U−24日本代表は12日、ヨドコウ桜スタジアムでU−24ホンジュラス代表と国際親善試合で対戦。MF堂安律が2得点を決める…
■技術の粋が詰まった3ゴール
3対1の勝利は「快勝」と表現していいのか? 評価は大いに分かれるところだ。
前半は完全にU—24日本代表がコントロールした。日本の高い位置からのプレッシングに押し込まれたホンジュラスは簡単にミスをしてボールを失ってしまうので、日本のゴールが脅かされることはまったくなく、ホンジュラスはシュートが1本もなかった。
そして、13分にFKから吉田麻也が足で押しこんで先制し、その後チャンスの山を築きながら2点目が奪えないでいたが、終了間際の40分に富安健洋が相手のパスをカットしたところから縦につなぎ、久保建英からのリターンをもらった富安が入れたクロスを林大地が落とし、最後は堂安律が左下隅に決めるという美しいゴールで追加点。
前半だけなら、「完勝」と呼んでいい試合展開だった。
ちなみに、試合の85分に奪った3点目も、2点目に劣らずきれいなゴールだった。
DFラインの町田浩樹から始まって相馬勇紀、前田大然、遠藤航、再び相馬と渡って、相馬のクロスに飛び込んだ堂安が自身の2点目を決めた、ワンタッチ、ツータッチのパスが小気味よくつながったゴール。
この日の収穫の一つは、3つのゴールがいずれも技術の粋が詰まったレベルの高いものだったことだろう。
■前半から見えた苦戦の“予兆”
話を元に戻そう。
前半は、日本がまったく危なげない内容の試合をしたのだ。しかし、後半に入るとパフォーマンスが急激に低下し、ホンジュラスが日本陳内深い位置までボールを運び始めた。それでも、決定機のようなものはまったく作らせていなかったのが、65分に自陣深いところでミスをして相手にボールを奪われ、最後は左からリゴベルト・リバスが入れたクロスが中央で反応した富安に当たってオウンゴールとなってしまった。
その後も、日本は85分のゴールシーンを除いて盛り返すことができず、後味の悪い印象を残してしまった。前後半で、まったく違う試合になってしまったのだ。
しかし、これはホンジュラスが何かを変えたから起こったという現象ではない。
実際、すでに前半の日本が快調に試合を進めている間にも“予兆”は見えていた。
手元の観戦ノートを見ると、前半の30分くらいのところにこう殴り書きがしてある。
「JPN選手かなりきつそう」、と。
ちょっと試合が切れた瞬間に、ボールから遠いところでフッと肩を落としたり、膝に手をやる選手が見かけられるようになっていたのだ。
試合後の記者会見で森保監督も自ら語ったが、選手たちのコンディションは(当然のことながら)100%からはほど遠い状態だった。
日本の選手たちのコンディションはそれぞれがバラバラだった。
「ヨーロッパ組」の選手たちは5月に長いシーズンが終わって、5月末から6月上旬にかけて日本代表の国際試合を戦った後はシーズンオフに入っていた。もちろん、オリンピックがあるのだから、コンディションを維持するためのトレーニングは欠かさなかったはずだが、同時に長いシーズンの後にはしっかりと休養を取ることも必要不可欠だ。
彼らにとってホンジュラス戦は1か月半近くのブランクの後の実戦だった。
Jリーグの選手たちは、2月末にリーグ戦が開幕し、徐々に疲労が溜まってきている時期ではあるが、シーズン中なのでコンディションは良好のはずだ。ただ、彼らも今は代表合宿に入って、負荷の大きいトレーニングを行っているところだ。
さらに、Jリーグ組の中でもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場しているクラブの選手は一連の代表戦が終わるとすぐにタイやウズベキスタンに飛んで、気温が高い過酷な環境やピッチ状態の悪さの中で、中2日で6試合を戦っていた。
日程の関係で一足早く全日程を終了した名古屋グランパスの相馬はホンジュラス戦でも後半に交代出場したが、まだ90分を戦える状態ではなかったし、川崎フロンターレのACLは2日前に終了したばかりなので、三笘薫と旗手怜央はホンジュラス戦ではベンチ入りもできなかった(幸い、川崎は最終戦を待たずにグループ首位通過を決めていたので、2人とも最終戦には出場せずにすんだ)。
■田中碧から始まった数々の素晴らしい攻撃
その川崎に所属していた田中碧はフォルトゥナ・デュッセルドルフ移籍が決まったためACLには出場せずに代表合宿を前に休養を取ることができた。
田中は、中盤の深いところから前線に速くて正確なパスを供給して攻撃のスイッチを入れられる選手として大きく成長。Uー24代表ではアルゼンチンとの第2戦に出場して能力をいかんなく発揮してその地位を確立した(第1戦は出場停止)。
そして、J1リーグで首位を独走する川崎でも田中は欠かせぬ存在となっており、豊富な駒を駆使してターンオーバーをうまく使いながら戦う鬼木達監督も田中を欠場させることはほとんどなく、交代出場を含めれば田中はリーグ戦でほぼ出ずっぱりだった。
その影響で5月に入ると田中にはかなり疲労の色が見え、パフォーマンスが落ちる試合も見受けられた。あのまま、ACLを戦って即オリンピック本大会を戦いぬいたら大変な負担になるだろうと心配していたが、ACLを回避できたことでホンジュラス戦での田中は疲労から回復し、本来のパフォーマンスを発揮することができていた。
ホンジュラス戦の日本は前半の早い時間帯から攻勢を仕掛けていったが、その最初の攻めは時計のちょうど針が1分を回った頃、中盤の深い位置でパスを受けた田中が前を向いて前線にクサビを入れたところから始まった。パスは相手DFにカットされたのだが、このこぼれ球を田中が再び拾って右の酒井宏樹を使って展開を図った場面だ。22分に田中がトップにクサビを打ち込み、田中に近い位置にいた久保がスルーして、トップの林がワンタッチで回り込んだ久保にボールを預けた場面があった。3人の特徴がよく出た素晴らしい展開だった。残念ながらオフサイドの笛が鳴ってしまったが、田中の良さが前面にでたプレーだった。