が終わったらたくさんのファンの方に「良い試合だったよ」って言われるんですけど、結果が伴わなかったシーズンでした。良い試…


―シーズンお疲れ様でした。どんなシーズンでしたか?
 今シーズンはいいチームで終わってしまったなという感想です。試合が終わったらたくさんのファンの方に「良い試合だったよ」って言われるんですけど、結果が伴わなかったシーズンでした。良い試合じゃなくて結果を出さないとやっぱりダメですね。  最後の入替戦の近鉄戦もそうですが、負けた試合は最後の一つのプレーでミスが出てスコアできなかった場面が多かったんです。ビッグゲインしたあとによくミスが出てしまいました。一人ひとりの甘さというか、日ごろの練習のなかで究極の局面を想定した練習ができていなかったんだと思います。練習の時からもっと一つ一つのパスに対しても試合でのプレッシャーを意識してやるべきだと改めて思いました。強いチームは、数的優位な状態じゃない場面でポッと抜けたプレーヤーに対してのフォローがしっかりしているんです。そして、そこで絶対にスコアして帰る。僕たちは、フォローが遅れたりミスが出てスコアどころか、その流れでトライを取られたりしました。トライが取れなかっただけでなくトライを取られているので、その差は14点分のミスなんです。そこをもっと徹底していかないといけないです。
―これまで表立って人を動かすことは向いていないと思っていた中靍、人生で初めてキャプテンとしてのシーズンを迎えた。
 まずは個人としては、キャプテンとして、試合に出続けることを意識しました。言葉よりもプレーで引っ張っていこうと思っていたので(笑)。周りのリーダーがすごく周囲の意識を高めることをしてくれたので、僕は自分のプレーに集中していました。バックスとしては、スペースにボールを運んでいく、スペースを見つける、スペースを作りだす。ここを瓜生(丈治)監督が徹底してくださったので、僕たちも考えてやってきました。フィジカルの面での取り組みが実を結んだと思いますし、シーズン終盤は全体的に激しさが出てきました。みんな本当に大きくなりましたよ(笑)。あと良かった点は、リロードの部分です。タックルに行ったらすぐに立つ。ディフェンスの枚数を減らさないためにどうするかを全員が意識できてきたと思います。日本人選手だけで戦っている僕らの生命線だと思っていますし、この部分で戦えなかったら勝負にならないですね。
―そろそろトップリーグでキューデンを見たいと言うファンも多いですが…。
 今年こそ! って毎年言っていますけど、本当にトップリーグで試合がしたいです。そのためにはやることもたくさんあります。来年指名されたら、もちろんキャプテンとして昇格を目指して戦っていきたいと思います。
―今年、トップリーグで優勝しMVPに輝いたサントリーの中靏隆彰は実の弟だ。最後に聞いてみた。「今年、弟さんはブレイクしましたね?」と…。
「悔しいとかいう気持ちは無くて本当に一人の選手として尊敬できるプレーヤーになりましたね(笑)」

 私は「悔しいですか?」とは聞いていないが、こう返答してきた。無論、悔しくないはずはない。中靍にも弟と同じようにトップリーグ上位のチームでプレーするチャンスはあった。だが彼は九州電力でプレーすることを選択したのだ。  中靍がこう考えているかは定かではないが、ほとんどの人間は「もし、あのチームに行っていたら…」と考えるだろう。しかし、それは無駄な時間でしかない。  “決して比べることのできないもう一つの道を選んだ自分に勝つ”には、同じ想いを抱くすべてのチームメイトたちと悲願を達成するしかない。その先にファンが見たい「兄弟対決」が待っている。
(記事・写真 提供/『NOW RIVALS』) ※ 2017年2月17日発行 ISSUE 19 より転載
『NOW RIVALS』(ナウ・ライバルズ)は福岡で発行されている ラグビー専門のフリーペーパーです。
【定期購読のお申し込みはこちら】 http://rivals.jp/
<『NOW RIVALS』最新号表紙>