DDTで行われている夏のトーナメント「KING OF DDT 2021」。6.20後楽園大会で準決勝進出者4名が決まった。その中で虎視眈々と優勝を目論むのがEruption樋口和貞。今年3月KO-D無差別級王者・秋山準に敗れ、勝者の腰にベル…

DDTで行われている夏のトーナメント「KING OF DDT 2021」。6.20後楽園大会で準決勝進出者4名が決まった。その中で虎視眈々と優勝を目論むのがEruption樋口和貞。今年3月KO-D無差別級王者・秋山準に敗れ、勝者の腰にベルトを巻くという屈辱的な行為をさせられた。あの時、樋口は何を思ったのか。

――6.6さいたまスーパーアリーナCyberFight Festival 2021は大変な盛り上がりでしたね。樋口選手はNOAHの反体制ユニット金剛と全面対抗12人タッグに出場。DDT軍団は拳王選手を挑発するような入場シーンでした。

樋口:試合前にSNS上で激しいやり取りがありました。「よくも焚きつけてくれたな」と。結果的に拳王がドラマティックドリーム号(自転車)に乗った時点で、こっち側(DDT)の勝利、「してやったり」ですよ(笑)。

実は試合前、高木社長が地下の倉庫からドラマティックドリーム号(自転車)を引っ張り出してきました。だったら俺たちも使おうと思い、いろいろ物色しました。

ただドラマティックドリーム号が拳王に踏まれて廃車になりましたけど(苦笑)。

――コロナ禍でスポーツやコンサート等、大きい会場でのイベント中止が相次ぐ中での開催でした。

樋口:開催前は不安なところもありましたが、蓋を開ければ多くのお客さんに集まって頂き、たくさんの笑顔を見ることができました。開催して良かったと思います。

【6.6 CyberFight FESTIVAL 2021 DDT vs NOAH対抗戦】→https://www.010-sports.jp/archives/1342

――樋口選手が印象に残っているシーンはありますか?

樋口:納谷がレフェリーにヤゴラのマスクを被せて自分が罠にかけリング下に落とし、高木社長がドラマティックドリーム号を使うシーン。DDTのチームワークの良さが出ましたね。

ここが勝負どころだ!と感じた瞬間、全て言わなくても伝わる「DDTの妙な団結力」が出ました。

――それは僕も会場で観戦していて感じました。声は出せなかったけど会場が一つになりました。ところで前回、樋口選手に取材したのが3月のKO-D無差別級王者・秋山準戦の前。試合前、樋口選手は「秋山準の本道vs樋口和貞のDDTの戦い」と話してくれました。

樋口:結果としては敗れてしまった。自分の技量の問題ですが、DDTで培ってきた自分のプロレスを突き進めていけば大丈夫だ!という確信を持ちました。あくまで技量が足りなかっただけ。

【DDTプロレス 樋口和貞 いざDDT最高峰のベルト挑戦へ】→https://www.010-sports.jp/archives/835

――秋山選手と初めて戦ったのが、昨年のD王GP。あの時は勝利しています。その秋山選手とは別人でしたか?

樋口:別人でしたね。2度目の対戦となった3月は序盤から腕を集中的に攻められました。初戦と違い、(秋山準が)対策を練ってきたと感じました。

自分としては初戦のイメージで戦っていましたが、場外で鉄柱に右手をぶつけられた時、「(秋山準が)戦い方を変えてきた」と感じました。攻める際の引き出しが多く、多角的に攻めてくる印象を受けました。

――D王GPのリーグ戦やKING OF DDTトーナメントと、KO-D無差別級王座の戦い方を変えているように思いました。

樋口:いろいろな対戦相手といろいろな大舞台で戦ってきた「秋山準の奥深さ」を感じた戦いでもありました。

――試合に敗れたあと、樋口さんが秋山選手の腰にベルトを巻く場面がありました。レスラーとして屈辱的な場面でしたね。

樋口:試合前、秋山準は自分に対してSNSで「負けたら『はい』と言えよ」と発信していました。ただ敗れた後、あの場面で言わせるのかと…本当に性格の悪い人ですね(苦笑)。

――それに対して観客席から「樋口、巻くな!」の声も上がりました。

樋口:今思えば声を出すのは良くないのですが(苦笑)…でも自分自身、あの声に救われた部分もあります。

――試合後、秋山選手が樋口さんに対し「俺だけじゃなくって誰に対しても今のスタンスを変えるな」とコメントしていました。

 

樋口:秋山準の腰にベルトを巻かされたことは素直に悔しかった。そして「この悔しさは何かに似ている」と。自分の過去を紐解いた時、力士時代に辿り着きました。

プロレスデビューして7年、自分は落ち着いてしまった部分があった。タイトル戦前、秋山準とSNSのやり取りから始まりタイトルマッチに敗戦。そしてベルトを巻かされることを経験した。本当に悔しかった…その悔しさは相撲時代に相手力士に敗れて何度も繰り返したものと同じだったんです。

大相撲時代、自分は幕下止まり。関取に上がる力士と戦うたびに直面した「悔しさ」。若い頃は幾度となく「腹立つな!」という苦い思いを経験しました。

でも大相撲からプロレスの世界に入り今年で33歳。後輩も入り立場的に安定してきた。そんな状況の中、「ベルトを巻かされる」と屈辱的な経験をさせられた。力士時代の「ちくしょう!このやろう、いつか見てろよ」という気持ちを思い出しましたね。

もちろんプロレス界に入って悔しい思いは散々してきました。ただ敗れた後、「負けた相手の腰にベルトを巻かされる」というのは、試合で負ける以上に堪えました。

試合前からSNS上でいろいろやり取りがあり試合でカウント3を取られた。リング上で白黒はっきり付けられたわけです。約束は約束なので守ります。ただ…表面には出さないけど心の奥で思うことはあります。

――6.20の遠藤戦で、これまでの樋口さんではなく新しい樋口さんを見た気がします。鬼気迫るというか目の色が変わったような…

樋口:秋山戦のあと、自分自身のファイトスタイルを大きく変えたつもりはありませんが、悔しい思いを味わったので意識が変化したのかも知れません。

【KING OF DDT 2021 2回戦 遠藤哲哉 vs樋口和貞】→https://www.010-sports.jp/archives/1562

――その秋山選手と戦った2週間後にHARASHIMA選手と岡林裕二選手のスマイルピッサリとKO-Dタッグ王座をかけて敗れました。

樋口: HARASHIMA・岡林、何度も戦ったし組んだこともあります。秋山戦から2週間でKO-Dタッグ戦というのを言い訳にしたくない。もちろん万全な体勢で臨みました。結果、自分が取られてベルトを失った。

昨年EruptionはKO-Dタッグ、KO-D6人タッグと最大で5本のベルトを保持していたのに、現在は1本もない。

【赤井沙希 安納サオリと対戦!】→https://www.010-sports.jp/archives/198

坂口さん、赤井さんと自分、本当に悔しい思いをしている。「Ultimate Tag League 2021」も出だしが良かったのに獲れなかった。今年に入って悔しい思いが続いているので「絶対に俺たち(Eruption)は巻き返さなければ」と強く持っています。

(後編につづく)

<インフォメーション>

7.4後楽園ホールにて「BLACK OUT presents KING OF DDT 2021 FINAL!!」が行われます。トーナメントを制するのは誰になるのか!

チケット等、詳細はDDTプロレスリング公式サイトをご覧ください。→https://www.ddtpro.com/schedules/15653

また試合は動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで生配信されます。→https://www.ddtpro.com/universe

DDTプロレスリング Twitter→https://twitter.com/ddtpro

樋口和貞 Twitter→https://twitter.com/kazusada185cm

取材・文/大楽 聡詞

写真提供/DDTプロレスリング