2021年7月4日、DDT後楽園ホール大会にてKO-D8人タッグ王者となった谷津嘉章。約28年ぶりのベルト戴冠となった。 谷津は、1981年6月24日の蔵前国技館にて、アントニオ猪木とタッグを組みスタン・ハンセン&アブドーラ・ザ・ブッチャ…

 2021年7月4日、DDT後楽園ホール大会にてKO-D8人タッグ王者となった谷津嘉章。約28年ぶりのベルト戴冠となった。

 谷津は、1981年6月24日の蔵前国技館にて、アントニオ猪木とタッグを組みスタン・ハンセン&アブドーラ・ザ・ブッチャーを相手に国内でのデビューを果たしてから、様々な団体でタッグプレーヤーとして活躍。長州力やジャンボ鶴田のタッグパートナーとしてのイメージが強い往年のファンも多いであろう。

 今回は、64歳にして現役のタッグベルト王者となった谷津が、過去の記憶を紐解きながら『手強かったタッグチームベスト3』を語る。



谷津は64歳にして現役のベルト保持者となった(左から)中村圭吾、大和ヒロシ、谷津嘉章、彰人

 前回の取材(5月24日配信記事)で最強のシングルプレーヤーベスト3について「"特に手強かったレスラーベスト3"という形はどうでしょうか」という形で語り始めた谷津。今回の最強タッグに関しては「タッグは言わばボケとツッコミの関係。2人とも目立ちすぎたり、長所が重なったりすると魅力が引き出せないんです。今回はそういう観点からもバランスがすばらしい最強タッグベスト3を挙げてみます」と記憶をさかのぼり始めた。

第3位:スタン・ハンセン & テリー・ゴディ 


世界最強タッグ優勝時のハンセン(左)とゴディ(写真:平工幸雄/アフロ)

「やはりスタン・ハンセンとテリー・ゴディは外せないですかね」

 第3位は最強レスラーランキングでも谷津が3位に選んだスタン・ハンセンのタッグコンビがランクインを果たした。

「スタン・ハンセンはゴリゴリ攻めるタイプの典型です。ですので、タッグパートナーも同じようにゴリゴリ攻めるブルーザー・ブロディのような選手だと上手く噛み合いません。やはりタッグはバランスなので、テリー・ゴディとのコンビネーションは良かったと思います。スタン・ハンセンの良さがさらに引き立っており、手強い相手でした」

第2位:鶴龍コンビ(ジャンボ鶴田&天龍源一郎)


ジャンボ鶴田(右)と天龍源一郎の

「鶴龍コンビ」(写真:平工幸雄/アフロ)

 「因縁のライバルでもある鶴龍コンビは、さすが全日本プロレスのエースお二人という強さでした。」

 第2位はジャンボ鶴田と天龍源一郎のタッグで、それぞれの名前から一文字取り『鶴龍コンビ』と呼ばれていた人気コンビだ

 「当時自分はジャパンプロレスのメンバーとして全日本プロレスに参戦していました。タッグパートナーは同じジャパンプロレスの長州力さんと組むことが多かったです。長州さんは『ハイスパート​レスリング』と呼ばれる早いテンポで進めるプロレスを好んでいました。そのため、遅いテンポを得意とする外国人選手のタッグよりも、日本人同士のタッグと戦うことが多く、その最大のライバルが鶴龍コンビでした。

 長州さんとのタッグで新日本プロレスでも試合をしていましたが、全日本プロレスでの鶴龍コンビとの試合が最も良い戦いが出来ていたと思っています。さすが看板を支える2トップのタッグというレベルの高さを感じました」

 谷津はジャンボ鶴田を最強レスラーランキングでも2位に名前を挙げている。『五輪コンビ』としてタッグパートナーのイメージが強いが、タッグの対戦相手としても超一流であったようだ。

第1位:ロード・ウォリアーズ(ホーク・ウォリアー&アニマル・ウォリアー)



日本のプロレス界に一大旋風を巻き起こしたアニマル (右) と ホーク(左) (写真:平工幸雄/アフロ)

「タッグの名手であり、1番のエンタテイナーでもあったのはロード・ウォリアーズでしょう!」

 ロード・ウォリアーズは、ホーク・ウォリアーとアニマル・ウォリアーのタッグチームで、フェイスペイントと鎧のような肉体が印象的であった。1985年3月の日本デビュー以降、暴走的でパワフルなファイトスタイルで爆発的な人気を博し、その実力は谷津が迷うことなくトップに選ぶレベルである。

 「自分はロード・ウォリアーズと、長州(力)さんと組んで戦ったこともあるし、(ジャンボ)鶴田さんと組んで五輪コンビとしても何度も戦いました。

 来日初期のうちは選手もファンもロード・ウォリアーズは奇襲攻撃や秒殺スタイルしかできないんじゃないかと思っていました。スタミナや技術的に『しっかりとプロレスができるのか?』と。

 しかし、80年代末頃になると、パワーだけでなくスタミナも技術も尋常ではなく、プロレスをしっかりと出来ることが認知されるようになったと思います。五輪コンビとして戦っていたときも、自分や鶴田さんを試合終盤でもヒョイと投げたり抱え上げたりするスタミナに驚愕しました。」

 そして最後に谷津は実現したかった自身の夢のカードを明かす。

 「少し時期がズレてしまったため、実現しなかったのですが、自分がSWSで組んでいたキング・ハクとのコンビ『ナチュラル・パワーズ』でロード・ウォリアーズと戦いたかったですね。お互い技術もスタミナもありながら、超人的なパワーを持っていたので、最高のぶつかり合いで盛り上がったと思います。」

 『ifの妄想』はファンのみならず選手自身もやはり胸が高鳴るようだ。

 ベスト3発表後に「ランキング外ではあるので、番外編になりますが.....」と名前を挙げたのは、アブドーラ・ザ・ブッチャー&タイガー・ジェット・シンのコンビであった。

 「彼らは本当に滅茶苦茶でした。全く手が合わずに苦戦したので、最強というよりは"最恐"のほうがふさわしいので番外編ですが、ご紹介しておきたいなと」

 ベスト3だけでなく番外編までレジェンドレスラー尽くしであった。自身も既にレジェンドレスラーであり、現在64歳(7月19日で65歳)になる谷津嘉章であるが、現役のベルト保持者として、これからも伝説を作り続けていくぞという気概に溢れていた。



力(右)の攻撃を総合格闘技で学んだ『谷津ガード』で防ぐ谷津嘉章(左)

谷津 嘉章(やつ よしあき)
1956年7月19日生まれ。群馬県明和町出身。日大時代からレスリングで名を上げ、76年モントリオール五輪に出場。80年モスクワ五輪では金メダル候補とされたが、日本が参加をボイコット。同年に新日本プロレスへ入団し、12月ニューヨークにてデビュー。新日本、全日本のメジャー団体からインディ団体まで幅広く参戦し活躍。総合格闘技のPRIDEにも参戦した。2010年11月に引退。2019年6月に糖尿病の合併症により右ヒザ下を切断した。2021年6月、『CyberFight Festival 2021』で義足レスラーとして現役復帰。