「ウィンブルドン」は、世界一栄誉あるテニスの大会の一つと見なされており、このグランドスラムの大会の歴史からは伝統がにじみ出ている。他の大会には見られない「ウィンブルドン」の最も目立つ伝統と言え…

「ウィンブルドン」は、世界一栄誉あるテニスの大会の一つと見なされており、このグランドスラムの大会の歴史からは伝統がにじみ出ている。他の大会には見られない「ウィンブルドン」の最も目立つ伝統と言えば、選手たちが白一色のドレスコードに従うよう求められることだ。そして今年は新型コロナウイルスの影響で見られなかったが、当日のチケットを確保しようと何千人もの人々が作る行列も、この大会ですっかり定着している伝統の一つ。この他にも様々な伝統があるが、「ウィンブルドン」の伝統で最も奇妙なものは、男子シングルスの優勝トロフィーのてっぺんにのっているパイナップルではないだろうか。英Express紙がその理由を伝えている。【関連記事】テニスで0をラブと言う理由

今年の「ウィンブルドン」は、男子シングルス決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)がマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)を破って幕を閉じた。優勝者はテニス界で最も切望されるトロフィーの一つを掲げることになるが、そのてっぺんにはパイナップルが鎮座している。

「ウィンブルドン」の男子優勝杯の最上部にパイナップルがある理由は明確にはわかっていないようだが、最もそれらしい説明は、大会が初めて開催された時代にはパイナップルが価値ある品という位置づけだった、というものだ。

「ウィンブルドン」の公式ウェブサイトにこんな説明がある。「ええ、“ウィンブルドン”男子シングルス優勝トロフィーの最上部にある装飾はパイナップルです。ですが、なぜなのかは誰も知らないようです。テニス界で最も栄誉あるトロフィーの最上部に、この一見無縁そうな果物が配置されていることについての一番もっともらしい説明は、19世紀後半に大会が始まった頃、パイナップルはめったに見られない高級な食べ物として尊重されていたというものです」

「クリストファー・コロンブスが1492年の新世界への遠征からパイナップルを持ち帰りましたが、1900年代初頭にハワイで商業生産が始まるまで、パイナップルは西ヨーロッパへ輸入したり西ヨーロッパで育てたりするには高価な品であり続けました。このため、パイナップルを食卓に出すことは、高い地位にあることを意味したのです」

「この男子シングルスの優勝トロフィーは、実は3代目です。ザ・フィールドという新聞社から寄付され“フィールド・カップ”と呼ばれていた最初のトロフィーは、1881年から1883年まで3年連続で決勝を勝ったウィリアム・レンショー(イギリス)が獲得し、永久に彼のものとなりました。その代わりとなった2代目の“チャレンジ・カップ”も、レンショーが1886年まで連勝を伸ばしたことで、すぐにまた彼の物になりました。なお1921年まで、前年覇者は1試合しか戦いませんでした。他の参加者全員の中から勝ち抜いた選手と対戦する、チャレンジ・ラウンドと呼ばれる試合です」

「このトロフィーに50ギニー(現代の価値で6500ポンド程度、約100万円)を費やしたオールイングランド・クラブは、次のトロフィーのために新たに100ギニー(現代の価値で1万3000ポンド程度、約200万円)を調達しなければなりませんでした。ただし、この時彼らは、トロフィーは“決して優勝者の持ち物にはならない”と取り決めたのです。1949年以降、優勝者はトロフィーのレプリカを持ち帰ることができるようになりました」

「初代フィールド・カップは、現在ウィンブルドン庭球博物館が所有しており、そこで展示されています。2代目のトロフィーがどこにあるかはわかっていません」

※為替レートは2021年7月14日時点

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「ウィンブルドン」でのジョコビッチ

(Photo by TPN/Getty Images)