東京オリンピックで男子日本代表が最初に対戦するスペイン代表のウォームアップシリーズは、7月3日と5日に国内でイラン代表…

 東京オリンピックで男子日本代表が最初に対戦するスペイン代表のウォームアップシリーズは、7月3日と5日に国内でイラン代表と2試合を行い、その後フランス代表とホーム&アウェイで1試合ずつをこなし、さらにアメリカのラスベガスに飛んで現地時間18日(日本時間19日)にアメリカ代表と対戦するという準備経過をたどった。

 

 この最終戦(76-83で敗戦)を終えた後の会見で、リッキー・ルビオに日本代表に関することを聞いてみた。何しろ、日本代表との初戦はこの時点からちょうど1週間後に迫っている。質問は、「現在の日本代表について何を知っていますか?」という直球ズドンだ。

 

 ルビオは快く答えてくれた。「NBAプレーヤーが二人いることは知っています。それと、今日フランスに勝ったと思いますが…」

 

ルビオが日本代表とフランス代表の試合結果をこんなに早く知っていたとは思わなかった(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます 写真/©USABasketball)

 

 前半部分は当然、八村 塁(ワシントン・ウィザーズ)と渡邊雄太(トロント・ラプターズ)のことだ。特に渡邊については、ヘッドコーチのセルジオ・スカリオロ氏がラプターズのアシスタントで、マルク・ガソルもメンフィス・グリズリーズ時代のチームメイトであることから、相当深く情報が伝わっていてもまったく不思議ではない。

 

 しかしフランス代表に勝ったことを知っていたのは少しだけ意外だった。このQ&Aは日本時間の19日正午頃。日本代表がフランス代表を倒してから20時間程度過ぎていたので、知っていて不自然ではないのだが、FIBA世界ランキングではグンと格下になる日本代表の情報を、いち早く耳に入れていたのか。ルビオはさらに、「我々には日本で指導しているコーチも何人かいますから、映像を見て話していくつもりです」と続けた。

 

 ラスベガスで行われた一連のアメリカ代表のウォームアップ活動をズーム会見で取材させてもらった中で、この手の質問に対してたびたび聞かれた回答は、「我々は自分たち自身の調整に躍起で、他チームについては気にしていません」というものだ。女子アメリカ代表のプレーヤーや関係者は、一般論として日本代表の特徴を語ってくれたが、それは伝統的なものだったり過去の対戦経験からのものだった(もちろんそれでも非常におもしろく、貴重な情報だ)。


 ルビオも確かに「この準備期間は我々自身についてのものでしたから、知っているのは少しだけです」とは答えた。しかし、日本にいる仲間に情報を聞き、「これからは本当に研究していかないといけません」と話すのを聞くと、フランス代表に勝った日本代表に対する警戒レベルが上がったと感じる。
 ルビオは締めくくりに、「やはり初戦は特別ですから。オリンピックのような短期決戦では、最初に良い入り方をするのはとても大切なことです。もちろんNBAの二人はよく知っていますよ。でもほかのメンバーがどうなのか、重要ですよね」と話した。英文での回答は以下のようなものだった。

 

I mean I know a couple of their guys play in the NBA and I think they beat France today, so….
We have a couple coaches who coach in Japan. We are gonna be ready soon to watch film and talk about them. But this preparation was about us getting ready to get there. So we know a little bit. But now it’s time to really know about them. Because it’s gonna be the first game. I always…, the first game is special in a short tournament like it is. It’s very important to start in the right way. Off course the couple guys who are in the NBA, we know them very well. But it’s about the other guys as well.

日本代表とスペイン代表のマッチアップ

 

 いまや日本代表の最新情報は、きっちりスペイン代表の司令塔の頭脳にインプットされているのだろうか。

 

 ルビオは身長191cmのポイントガード。ここまでの流れを見れば、スターターで登場する。日本代表は、やはりここまでの流れから考えれば、スタートの時点では192cmのポイントガード、田中大貴(アルバルク東京)がマッチアップするだろう。それでは、二人がやり合うシーンを想像して、この対決が成立しないほどの差があるかと聞かれれば、そんなことはないと感じる。


 アメリカ代表との対戦におけるスペイン代表のスターターと、フランスを倒した日本代表のスターターを並べると以下のようになる(ポジションはあくまでも便宜的なもの)。

 

PG リッキー・ルビオ vs. 田中大貴
SG ルディ・フェルナンデス vs. 馬場雄大
SF アルベルト・アバウデ vs. 渡邊雄太
PF ビクター・クラベール vs. 八村 塁
C マルク・ガソル vs. エドワーズ ギャビン

 

ルビオと田中のマッチアップは見ごたえがある内容になるだろう(写真/©JBA)

 

 楽なマッチアップが一つもない一方で、個々の技量で圧倒されるとも思わない。ただ、圧倒的に違うのは経験値。日本は絶対的に、メンタルエッジを取られないことが大事だ。要は「吞まれない」ようにしなければ試合にならなくなる可能性はある。


 しかしフランスとの試合で内面的に吞まれない練習ができただろう。海外組だけでなく、エドワーズ ギャビン(千葉ジェッツ)、金丸晃輔(島根スサノオマジック)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)、張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、比江島 慎(宇都宮ブレックス)とコートに立ったそれぞれが、高評価に値するクォリティ・ミニッツを得た。

 

 コートに立たなかったベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)と渡邊飛勇(琉球ゴールデンキングス)はビビるだろうか? いや、アドレナリンが出すぎることはあっても、おじけづくことは絶対にないだろう。

 

 2年前、さいたまアリーナでドイツ代表を倒してFIBAワールドカップ2019に臨んだ日本代表は、コテンパンにやられた。しかしここまでの取材で聞いた話をいくつか並べれば、今の日本代表は当時から大きな発展を遂げている。


 田中を司令塔にすることで大型化がかない、ピック&ロールをより広いスペースで展開することでドライブ&キックの威力を増した。シューター同士のしのぎを削る競争を勝ち抜いたBリーグMVP金丸の加入で、決定力も高まっている。

 渡邉と八村はNBAで絶対的な自信を育んで帰ってきた。馬場はNBL王者としてプライドを持ってプレーしている。


 中国代表がオリンピック最終予選で結構な差をつけられて連敗を喫した(カナダ代表に79-109、ギリシャ代表に80-105)ことは、その中国代表にアジアカップ2021予選で二度敗れた日本代表に勝機ありとする見方に影を落とすだろうか。


 中国代表の戦いぶりを研究すれば、それは心配ではなく注意すべき点だということがわかるだろう。若いチームで臨んだ中国代表は、すべての時間帯で支配し続けられたわけではなく、極度に悪い時間帯で取り返しきれない失点を喫していた。しかもアジアカップ2021予選での日本代表は国内組だけだった。


 もちろん他チームも発展を遂げているが、完璧なチームなどどこにもない。そしてフランス代表との一戦のように、日本代表が完ぺきな試合をする日がある。


 スペイン代表は、フルメンバーがそろった直後のフランス代表と行ったエキジビションに87-79で勝利している。日本代表とフランス代表のスコアは、ご存じのとおり81-75だ。

 

 スペイン代表からしたら、「おや?」と感じたに違いないが、本番でさらに驚かせることができるか。戦いの本番はもうすぐだ。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)