川崎フロンターレACLウズベキスタン紀行@02 史上最多40クラブが参戦するAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2021…

川崎フロンターレACLウズベキスタン紀行@02

 史上最多40クラブが参戦するAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2021の東アジア地区グループステージが開幕した。Jリーグクラブが戦う東アジア地区は新型コロナウイルスの影響により、当初の4月開催から6、7月に延期。会場も集中開催に変更され、川崎フロンターレとガンバ大阪はウズベキスタン、名古屋グランパスとセレッソ大阪はタイで戦うことになった。Jリーグで圧倒的な強さを見せる川崎の選手たちが異国の地でどんな日々を送っているのか、ウズベキスタン遠征をレポートする。

「川崎フロンターレACLウズベキスタン紀行@01」はこちら>>

   ※   ※   ※   ※   ※



長谷川竜也にウズベキスタンでの生活環境を聞いた

 ACLを戦うために集中開催地ウズベキスタンに乗り込んでいる川崎フロンターレは、グループステージ3連勝を飾った。

 メンバーを入れ替えながら中2日の連戦を戦い、7月2日に行なわれた第3節のユナイテッド・シティ戦は8−0で快勝。42分には半年ぶりに先発した大島僚太が技術の高さを示すミドルシュートを決め、大卒ルーキーの橘田健人がハットトリックする活躍を見せた。

 7−0で勝利した第2節の北京FC戦で大量点の口火を切るゴールを決めた長谷川竜也は、その試合をこう振り返る。

「先制点がいつ決まるかというのは、どの試合においても大事になってきますが、早い時間帯に決めることができてよかったです。自分たちの力を出すことができれば、差は示せると思っていました。

 ただ、相手は年齢的に若い選手も多く、勢いもあるだけに簡単な試合にはならないと考えていました。また、北京FC戦は自分にとってのACL初戦で難しさも感じていたので、得点がたくさん入ったことで楽に試合を進めることができたと思います」

 そう言って安堵の表情も見せる長谷川に、ウズベキスタンでの生活について語ってもらった。第1回コラムでインタビューに応じてくれたキャプテンの谷口彰悟とマネージャー(主務)の清水泰博のコメントも交えながら、今回は現地での生活についてレポートする。

 ウズベキスタンでの生活も10日以上が過ぎ、長谷川は率直な心境を吐露してくれた。

「基本的にはホテルの部屋にいて、食事会場と練習場、もしくは試合会場を行き来するだけの生活が続いているので、過酷な大会だなと感じています。日本にいる時と違って、自分の時間は多いですけど、1週間も過ぎると精神的にはキツいなと感じる部分も出てきています」

 コロナ禍での大会だけに、選手たちは十分な感染症対策を行なって生活を続けている。そのため、施設の外を自由に出歩くことはできず、選手同士の部屋の行き来も禁止されているという。

「基本的な生活サイクルとしては、9時から10時くらいに朝食を摂り、昼食は14時で、練習はだいたい18時から。練習を終えてホテルに戻り、夕食を食べたあとに身体のケアをしてもらっていると、だいたい12時くらいになっています。

 ナイトゲームに合わせたスケジュールで動いているのですが、日本にいる時と違って全体的に後ろ倒しのスケジュールになっているので、どうしても生活リズムが狂うところはありますよね」

 日中が自分の時間になるわけだが、主にホテルの自室で過ごすことになる。長谷川は、午前中に筋トレをすることもあると教えてくれた。

「基本的に部屋ではゲームをやっています。チームメイトと時間を合わせて通信設定を使いながら一緒にやることもあります。でも、ひとりでやっていることが多いですかね。僕の部屋はホテルのWi-Fiが入りにくいので、家族の声を聞くことがなかなかできないんですよね。だから、動画も頻繁には見られなくて。家族と連絡する時もWi-Fiが入る場所をなんとか探して、連絡を取っています(苦笑)」

 Wi-Fi事情については選手によってまちまちで、いわゆる海外パケット放題に登録しているという谷口は、ACLと同時期に開催されているEURO2020を視聴するなど、快適に過ごしていると話していた。

 1日、2日の旅行ならば精神的な負担や疲労も少ないだろうが、遠征は3週間にも及ぶ。普段とは異なる環境と生活にストレスを感じることは想像に難くない。そうした選手たちのストレスを発散させ、癒やしの時間になっているのが食事だ。

 谷口は「まさかウズベキスタンで塩サバを食べられるとは思っていませんでした」と笑う。

 長谷川も「ウナギが出てきた時にはびっくりしました」と喜ぶ。

 別々に話を聞いたが、ふたりとも口を揃えるように「食事はマジで大事ですよ」と共鳴していた。

 そんな選手たちの胃袋を満たし、精神的な充足感すらもたらしてくれているのが、チームに帯同する西芳照(よしてる)シェフの存在だ。日本代表でも専属シェフを務める西が帯同していることの効果については、マネージャーの清水が明かしてくれた。



西芳照シェフの絶品料理にフロンターレ選手も大喜び

「ACLに参加することが決まった今年初めから、(海外遠征に)行く時は帯同してほしいとお願いしていたんです。現地についてから西さんにホテルの厨房を見てもらい、食品の管理状態や衛生状態を確認してもらったうえで、野菜やフルーツについても解禁しました。

 今回、ホテル側からはメニューについての提案がなかったので、西さんが間に入って積極的にコミュニケーションを取ってくれています。今までも西さんに遠征に帯同してもらったことはありますが、今回はいつも以上に助かっています」

 長谷川が食事の充実ぶりを熱く語る。

「西さんが焼き魚をはじめ、魚料理をたくさん出してくれるので、個人的にも助かっていますね。あとは今日、初めて西さんが作ってくれたハンバーグを食べたのですが、それもすごく美味しかった。ほかにはパスタ。ジェノベーゼ風のペペロンチーノっていえばいいんですかね。ちょっと辛口で、これが僕は一番好きでしたね」

 谷口も「西さんが作るパスタが絶品で、クセになるというか、ついついお皿に取ってしまうんです」と話していたことを思い出した。また、長谷川は「お餅も食べましたよ」と教えてくれた。

「お餅って時間が経つと硬くなってしまうイメージだったんですけど、こっちで食べたお餅はやわらかかったんです。まさかウズベキスタンでクオリティの高いお餅が食べられるとは思っていませんでした」

 そのお餅はスポンサーである『アイリスオーヤマ』が提供してくれたものだ。それだけではなく、『永谷園』からはふりかけやお茶漬け、『マルコメ』からは味噌汁など、数多くの商品を提供してもらい、選手たちと一緒にウズベキスタンへと運んできた。

「とくに味噌汁は、日本の生活では、当たり前のように食べているものじゃないですか。一方で海外に来れば、当たり前じゃなくなるもの。それがウズベキスタンでも、普段と変わらず食べられるだけで、僕らのストレスは軽減される。スポンサーの方々が、僕らが少しでも変わらない日常を送れるようにと、協力してくれ、配慮してくれているということは、食事の席だけでも感じられます」

 日に日にストレスは溜まっていくものの、食の充実が選手たちの胃袋を満たし、心を癒やしている。ちなみにだが、「現地で買えるものは現地で、と思っていた」と清水は語る。

「事前に韓国食材は買えると聞いていたので、キムチや韓国のりはこっちで購入しました。我々は買いに行くことができないので、コーディネーターの方にお願いして購入してきてもらっています。(チョン・)ソンリョンも美味しいと言って食べています」

 第1節の大邱(テグ)FC戦で、チョン・ソンリョンがPKストップを含めた大活躍を見せたのも、そうしたチームの対応が起因していたのかもしれない。

 今回のウズベキスタン遠征に向けて協賛してくれたのは食品だけではない。『Anker』からは選手たちが部屋や移動時にくつろげるようにと、ヘッドホンや充電器が提供された。また、『BARTH』からは入浴剤、『BULK HOMME』からはスキンケア製品などが提供されている。これらすべてが選手たちの生活を大いに助けているのだ。再び長谷川が言う。

「練習場でもスタジアムでもシャワーが浴びられないので、部屋のお風呂にお湯を溜めて入る時間が大事なんですよね。そういう時に提供してもらった入浴剤を入れて、自分の好きな温度でゆっくりする。いろいろとストレスはありますけど、その時間は好きなひと時ですね。スキンケアにしても、こっちはめちゃめちゃ乾燥していて陽射しもかなり強いので、大事だったりします。



日本から持ってきた食材は膨大(左=脇坂泰斗、右=旗手怜央)

 異国の地で日本と同じ環境を作り出すことはなかなか難しいですけど、食事も含め、スポンサーの方々のサポートが充実しているおかげで、僕らはサッカーに集中できている。それだけ期待されていると思いますし、応援されていると思うので、やっぱり結果を出して恩返ししなければいけないという気持ちは強くなります」

 谷口が「チーム川崎で戦っている」と言っていた意味を、より深く理解させてくれる長谷川の言葉だった。

 コロナ禍になってからは感染症対策を徹底してきたことから、選手たちが向かい合って食事をする機会はなくなっていた。だが、ウズベキスタンのホテルには円卓しかなかったことから、席を間引きつつもテーブルを囲んで食事をしているという。

 マネージャーの清水は「みんな久々だからか、感染症対策に気を遣いながらも、なかなか席を立とうとしないんですよね」と笑う。それには長谷川も強くうなずいた。

「食事会場くらいしか、みんなとゆっくり話ができないので、本当にくだらない話から、サッカーの話まで、たわいのない時間をすごしています。食事会場でみんなと話す時間が、ストレスのはけ口になっているというか、発散できる瞬間というか。ついつい食事が終わったあとも、しゃべっていますね」

 選手、スタッフ含めた総勢55人でウズベキスタンに乗り込み、中2日の過酷な日程を戦っている。そこには全員で戦い抜く一体感が生まれていると同時に、食事での何気ないひと時がチームワークを高めているのだろう。

 ACLのグループステージを戦い終えた時、きっと、川崎フロンターレはさらに一体感を増し、そして強くなっている。

(つづく)