福田正博 フットボール原論 これが結果を残しても次は起用されないとなれば、選手としては「どうアピールしても日本代表に定着…

福田正博 フットボール原論

 これが結果を残しても次は起用されないとなれば、選手としては「どうアピールしても日本代表に定着できないのでは」と感じかねない。しかし、森保監督の下ではそれはないため、選手は意気に感じやすい。日本代表の実績をこれから残そうとする選手にとっては、なおさら心強く感じる選手起用だと思う。

 森保監督のマネジメントの特長は、選手のモチベーションを高く保つ部分にある。すべての選手に対して固定観念や既成概念を捨てて、チャンスを与えながら、選手の生きる形を模索する。だからこそ、森保監督の下では新たな選手がどんどん台頭し、日本代表の選手層に厚みをもたせることにつながっているのだと思う。

 期待感のもうひとつの理由が、森保監督がトップカテゴリとその下のカテゴリの両方を率いてきた点だ。A代表と五輪代表の両方を率いたのは、00年シドニー五輪と02年日韓W杯を戦ったフィリップ・トルシエ監督の時以来だが、同じ監督が両方の代表を率いるメリットは、選手が下のカテゴリからA代表へとスムーズにステップアップできることにある。

 A代表と五輪代表をそれぞれ別の監督が率いると、それぞれの代表で採用するフォーメーションや戦術が異なり、求める人材や能力も違ってくるケースがある。このため選手供給の面で停滞する面があり、選手層が厚いとは言えない日本サッカーにとっては大きなデメリットになっていた。

 しかし、森保監督が両カテゴリの代表監督となり、戦い方の基本コンセプトは日本代表でも五輪代表でも同じになった。4-2-3-1や3-5-2などのフォーメーションを使いながら、攻撃でも守備でも数的優位をつくるプレーコンセプトの下に、『1つのグループ、2つのチーム』として強化を進めることができた。

 この結果、東京五輪世代であっても冨安健洋、堂安律、久保建英、板倉滉、中山雄太などは、すでにA代表でも欠かせない戦力になっている。

 そして、この動きは東京五輪後にさらに活発になるはずだ。五輪世代からA代表にステップアップしても、戦い方の基本コンセプトは同じなため、選手が力を発揮しやすい土壌がある。

 もちろん、他の選手との連携を高める必要はあるが、監督が違うためになにもかもが新しい状況で力を発揮しなければならなかった過去のケースとは異なる。森保監督にしても選手の特性がどのポジションにあって、どういう局面で生きやすいかを把握しているため、A代表の戦力へと組み込みやすい。

 五輪世代には、これまでA代表に招集されなかったのが不思議なくらいのプレーを見せてきた田中碧や三苫薫などの選手が控えているし、今回の東京五輪の代表メンバーからは外れた選手たちも巻き返しを期している。さらに、リオデジャネイロ五輪世代にしても、現在のチームの主力が同世代の南野拓実や遠藤航であることを踏まえれば、「自分も!」と奮起する可能性は高い。

 チームづくりは、建築と同じで基礎工事をしっかりやった土台に建てるのが重要で、それが強固なものにつながっていく。森保監督にとって、これまでの3年間は基礎工事の期間で、一つ一つの仕事に労を惜しまずに丁寧に取り組んできた。それだけに、ここからどれだけ強固な日本代表をつくってくれるのかは、楽しみでならない。