メンバーリストを見ただけでは、このチームが浦和レッズであることをイメージするのは難しかった。かろうじて槙野智章、西川周…

 メンバーリストを見ただけでは、このチームが浦和レッズであることをイメージするのは難しかった。かろうじて槙野智章、西川周作らお馴染みのメンバーの表記に「浦和」を見出すことができたが、多くは昨季まではなかった名前である。

 6月27日に行なわれたアビスパ福岡戦のスタメンのうち、実に7人が在籍1年目の選手。うち2人がルーキーで、うち2人がJ2から個人昇格を果たした選手。言い換えれば、J1での経験がない選手たちが今の浦和の主力をなしているのである。



今季から浦和の一員となった24歳の小泉佳穂

 もちろん、すでにシーズンの半分を過ぎているので、「何を今さら」という指摘もあるだろう。だが、興梠慎三や武藤雄樹、宇賀神友弥といったこれまでの浦和を支えてきた面々がピッチに立っていない状況に、多少の違和感を覚えるのと同時に、あらためてサッカー界の変化のスピードの速さを感じた次第である。

 リカルド・ロドリゲス監督を迎えた今季の浦和には、期待と不安の両方が備わっていただろう。徳島ヴォルティスをJ1に導いたスペイン人指揮官の革新的な手腕は、チームに新たな風を吹かせると同時に、大きな痛みを伴うことも考えられたからだ。

 実際に開幕当初は結果が伴わず、川崎フロンターレに0−5で敗れる屈辱も味わった。スタイルも、メンバーも代え、大きく舵を切った以上、浦和の改革には相応の時間がかかると思われていた。

 しかし、第7節から3連勝を達成すると、第13節からも再び3連勝。そして第19節から2連勝を達成したチームは第20節を終えて5位と、気づけば順位表の上位へと顔を出しているのである。

 改革のスピードを速めたのは、5月の加入後にゴールを量産するキャスパー・ユンカーの存在が大きいだろう。しかし、それ以上に輝きを放つのは、小泉佳穂である。今季FC琉球から加入した小柄で華奢なアタッカーは、圧倒的な技術と戦術眼の高さを駆使し、すでに浦和の攻撃の最重要人物となっている。

 右利きながら左足も同等に操る精度の高いキックはもちろん、狭い局面でも失わないボールコントロールの巧みさも際立つ。球際で戦える闘争心や走力も持ち合わせ、攻守に流動的なリカルド・ロドリゲス監督のサッカーの体現者となっている。

 福岡戦では左足で強烈な一撃を見舞い、待望の移籍後初ゴールもマークした。昨季は三笘薫(川崎)が強烈な輝きを放ったが、今季のJ1での最大の発見はこの小泉だと言っても、決して大げさではないだろう。

 その小泉は、チームの攻撃の手ごたえを次のように語っている。

「僕がコツを掴んだというより、チームとして安定してボールを動かせるので、その結果、自分がいるべき場所にいて、いい形でボールが入ってくることが増えた。全員が意思を共有してボールを動かせているので、それに合わせて動くときれいに受けられる」

 得点シーンも「練習でもやっているし、意図した形で取れた」と胸を張る。どのようにボールを回し、どこにポジションを取れば、チャンスを作ることができるのか。迷いなきイメージの共有は、リカルド・ロドリゲス監督が求めるスタイルが着実に浸透している証だろう。

 小泉だけでなく、福岡戦で2点目を奪った明本考浩も、J2からの個人昇格組。昨季は栃木SCでプレーしたアタッカーは、サイドバックにも対応する万能型だ。その汎用性の高さを売りに、ここまで岩波拓也、槙野のCBコンビに次ぐチーム3位の出場時間を記録している(小泉は4位)。

 J2からやってきた2人に象徴されるように、実より名を優先するような補強が目立ったかつての浦和のイメージは、すでにない。決して派手さはないものの、組織的で機能性に優れた、生まれ変わった浦和の姿がそこにはあった。

 一方で、かつての主力は危機感を募らせる。

「ここまで試合に絡めないのは初めてですし、週末に試合がない日々が続くと、サッカー選手として生きている実感が湧かない」と言うのはベテランの宇賀神だ。しかし、「トライ&エラーを繰り返しながら成長している実感がある」と語るように、チャンスを得た第19節の柏戦では先制ゴールを奪い、チームに勝利をもたらしている。

 経験ではなく、今の実力。既存のヒエラルキーを崩し、フラットな視線で健全な競争が促せるのも、外部からやってきた監督のなせる業(わざ)だろう。既存戦力と新戦力が切磋琢磨を繰り返し、チーム内の競争が活性化する。強いチームには不可欠な、いいサイクルが生まれているのも見逃せないポイントだ。

 さらに浦和は、大型補強の手も緩めていない。酒井宏樹の電撃加入をはじめ、デンマーク代表DFアレクサンダー・ショルツも獲得。さらには柏レイソルの10番・江坂任も迎え入れた。チーム作りの途上でありながらも、戦力の上積みも実現。復権に向けて攻めの姿勢を貫く浦和が、後半戦の主役となる可能性は十分だ。