かつて国立競技場での日本代表戦になると、ハーフタイムに観客スタンドから全裸で飛び下りて、ピッチを疾走する名物男がいた。…

かつて国立競技場での日本代表戦になると、ハーフタイムに観客スタンドから全裸で飛び下りて、ピッチを疾走する名物男がいた。すぐに警備員につかまって連行されるのだが、別の日の代表戦で同じことをやらかす。入場料金を払った観客で、“全裸監督”ではなかったと思う。――今回は、放浪するジャーナリストが遭遇した、“微笑みの国”の代表チームと名物サポーターのエピソード――。

セレッソ大阪はなぜ引き分けたのか?

 現在、タイとウズベキスタンでAFCチャンピオンズリーグ東地区のグループステージの戦いが繰り広げられている。6月30日にはセレッソ大阪がタイのポートFCと対戦したが、前半アディショナルタイムにGK松井謙弥が何でもないロングキックのバウンドを見誤って頭上を越されて先制され、なんとか追い付いたものの引き分けに終わってしまった。内容は圧倒的にボールを保持して攻めていたのだから「勝点2を失った」試合だった。

 この試合、C大阪は大幅にメンバーを変えていたが、やはり急造メンバーでは呼吸が合わなかったのだろうか。

 その前日には川崎フロンターレがやはりメンバーを大幅に変更して戦ったが、こちらは北京国安相手に7対0の大勝。川崎とC大阪ではチーム力あるいはチーム状態に大きな違いがあるようだ。

 もちろん、相手が違うのだから単純に比較はできないし、ポートFCにはホーム・アドバンテージがあったのだが……。

 日本勢は好調だ。オーストラリアのクラブが棄権し、中国は二軍を送り込んできたので、ほとんどのグループが日韓の首位争いになるだろうが、韓国のチーム相手にもここまで日本勢は1つも星を落としていない。

 タイやマレーシア、シンガポールのクラブなら勝って当然。引き分けに持ち込まれると「大失態」のように感じてしまうのは僕だけではないだろう。

 良い時代じゃぁないか! 昔は、東南アジア相手に日本は何度も煮え湯を飲まされてきたものだ。

 その最たるものが、1984年に行われたロサンゼルス・オリンピックのアジア最終予選だった。

■当時、日本はタイの情報をほとんど知らなかった

 当時のオリンピックにはアジア諸国からはフル代表が出場していた。日本代表にとってはオリンピックこそが最大の目標。アジア枠が「1」しかなかったワールドカップ予選突破はほぼ不可能。ワールドカップ予選で若手に経験を積ませて、オリンピック予選突破を狙う。それが日本の方針だった。

 さて、ロサンゼルス五輪予選。なんとか最終予選に駒を進めた森孝慈監督率いる日本代表は力を付けてきていた(ように思えた)。4月の予選を前に1月にはブラジルの名門コリンチャンスが来日。日本は2勝1敗と勝ち越したのだ。真夏のブラジルからやって来たクラブチームと雪の中で戦って勝ったからといって、何も保証されるわけではないのだが……。

 シンガポールでのセントラル方式の予選。日本はタイ、マレーシア、イラク、カタールの順で戦うことになった。

「中東勢は強そうだが、東南アジアには勝てるだろう。対戦順はラッキー」というのが、日本側の受け止めだった。

「タイには勝てる」と誰もが思っていた。その根拠は「タイは内弁慶だから」というのだ。「バンコクで戦えば、タイは手強いが中立地のシンガポールでなら勝てる」。ほとんど根拠もない楽観論だ。

 ただ、「タイには若くて優秀なFWがいる。警戒が必要だ」という情報は入っていた。だが、そのFWがどのようなタイプなのかという情報はまったくなかったのだ。今から考えると信じられないことだが、アマチュア時代の日本代表はその程度の情報しかないまま、国際試合を戦っていたのだ。

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