世界的名門である、バルセロナが揺れている。震源地は遠く離れた極東の地、日本である。時間をも乗り越えて、衝撃波がスペイン…

 世界的名門である、バルセロナが揺れている。震源地は遠く離れた極東の地、日本である。時間をも乗り越えて、衝撃波がスペインへと押し寄せた。

「爆弾」は、1分足らずの動画だった。しかも、2年前のものである。

 イギリスメディアが見つけ出したのは、2019年夏にプレシーズンツアーで来日したバルセロナの選手が撮影した動画だった。ホテルの中でのワンシーン。笑みを浮かべているのは移籍してきたばかりのアントワーヌ・グリーズマンで、撮影しているのは同じフランス人であるウスマヌ・デンベレだった。

 ビデオゲーム「ウイニングイレブン」のヨーロッパ版をプレーするため、機器のセッティングをホテルのスタッフに頼んでいるようだが、その際の発言が問題視された。「醜い顔」と言いながら、ホテルスタッフの顔をたびたびアップにして撮影。その他にも日本語を侮辱するような発言があり、総じて2人が人種差別的であると指弾された。

 この報道に対して2人はSNSを通じて謝罪したが、この対応がさらなる炎上につながった。デンベレは「地球上のどこでも同じ表現をしたと思う」と、特に日本人に対して用いたのではなく日常的に使う表現だとしたが、SNS上では「開き直り」などと、さらなる怒りを呼んだのだ。

■恩をあだで返されたスポンサーの怒り

 ヨーロッパでは、2人が暮らすスペイン、母国であるフランスも反応は素早いとは言えなかったが、被害者である日本の対応は迅速だった。

 バルセロナのメインスポンサーである楽天の三木谷浩史会長兼社長は、ツイッター上で抗議の意思を表明。「楽天はバルサの哲学に賛同し当クラブのスポンサーをしてきただけにこのような発言は、どのような環境下でも許されるものではなく、クラブに対して正式に抗議すると共に見解を求めていきます」(原文ママ)と、断固とした姿勢を示した。

 さらには、すぐさま「断罪」する企業も現れた。「ウイニングイレブン」シリーズを制作、販売しているコナミデジタルエンタテインメントである。

 同社はカードゲームのアンバサダーとしてグリーズマンと契約を結んでいたが、「スポーツの理念がそうであるように、いかなる差別も許されるものではないと考えています」と契約を解除。さらに「サッカーコンテンツでは、FCバルセロナに対してクラブパートナーの立場として本件の詳細な経緯と今後の対応の説明を求めていきます」と、クラブに対しても真摯な対応を求めた。

 ちなみに、報道直後にはフランス在住の作家である辻仁成氏がフランス語を正確に訳すことを試み、知人のフランス人に意見を求めて、必ずしも人種差別的ではないとの意見を表明。同じくフランスに暮らす2ちゃんねる創設者のひろゆき氏も、差別の意図はなかったはずだと主張したが、日本在住のフランス人が逆に反発。

 フィリップ・トルシエ元日本代表監督の通訳を務めたフローラン・ダバディ氏らが、同胞の人種差別的を非難し、ウェブ上でも両者に対してさまざまな意見が飛び交うなど、「場外戦」も荒れている。

 バルセロナは7月7日に、公式サイト上で謝罪の声明を発表。しかし、日本では「対応が遅い」との声が上がるなど、こちらでも沈静化には程遠い様子。バルセロナは日本語版の公式HPを持ち、日本語版ツイッターのフォロワーは31万人を超えている。クラブワールドカップを制して世界一の称号を勝ち取った国で、大きなダメージを負う危険に直面している。

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