川崎憲次郎が語る今季バケた投手@パ・リーグ編 混戦が続く今季のパ・リーグで、首位オリックスを押し上げているのが若手の台頭…
川崎憲次郎が語る今季バケた投手@パ・リーグ編
混戦が続く今季のパ・リーグで、首位オリックスを押し上げているのが若手の台頭だ。
とりわけ高卒2年目の左腕、宮城大弥の活躍が目覚ましい。開幕2戦目で西武打線を封じ込めると、ここまで14試合に先発してハーラーダービートップタイの9勝1敗、リーグ2位の防御率2.10と快投を続けている(今季の成績は7月16日時点。以下同)。
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2019年ドラフト1位で興南高から入団した宮城大弥
「正直に言うと、『なんで勝てるの?』って最初は思いました。すごいピッチャーなんですけど、とくに迫力があるわけでもないので」
解説者の川崎憲次郎氏は、第一印象をそう振り返る。逆に言えば、こうした"ギャップ"こそ勝てる秘訣なのだろう。川崎氏が続ける。
「フォームに迫力があるわけではないけど、ストレートは146、147キロ出ます。『えっ? そんなに出ているの?』って感じました。
それにスライダーがエグい。曲がりが大きくて、左バッターが全然合わないんです。なんなんだろうって、逆に聞きたいくらいですよ。今の時代、あれだけ左バッターが打ちにくそうにしているのは珍しい」
被打率.178はリーグトップ。まだ19歳で表情はあどけなく、五厘刈りにして話題になった"愛されキャラ"だが、高校時代に「琉球じじい」のあだ名をつけられた左腕は老獪なピッチングが持ち味だ。
たとえば、投球板を踏む位置を、左打者には三塁側、右打者には一塁側と使い分ける。わずか左右24センチの幅だが、投手にとってかなりの高等技術だと川崎氏は説明する。
「プレートの端から端まで使うとしたら、全然角度が違います。見える景色がまるっきり違うんですよ。それに合わせて投げようと思うと、普通は体がおかしくなります。僕も何回かやったことがありますけど、難しすぎました」
こうした技術を駆使しながら、宮城は小気味いいリズムで投げていく。だからこそ、打者が後手に回らされると川崎氏は見ている。
「初球から打っていけばいいのにと思うけど、戸惑っているのか、みんな初球を待つんです。それくらいテンポがいい。パ・リーグには初球からバンバン打ってくるバッターが多いのに、間が合わないというか、なんなのか。
本当にストライク先行で、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、というスタイルです。今の時代には珍しいタイプで、むしろ昭和に近い。3周回って今、みたいな」
高度な投球テクニックを見せているのは、黄金ルーキーの早川隆久(楽天)も同様だ。開幕前から前評判が高かった一方、川崎氏は不安を感じる点もあったという。
「変化球です。ストライクをとるボールと、ウイニングショットに少し苦労するのでは、と思っていました。しかしフタを開けたら、精度がいい。心配して損したな、というのが正直なところです」
早川はツーシーム、カットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップと多彩な変化球を誇るが、早稲田大学時代は「指へのかかりがあまりよくなく、ストライクはとれるけど、キレが甘い。コントロールし切れていない」というのが川崎氏の印象だった。
その不安が露呈されたのは開幕前、3月7日に行なわれた中日とのオープン戦だ。変化球になると腕の振りが緩み、4回3失点と打ち込まれた。
ただし並のルーキーと違うのは、すぐに改善してみせたことだ。プロ初登板となった3月28日の日本ハム戦で勝利すると、ここまで13試合で7勝3敗、防御率3.39の好成績を残している。
「スライダーを投げると腕の振りが緩んでいたのが、今はまったくわかりません。僕には絶対無理で、『そんなに簡単にできるのかよ!』って思います。そのへんの器用さがありますよね」
開幕前、川崎氏は早川の1年目について10勝に届くかどうかと予想していたという。それがすでに7勝をマーク。ストレートが通じることはわかっていた一方、対応能力に目を見張っている。
「簡単に言えば、チェンジアップが思うように落ちない時、どうやって打たせるか。低めに投げて誘うとか、引き出しをいくつか持っていると思います。
テンポが早いし、フォアボールも少なくて、宮城と同じような感じですね。スタイルは少し違うけど、今どきの子なのかなという感じもします。ふたりともテンポがすごく早くて、ストライクをバンバンとってくる。早川はストレートの質もすごくよくて、チェンジアップとの組み合わせで打ちとっていきます」
早川と同じ楽天に、7年前のドラフトで鳴り物入りで入団したのが安樂智大だ。
当時甲子園最速の155キロを計測した剛腕はプロ入り後、度重なる故障もあって鳴りを潜めていた。それが今季、勝ちパターンのセットアッパーに定着し、31試合で3勝0敗、防御率1.11と抜群の安定感を発揮している。
現在の安樂はストレートが140キロ代後半しか出ないなか、なぜ一軍で抑えられているのか。川崎氏は、中継ぎの役割がハマったと見ている。
「去年はロングリリーフで、実績を上げて今は6、7回の1イニングを任されています。先発の時は、5回まではよくても6回に急に捕まるなど、突然乱れ始めました。でも、今は1イニングだから、思い切って投げられているように感じます」
それまで活躍できていない選手が殻を破る、あるいはプロの世界で長く活躍するためには、"変化"を受け入れることが必要だと川崎氏は言う。安樂にとって、それがストレートの球速だ。
かつて150キロ以上出ていたのが、現在は140キロ台後半に下がった。外部から見れば衰えたように感じられるが、ともすればプラスに働いている可能性もあると川崎氏は指摘する。
「まず、肩ひじへの負担は今のほうが少ないと思います。それで精度が上がれば、そっちのほうがいい。以前はスピードボールで押しまくり、フォークボールで力を入れて投げたらワンバウンドで暴投になることもありました。今のボールで一軍に通用するなら、8割で投げればいいじゃんって思ったはずです」
安樂は変化を受け入れ、昨季ロングリリーフで結果を残した。すると首脳陣は今季、チームの勝利に欠かせないポジションを任せた。そうした起用法を安樂は意気に感じ、それが今好成績につながっていると川崎氏は言う。
「首脳陣がリリーフにひとつ枠を空けて責任を持たせたことで、安樂もその気になりました。どの選手にも言えるけど、何かひとつ責任を持たせるのはすごく大きいことです。安樂はいろんな意味で変化を受け入れて、自分の居場所を本当に見つけた。それが今、心地いいんだと思います」
安樂のように高校時代から大きな注目を浴び、高卒2年目の今季デビューを飾ったのが佐々木朗希(ロッテ)だ。5試合で1勝2敗、防御率3.76だが、コンスタントに150キロ超を計測するなど「令和の怪物」の片鱗を見せている。
「まだ本領を発揮していないんじゃないですか。素質的には、あれ以上はいないピッチャーですから」
川崎氏は190センチ、85キロの大型右腕に期待を込め、一層のスケールアップを求めている。
「最低でも、今より10キロくらい体を大きくする必要があると思います。あとは精神面。深い谷に落ちたり、つまずいた時に立ち上がったりして、一歩踏み出すことができれば相当成長します。いろいろ経験していくうちに失敗も増えていくはずなので、そこから立ち上がって前に踏み出す回数が増えれば増えるほど、すごいピッチャーになっていくと思います」
いずれも大きな期待を受けてプロ入りした投手たちは、今後、どのように変化していくのか。熾烈な優勝争いとともに、後半戦では個々の活躍、成長も楽しみに見ていきたい。