堀琴音インタビュー(前編)プロツアー本格参戦1年目となる2015年シーズン、賞金ランキング33位となってシード権を獲得。翌2016年シーズンには優勝争いを何度となく演じて、賞金ランキングは11位まで上昇。堀琴音は次世代を担う選手として、大い…

堀琴音インタビュー(前編)

プロツアー本格参戦1年目となる2015年シーズン、賞金ランキング33位となってシード権を獲得。翌2016年シーズンには優勝争いを何度となく演じて、賞金ランキングは11位まで上昇。堀琴音は次世代を担う選手として、大いに注目されていた。

しかし2018年シーズン、突如の不振に。開幕戦から予選落ちが続いてシード権を失うことになった。以降、2年以上もどん底の状態に陥っていた。そんな彼女が今年、復調気配を見せている。そこで今回、彼女を直撃し、復調へのきっかけと、苦悩の日々について話を聞いた――。



――6月のアース・モンダミンカップでは今季、自身最高の4位タイでフィニッシュ。ナイスプレーでしたが、現在の調子はいかがでしょうか。

「これまでショットがすごく曲がっていて、特にドライバーは、林に入ったり、隣のホールまで行ってしまったり、どこに飛ぶのか(自分でも)わからない状態でした。それが今年、そうした状態が次第になくなって、飛距離も出るようになってからは、ゴルフがすごく楽しくなりました。

 また、もともとアプローチがあまり得意ではなかったのですが、(ショットが悪い時期に)ショートゲームの練習をこなして、"怪我の功名"というべきなのか、アプローチにも自信が持てるようになりました。今はグリーンを外しても、そんなに不安はありません。本当に今が(ゴルフをやっていて)一番楽しいかもしれないです」

――獲得賞金が2500万円を超えて(7月5日現在、2746万1332円)、賞金ランキングは41位。3年ぶりのシード復帰も見えてきました。

「正直、アース・モンダミンカップが終わるまでは、賞金シードのことはまったく意識していませんでした。目の前の試合にだけ集中していたら、結果がついてきて、賞金ランキングも徐々に上がっていきました。

 そうやって(試合で)少しでも上位にいけるよう、一打に集中して戦う気持ちでいたんですけれど、賞金ランキング50位以内に入ってくると、やっぱり『シード権を獲りたいな』『初優勝したいな』という気持ちが芽生えてきましたね」

――復調の要因について、ご自身ではどのように分析していますか。

「やっぱりドライバー(の復調)ですね。(ここ数年は)本当にどこに飛んでいくのかがわからなかったので......。それがよくなったのは、持ち球をドローからフェードに変えたことが一番大きいです。加えて、クラブも、シャフトもフェードに合うものにしたら、飛距離も出るようになったんです」

――それらのことは、指導を受けているツアープロコーチの森守洋氏からのアドバイスでしょうか。

「そうです。森さんからは(以前から)『こっちゃん(堀琴音の愛称)は、ドローのタイプではないと思う』と言われていたのですが、私はずっと『ドローを打ちたい』と言い続けていたんです(苦笑)」

――それが、ついに持ち球を変えることに。かなり勇気のいる決断だったと思いますが、何かきっかけがあったのでしょうか。

「やはり最初は(持ち球を変えることに)なかなか思いきれませんでした。そういうのは、もともとオフにすると思っていましたから(笑)」

――ということは、シーズン中に持ち球を変えたのですか。

「はい。今年の開幕戦のダイキンオーキッドレディスで(持ち球を)フェードに変えて試合に出て、トップツアーの試合で久しぶりに予選を通過したんです(結果は54位タイ)。そして、翌週の明治安田生命レディス ヨコハマタイヤにも推薦で出場できて、8位タイに入ったんです。

 こうなったらもう、フェードでいく、という決心がつきました。それで、有村智恵さんからもアドバイスをいただいたりしました」

――どんなアドバイスをもらったのでしょうか。

「今年に入って2試合に出場してから、出場3試合目のKKT杯バンテリンレディスまで、1カ月くらい空いていたんです。その間に、フェードヒッターの有村さんと一緒に練習する機会をいただきました。そこで、いろいろなことをうかがって、有村さんのプレーを見てさまざまなことを学びました。

 例えば(ドローヒッターとは)ティーグラウンドの立つ位置から違うことを知りました。ショットのイメージの仕方も違えば、思っていたよりも『左に(出球を)出してもいいんだな』『ここまで左を向いていいんだな』ということも学んで。聞かなければわからない、細かな発見がたくさんありました。『フェードを打つなら、少し体力がいるから、体幹を含めてしっかりトレーニングしたほうがいいよ』というアドバイスもいただきました」

――復調に向けては、技術的な部分だけでなく、精神的な面でも変化があったと思いますが、いかがでしょうか。

「以前の私は、勢いだけでゴルフをやっていたところがありました。ざっくり言うと、バーディーもとれていただけど、ボギーも打つ、という感じで。それではもったいないと思っていたところで、原江里菜さんから森コーチを紹介していただいて、精神面を含めて、さまざまなアドバイスをしていただきました。

 最も成長したマネジメント力をはじめ、ボギーを打ったあとの気持ちの持っていき方なども。私は何でも100%、試合でも毎試合、100%(の力)で、100%(の結果)を求めてプレーしていたんですけど、森コーチから指導を受けてからは、50%でもいい、と思えるようになりました。

 現に、調子がよくても成績が出ない時もあれば、調子が悪いのにスコアが出る時もありますからね。にもかかわらず、毎回100%の結果を求めてやっていたら、メンタル的にも、体力的にもきついですから、そのあたりの気持ちのコントロールの方法も教わりました」

――今は、100%の力を出しきれなかったり、自らが求めていた100%の結果が出なかったりしても、自分を許せるようになりましたか。

「はい。50%の状態であっても『これでもやっていける』と思えるようになりました。そうすると、少しずつ自信も出てくるんですよね。

 でも、実際にそうしたことが実践できるようになったのは、今年に入ってからです。ダイキンオーキッドレディスでフェード打ちに変えた時点で、自身の100%ではありませんから。私の中では50%も出せているかなっていう感じだったのですが、それでも予選を通過することができて、そこで『これでもいける!』という自信になりました。"結果が薬"です」

――少し遡って、お話をうかがえればと思うのですが、2018年シーズンにシード落ちしてしまった原因はどこにあったのでしょうか。

「シーズンを迎える前のオフ、少しでも遠くへ飛ばして、スコアアップにつなげたいという思いから、トレーニング量を増やして筋力アップに取り組みました。もっといい成績を出したい、という気持ちが強かったからです。

 でも、それがよくなかったのか、ショットが真っ直ぐ飛ばなくなってしまったんです。どこに飛んでいくのか、まったくわからなくなってしまって......」

――その頃は、かなりつらい思いをされたのではないでしょうか。

「それはもう......。周りの人の声は聞けなくなっていました。『ボールが曲がる人の気持ちなんか、わからないでしょ!」といった感じで......。ひとりでふさぎ込んでしまっているというか......」

――とても苦しい状況だったと思うのですが、それを耐えられたのはなぜでしょうか。

「(ゴルフを)やめたい、と思ったこともありました。でも、みんなに(自分のことを)このまま忘れてほしくない、という気持ちがあった。その気持ちのほうが勝ったんです。本当にそれだけ。

 いくら調子が悪くても、どれだけボールが曲がっても、練習している自分がいました。クラブを握らなかった日はなかったです。(自らの状態が)どんなに悪くなっても、(自分は)『ゴルフが好きだ』と思っていました」

(つづく)後編はこちら>>

堀琴音(ほり・ことね)
1996年3月3日生まれ。徳島県出身。身長163cm。A型。2015年シーズンにツアー本格参戦を果たし、1年目からシード権を獲得。ツアーを背負って立つ"大器"として期待される存在だったが、2018年シーズンを迎えて突如の不振に陥る。しかし今年、復調の気配を見せてツアー初優勝を目指す。7月5日現在、賞金ランキング41位(獲得賞金2746万1332円)