日本人としては実に27年ぶりだ。6月27日にゴールを迎えた世界ラリー選手権(WRC)第6戦サファリラリー(ケニア)で、トヨタの勝田貴元(28)が自身初表彰台の2位を獲得した。 表彰台で喜ぶ勝田貴元(左から2人目)。日本人27年ぶりの…

 日本人としては実に27年ぶりだ。6月27日にゴールを迎えた世界ラリー選手権(WRC)第6戦サファリラリー(ケニア)で、トヨタの勝田貴元(28)が自身初表彰台の2位を獲得した。

表彰台で喜ぶ勝田貴元(左から2人目)。日本人27年ぶりの快挙だ(トヨタ自動車提供)

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 日本人が表彰台フィニッシュを決めたのは1994年のサファリで2位となった篠塚建次郎(当時三菱)以来、史上4度目。それまでの2度とも篠塚で、91、92年のアイボリーコーストラリー(コートジボワール)を連覇で飾った。勝田は篠塚に続く日本人2人目の快挙を成し遂げたことになる。

 「非常にタフな週末で、本当にいろいろなことが起きて簡単ではなかった。最後までいいところで闘うことができて最終的に2位でフィニッシュできたが、まだまだ改善するところがたくさんある。もう一歩上へいけるように頑張ります」。チームの公式ツイッターを通じて熱戦を振り返った。ちなみにトップカテゴリーのワールドラリーカーを操った日本人としては初の表彰台だ。

 最終日で追い風が吹いた。首位を守っていたヒュンダイのティエリー・ヌービルが右リアサスペンションを壊して最初のスペシャルステージ後にリタイアを選択。それまで2位につけていた勝田が逆転トップに立った。が、最終的にチームメートのエース、セバスチャン・オジエ(フランス)にかわされて初表彰台初優勝は果たせなかった。

 大健闘の2位にトヨタの『首領』もすぐに反応した。トヨタのチームオーナーも務めるトヨタ自動車の豊田章男社長が祝福のメッセージを発表。「タカ! 本当にすごい! 少し悔しいけど、すごくうれしい! あのセブ(オジエ)をリードして最終日を迎え、そのままずっと優勝を争って2位表彰台! 震えるほど感動しました」とたたえた。

ケニアの生活道路を走行する勝田貴元が操るトヨタ・ヤリスWRC(トヨタ自動車提供)


 勝田は異色の経歴の持ち主だ。ラリー一筋と思いきや、そうではない。ゴーカートからサーキットレースに進み、全日本F3では名門トムスに所属し、ランキング2位を獲得。いずれは国内トップカテゴリーのスーパーフォーミュラやスーパーGTに参戦し、トヨタのルマン24時間プロジェクトに携わるチャンスもあったが、2015年にラリー転身を決意した。

 下地はあった。愛知県長久手市の出身でラリードライバー一家に生まれているのだ。祖父の照夫さんはWRC経験者で、1975年の英RACラリーで日本人初のクラス優勝を果たした。父の範彦さんも全日本ラリー王者を8度獲得する現役バリバリのドライバー。ラリー界の超良血馬でもあった。

 15年にトヨタのラリー育成プログラムのオーディションに合格し、16年にWRCデビュー。下部カテゴリーでめきめきと頭角を現し、19年にはトップカテゴリー車両のトヨタ・ヤリスWRCでシリーズに出場。今季からシリーズフル参戦を続けている。

 サーキットレースからWRCに転身した選手は少なからずいる。代表的なのはF1王者からWRCに挑戦したキミ・ライコネン(フィンランド)だ。このほかF1経験者ではマーティン・ブランドル(英国)、ヘイキ・コバライネン(フィンランド)、ロベルト・クビサ(ポーランド)らがいる。ただし、ライコネンは「F1よりもWRCの方が断然に難しい」と過去に語っており、大成するには一筋縄ではいかないようだ。

 だからこそ、勝田が評価を高めている。注目はグラベル(非舗装路)ラリーのサファリで表彰台を獲得したことだ。サーキットレース出身選手は路面のミュー(摩擦係数)が高いターマック(舗装路)で強いといわれるが、勝田はグラベルでもトップドライバーに引けを取らない走りをみせている。連続で4位に入ったイタリア(サルデーニャ)、ポルトガルはいずれもグラベルの大会だった。

 今年11月には11年ぶりの日本復活開催となるWRC最終戦「ラリージャパン」が愛知、岐阜の両県で予定されている。昨季は新型コロナウイルス禍で開催中止となっただけに関係者が実施を目指して奮闘中だ。勝田ももちろん参戦の予定で優勝候補に数えられる可能性はある。ラリー界のニュースターの凱旋(がいせん)が待たれる。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)


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