今季海外メジャーの第1弾となるANAインスピレーションから米ツアーに参戦してきた渋野日向子が、この3カ月間の"武者修行"の集大成として、全米女子プロ選手権(6月24日~27日/ジョージア州)に出場。今季メジャー3戦目に…

 今季海外メジャーの第1弾となるANAインスピレーションから米ツアーに参戦してきた渋野日向子が、この3カ月間の"武者修行"の集大成として、全米女子プロ選手権(6月24日~27日/ジョージア州)に出場。今季メジャー3戦目にして初の予選突破を果たし、通算1オーバー、40位タイでフィニッシュした。

「メジャー3試合目でやっと予選を通過できて、最後に自分らしいプレーができたと思うので、この1週間は自分でもかなりの手応えを得ています。

 この3カ月、悔しいことのほうがたくさんあったと思うんですけど、この1週間の自分を振り返ってみると、今までの悔しさが全部消えていくような感じというか、いろいろと溜まっていたものがここですべて吐き出されたかなという内容のゴルフができた。

 今週のようなゴルフができれば、次にアメリカに来る時にはもっと戦えるんじゃないかな、と思う。そのためにも、良かったところ、悪かったところをしっかりと復習して、次に向けてがんばりたいと思います」



3カ月の海外遠征を笑顔で締めくくった渋野日向子。photo by Kyodo News

 4日間のラウンドを終えて、そう語った渋野。最後は渋野らしい笑顔が弾けたが、初日は厳しいスタートとなった。1バーディー、5ボギーの「76」。4オーバー、93位タイと出遅れた。

「もうどうにもならなかったというか、ショットがすごく曲がって......。前半はちょっと曲がってしまう場面があるなという感じだったんですが、後半は風と仲良くなりすぎて曲がっていっちゃうというのが多かった。結果、フェアウェーキープも悪かったので、すべてにおいて残念だったという感じ。

(ショットは)朝の練習場ではめちゃくちゃよかった。めっちゃよく飛んでいるなって。でも、全米女子オープンの時より緊張していた。3カ月の(遠征の)最後だし、メジャー大会だし。あと、やっぱり(メジャーでは)予選落ちが続いていて、『予選を通りたい』っていう気持ちも強かったからこそ、だと思います。手が震えたりもした? あります。ティーショットからめっちゃ力むし、スイングも速くなっちゃうし......。

 そうやって、悪いところはたくさんありましたけど、パッティングの感じは前回の全米女子オープンの時よりよくなっているので、それが入ってくれれば、もう少しスコアにつながると思います。全米女子オープンの時は打った瞬間から入らんなというのが多かった。それが昨日、ちょっといい感触をつかんで、転がりがよくなった」

 2日目は、予選突破への執念を見せた渋野。上がり2ホールで3つスコアを伸ばして、通算2オーバー、57位タイまで順位を上げて決勝ラウンド進出を決めた。

「(最後の2ホールが)マジでよかった。泣きそうだったもん。(予選通過には)今日はアンダーを出すしかないと思っていたので、なかなかいい流れには来なかったんですけど、最初から攻めるしかないと思っていて。(16番でボギーを打ったあと)17番パー3ではもう(バーディー)取るしかないと思っていたので、あそこでいいショットが打てて、強気のパットでバーディーを決めることができたのは、すごくうれしかった。

(18番パー5では)ティーショットのボールが(目の前の)ディボットに入っていなくてよかった。あれはもう、『神さま~』って思った(笑)。(2打目は)2オンを狙うか、狙うまいか迷ったけど、(予選通過には)最低でもあと2打は必要だと思ったし、そのためにはイーグルを獲りにいかないといけないと思って、果敢に(2オンを)狙いました。

 イーグルパットは、めっちゃ緊張しました。すっげぇ~、心臓がバクバクしていました。セカンドも深呼吸しまくっていたけど、アハハハッ(笑)。最後のパットは、読み切ったというより、もうやけくそ。もう1回やったら、入らないです。

 予選突破? めっちゃホッとした。あと2日間、ゴルフができるっていうのはすごくうれしい。この3カ月のすべてを、最後の2ホールに出し尽くした感じ。これまで、メジャー大会では一打の重みを感じることが多すぎました。それと、最後まで諦めないっていうこと。今日はそれをすごく感じられた。これからのゴルフ人生においても、今日の(最後の)2ホールで(何かが)変わってくるかなと思う」

 3日目は朝から慌ただしい一日となった。帰国準備のために受けた前日のPCR検査で、パートナーを組む藤野圭祐キャディーに陽性反応が出たことによって、試合への出場可否が直前までわからなかったからだ。結局、渋野は無事にプレーできることになったが、キャディーは急きょ地元のローカルキャディーが務めるなど、厳しい状況でのラウンドを強いられることになった。

 そうしたなか、インスタートの12番でバーディーを奪って好発進を決めたが、17番パー3でなんと4発も池に入れて「10」の大叩き。後半、3つのバーディーを奪って盛り返したものの、トータル4つスコアを落として、通算6オーバー、68位タイと後退した。

「昨晩のうちには(今日)ラウンドできるかどうかわからない状況で......。朝になって、とりあえず(自分は)プレーできることがわかって。本当に不安だらけというか、いろいろ......なんか......すごく不安だったんですけど、18ホール回りきれてよかったです。

 マネジャーさんも、トレーナーさんも入れない状況のなか、地元の日本人ギャラリーのみなさんの声援が力になりました。なんか、つらいなか、不安もあったんですけど、本当にみなさんのおかげで、最後までがんばれました。キャディーのユセフ(・ワゼールディン)さんも、めっちゃ優しかったし、心強かった。

 17番は完全に距離の計算を間違えていて。動揺しちゃって、それにもまったく気づけないくらいで......。でもその後は、3日間の中では一番ショットがよかったと思いますし、パッティングもちょっとずつかみ合ってきて。いい転がりができているなっていうのが、すごく実感できた」

 最終日も会場でPCR検査を受け、陰性という結果が出てようやくコース入りした渋野。30分足らずのウォーミングアップでスタートすることとなったが、6バーディー、1ボギーの「67」という好スコアを出してホールアウト。3カ月のアメリカ遠征をいい形で締めくくった。

「3カ月(の遠征)の最後のラウンドだったので、今日は最初から攻めていこうという気持ちで、それを最後まで貫けたのはよかったと思います。バタバタしてのスタートでしたが、それでも試合に出られたことがよかったですし、いいプレーができてうれしかったです。

 この1週間はいろいろなことを経験できたと思いますし、それを自分でもプラスに捉えられているので、自分が成長するためには必要な経験だったと思います。

 スイングはめちゃめちゃ振れていましたね。パッティングもこの3カ月で一番入ってくれた。自分の打ちたいところに打ち出せる――それは、本当に当たり前のことだと思うんですけど、それができていたと思います。自分らしいプレーがちょっとずつ戻ってきているんじゃないかな、というのを感じられた2日間でした」

 この3カ月間での成長を問われて、渋野は「成長したかなぁ~。ないっすね」と語ったが、その表情からは確かな手応えが感じられた。実際、大会前にはこう語っている。

「ショットの精度的には、少しずつよくなってきていると思います。日本を出る前に比べると、すごく精度は高くなっている。全米女子オープンの時も、うまく(ボールを)とらえられていた。正確性も昨年よりもいいかなと。自信もちょっとずつ持てるようになってきたなっていう感覚がある。結果には結びついていないけど、そこはプラスに捉えていいのかな、と」

 このあと、日本に帰国する渋野は、日本ツアーに復帰。GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップ(7月16日~18日/茨城県)、大東建託・いい部屋ネットレディス(7月22日~25日/北海道)、楽天スーパーレディース(7月29日~31日/兵庫県)に出場する予定だ。

 その後、一昨年優勝した全英女子オープンに参戦。以降、再び日本ツアーに復帰し、年末には米女子ツアーの出場権を争うQシリーズに挑む予定だが(※全英女子オープンで優勝すれば、Qシリーズに参加することなく、米ツアー参戦の資格を得られる)、まずはその前に、久しぶりに日本のトーナメントに臨む彼女のプレーに注目したい。