今春の選抜野球大会では、小園健太(市和歌山)や達孝太(天理)といった好投手が実力を発揮し、スカウト陣からドラフト上位指…
今春の選抜野球大会では、小園健太(市和歌山)や達孝太(天理)といった好投手が実力を発揮し、スカウト陣からドラフト上位指名候補と評価された。だが、これまで甲子園出場実績はなくとも、ドラフト戦線の中心人物になりうる逸材はまだまだいる。
そこで、高校3年春まで甲子園を経験していない好素材のなかから、とくに要注目の10選手をピックアップしてみた。

最速154キロを誇る高知高のエース・森木大智
今夏のパフォーマンス次第でドラフト戦線の主役に躍り出る可能性を秘めているのが、右腕の風間球打(きゅうた/ノースアジア大明桜)である。
真上から叩きつけるような角度のある剛速球は、現時点で最速153キロをマーク。変化球の精度が向上し、投球に強弱をつけられるようにもなってきた。高校時代の佐々木朗希(ロッテ)を比較対象に出すスカウトもいるほどで、そのスケールはいまだ終わりが見えない。
昨夏は秋田の独自大会を制しながら、甲子園大会の中止に泣いただけに今夏は最初で最後の甲子園出場を狙う。風間が初めて甲子園マウンドに立つことになれば、間違いなく脚光を浴びるだろう。
森木大智(高知)もスター性抜群の本格派右腕だ。高知中時代には軟式球で最速150キロをマークし、春夏の全国大会で優勝。一躍全国区の知名度を得た。高校進学後は1年時に右ヒジの炎症、3年春には右足首のねんざと節目に故障があり、甲子園への出場も果たせていない。
それでも、現時点でスピードは最速154キロまで伸びている。変化球を含めた総合力で勝負できるタイプで、好調時は手がつけられない。右の強打者としても高く評価されている。
中学時代から「野球人口が減っているので、自分を見て野球をやりたいという子どもが増えてほしい」と大局に立ったコメントを口にすることもあった。高い理想を持つ本人にとって高校野球はあくまで通過点にすぎないが、今夏は大器の片鱗を満天下に見せておきたいところだ。
スケールの大きさにかけては、身長191センチの大型右腕・柳川大晟(九州国際大付)も見逃せない。エース右腕の山本大揮とチームの二枚看板を張り、安定感で勝負する山本とは対照的に柳川はポテンシャルに魅力がある。
最速152キロの快速球はまだムラがあるものの、指にかかったボールの勢いは本物。このボールをコンスタントに続けられれば、ドラフト上位指名も現実味を帯びてくる。
北海道ナンバーワン右腕の呼び声が高いのは、田中楓基(ふうき/旭川実)だ。いかにも芯に力がありそうな体から放たれる快速球は、最速148キロを計測する。指にかかったストレートは、打者に向かって加速するような体感がある。
昨秋は北海道大会決勝で木村大成(北海)と投げ合い、0対1で惜敗。甲子園まであと一歩のところで涙をのんだだけに、今夏こそ聖地でアピールしたいところだ。7月1日には早くも旭川地区予選の初戦・旭川明成戦に先発登板し、12奪三振の完封勝利と幸先のいいスタートを切っている。
東海圏で評判がいい速球派右腕は、寺嶋大希(愛工大名電)。同じ愛知県内のライバルで、今春のセンバツでベスト4に導いた剛腕・畔柳亨丞(中京大中京)に匹敵する好素材だ。
しなやかなスリークオーターから放たれる最速147キロの快速球と、キレのいいスライダーを武器にする。空振りを奪える球質が魅力で、伸びしろも十分に残されている。
将来大化けする期待感を抱けるのが、長身右腕の高須大雅(静岡)だ。小学6年時には12球団ジュニアトーナメントの中日ジュニアに選ばれ、優勝に貢献。磐田東中でも知る人ぞ知る未完の大器と注目された。
高校進学後も身長は伸び続け、現在は191センチ。いかにも細身でパフォーマンスは安定せず、現在の最高球速は144キロと突出したものはない。とはいえ、この投手の場合は現在の姿を論ずるのはあまり意味がない。大人の体を手に入れた時、別人のように変身しても不思議ではない素材型だ。
今年の左腕のなかで圧倒的な存在感があるのが、羽田慎之介(八王子)だ。身長191センチ、体重86キロのスラリと伸びた長身で「和製ランディ・ジョンソン」の異名を持つ。最速149キロの快速球は、捕手のミットにミサイルのように突き刺さる。
ポテンシャルばかり注目されるが、試合当日の体調や感覚を察知して使える球種を判断するなど、思考力や器用さも持ち合わせている。
昨秋の左ヒジ痛からの回復を優先させたため、今春は公式戦でわずかな登板機会に終わった。その後は順調な調整を続けており、今夏は全開のパフォーマンスを見せてくれそうだ。
野手でモノの違いを感じさせるのは、阪口樂(うた/岐阜第一)だ。悠然とした構えからムードがあり、柔らかいスイングで打球を運べるスラッガー。その姿は大谷翔平(エンゼルス)を彷彿とさせる。高校通算本塁打は20本台と派手な数字こそないが、打者としての将来性は今年の高校生で屈指だろう。
ただし、秋春の東海大会では15打数0安打とふるわず、内容も伴わなかった。今年は例年に比べて高校生野手の素材が乏しいだけに、阪口が今夏に巻き返せるかはドラフト戦線にも大きな影響を及ぼしそうだ。
プロでの需要が高い右の強打者では、有薗直輝(千葉学芸)が筆頭格だ。高校通算本塁打数は夏の大会を前に70本に到達。今春の千葉大会では打撃時に左目付近を負傷して途中退場しながら、「とにかく試合に出たい」と直訴して次の試合から復帰。新興勢力・千葉学芸の県大会初優勝に大きく貢献した。
強打に隠れがちながら、強肩を生かした三塁守備もプロで売りにできるレベル。また、投手としては最速148キロを計測し、ハイレベルな変化球にも自信を持っている。
その有薗が強く意識するのは、小学6年時にロッテジュニアのチームメートだった吉野創士(昌平)だ。「この力感でここまで飛ばすか」と見る者を驚愕させるホームランを打てる右打者で、高校通算50本台をマークしている。走攻守の総合力が高く、アスリート型の野手としてスカウトは熱視線を送る。
現段階では細身で体の芯にもう一段力がほしいところだが、それも伸びしろととらえたい。また、守備は中堅手として試合に出場している一方、練習では三塁もこなし内野守備への苦手意識はない。
今回紹介した10選手の他にも、今夏に大ブレークしそうな逸材はたくさんいる。甲子園から注目するのではもう遅い。夏の地方大会から、孵化しつつある金の卵の動向に目を凝らそう。