【UEFA EURO2020 準決勝 イングランドvsデンマーク 2021年7月7日(日本時間28:00キックオフ)】 …

UEFA EURO2020 準決勝 イングランドvsデンマーク 2021年7月7日(日本時間28:00キックオフ)】

 残り時間が少なくなるとデンマークはケアーを上げてパワープレーに出ようとしたが、イングランドがボール保持を目的とした見事なボール回しを見せ、狙い通り試合を終わらせて決勝へと駒を進めた。自信に満ち溢れながらも現実的かつ冷静に戦うこのチームは、EURO初優勝を母国で実現する準備ができている。

 さて、最後に時間を少し戻したい。

 前半、イングランドが同点に追いついた時のことだ。チームメイトと同点ゴールの喜びを十分に堪能し、試合の再開のために自陣へ戻っていこうとしたラヒーム・スターリングの頭に手を回した選手がいた。デンマークのシモン・ケアーだった。

 自分が触らなければほぼ間違いなくスターリングに決められていたとはいえ、自身のオウンゴールという形で同点を許すことになった直後に、簡単にできる振る舞いではない。

 これで思い出さずにいられないのは、グループリーグの初戦だ。

 デンマークのクリスティアン・エリクセンが、試合中に突然倒れた時、ケアーは冷静に応急処置を行い気道を確保した。医療スタッフが処置をする際には選手が円になってカーテンを作ったが、外側を向いて泣いている選手が多い中、彼は仁王立ちで内側を向き、エリクセンを見つめていた。ピッチにやってきた彼のパートナーを優しく抱きしめ、カスパー・シュマイケルとともに励ます場面もあった。

■負けたが、立派な姿を見せた

 2時間近い中断の後に再開されたその試合で、彼は後半18分に途中交代している。試合後、カスパー・ヒュルマンド監督は、ケアーがプレーを続けられる精神状態ではなかったことを明かした。自身がそれほど動揺しているにもかかわらず、ケアーはあのような振る舞いを見せた。

 そんなキャプテンがまとめあげたデンマーク代表はショックを力に変え、清々しいほど堂々と積極的に戦った。エリクセンの件で、世界中から集まった同情や激励の声を決して汚さず、その戦う姿で更なる応援を集めたまま大会を去った。

 敗退後、ケアーは「素晴らしい冒険でした」「決勝に進めなかったことは残念ですが、私たちが受けたサポートは私たちが望んだ以上のものでした。誇りに思います」と語った。

 EURO2020にはデンマーク代表という素晴らしいチームがいたということを、我々は決して忘れないだろう。

■試合結果

イングランド 2―1 デンマーク

■得点

30分 ミッケル・ダムスゴーア(デンマーク)

39分 オウンゴール(イングランドの得点)

104分 ハリー・ケイン(イングランド)

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