バレーボール「V.LEAGUE DIVSION1」の強豪・パナソニックパンサーズで指揮を執るティリ・ロラン監督と、中心選手のミハウ・クビアク。今夏、それぞれの国の威信を背負って五輪の頂点を目指す2人に、日本代表について話を聞いた。ネーショ…

 バレーボール「V.LEAGUE DIVSION1」の強豪・パナソニックパンサーズで指揮を執るティリ・ロラン監督と、中心選手のミハウ・クビアク。今夏、それぞれの国の威信を背負って五輪の頂点を目指す2人に、日本代表について話を聞いた。


ネーションズリーグを戦った(左から)髙橋藍、石川祐希、西田有志

 photo by FIVB

 2012年からフランス代表を率い、2015、2017年とワールドリーグを2度制したティリ監督は、本来であれば昨年に開催されていた東京五輪で代表監督を離れるはずだった。大会は1年延期が決定したものの、その時点でパナソニックの監督に就任することが決まっていたため、日本バレー界では極めて珍しく、海外の代表監督がVリーグの監督を兼任することになったのだ。

 もともと「日本の文化にも興味があった」というティリ監督だったが、コロナ禍の影響で来日できたのは9月下旬。それまでは、チーム練習を映像でチェックしながら指示を出していた。

「大変でしたが、チームはきちんと私の指示に従って完璧に練習していました。日本は紙の書類が多いことが少し苦手ですけど、その他の点はすばらしい。Vリーグは、ヨーロッパのリーグよりもディフェンスが優れているためラリーが長く続く、見ていて面白いリーグだと思います」

 パナソニックは清水邦広、山内晶大という東京五輪メンバーをはじめ、日本代表経験者が多いチームだが、Vリーグで対戦したチームの中で「ファンタスティックなプレーヤーだ」と評したのは、ジェイテクトSTINGSのエース・西田有志だ。

「初めて彼のプレーを見たのは、2018年のネーションズリーグ(フランス大会)でのこと。対戦前のアップの時点で目が行って『あれは誰なんだ?』と周りのスタッフに聞いても、誰も情報を持っていませんでした。試合が始まると、体のサイズは決して大きくないのに、ジャンプ力を生かしたパワフルなスパイクを打っていた。そのあとも成長を続けていて、見るのが楽しい選手ですね。

 サーブも大きな武器で、世界でもトップクラスのオポジットだと思います。オリンピックでも必ず結果を残すでしょう。パナソニックの清水は同じサウスポーで、代表経験も豊富な選手ですから、西田選手をよくサポートできるはず。もちろん彼本人の活躍も期待していますよ」



フランス代表兼パナソニックの監督を務めるティリ監督 photo by Sakamoto Kiyoshi

 フランス代表は、リオ五輪では9位と悔しい結果に終わっただけに、今大会にかける意気込みは強い。先ごろ行なわれたネーションズリーグでも3位と、順調な仕上がりを見せている。

「フランスは日本とよく似ています。平均身長はそんなに高くないけれど、技術が高いチームです。一番のキープレーヤーは、アウトサイドヒッターのイアルバン・ヌガペト。世界でも有数な、プレーもキャラクターも"ぶっとんだ"選手ですよ(笑)。日本のファンのみなさんにも注目してもらいたいです」

 一方のクビアクは、世界選手権(2014年、2018年)を連覇したポーランド代表の主将を務めている。2016年からパナソニックでプレーしており、2度のVリーグ連覇に貢献。Vリーグが2020-2021シーズンに行なった選手アンケートでは、「最強オールラウンダー」と「相手の嫌がるプレーをする曲者ナンバーワン」の部門で1位に選ばれた。

 プレー期間が長い日本については「第2の故郷」と笑顔で語る。

「日本の全部を気に入っています。娘たちも日本の学校を楽しんでいますよ。私がパナソニックで得点した時に流れる、『アナと雪の女王』の曲が日本語バージョンなのは、娘たちが希望しているからなんだ(笑)。日本のファンには、ぜひポーランドも応援してもらいたいですね」

 現在33歳のクビアクは2011年からポーランド代表としてプレーし、主要な国際大会で多くのメダルを獲得してきた。ただ、オリンピックにはロンドン大会とリオ大会の2度出場しているものの、まだ表彰台には上がれていない。

 それだけにクビアクは、「オリンピックは私にとって"すべて"と言っていい大会。東京五輪が最後のチャンスになるでしょうけど、今年のポーランド代表にはいい選手がたくさんいるので、力を出し切れば金メダルを獲得することができるはず」と並々ならぬ意欲を燃やしている。



パナソニックでプレーするポーランドの主将、クビアクphoto by Sakamoto Kiyoshi

 予選ラウンドでポーランドは、日本と同じプールAを戦う。同組のライバルをどのように見ているのだろうか。

「注目のプレーヤーは、石川祐希選手と西田有志選手。石川選手のプレーは、直接見る機会はそんなにないけれど、セリエAでも活躍していることからも高い能力があることを証明しています。西田選手とはVリーグで何度も対戦してきました。彼がVリーグデビューをした当時は『元気がある少年だな』という印象でしたが、年々力をつけてきて、フィジカル面でもメンタル面でも成長している。2人とも、しっかりマークしています。

 ただチームとしては、やはりフィジカル面は厳しい。例えばポーランドのミドルブロッカーは205cm以上の選手ばかりですが、日本はチームメイトの山内が204cmともっとも大きい選手で、190cm台の選手も多いですよね。そんな日本が、ブロックシステムをもう少し機能させるためには、サーブで相手のレシーブを崩すことが必須になると思います」

 そう対戦相手にもアドバイスを送るクビアクには、オリンピックでの理想の展開があるという。

「ポーランドも日本も予選を突破して、準々決勝、準決勝も勝ち上がり、決勝で再び戦うこと。もちろん、その時はポーランドが勝たせてもらうけどね(笑)。私は日本のウイスキーが好きだから、東京五輪で優勝したら、日本のウイスキーで乾杯したいです」

 日本バレーをよく知るリーダーがチームを牽引するフランスとポーランド。日本にとっては高い壁になるが、両国とメダル争いができることを期待したい。