ユーロ2020。日本が参加していない欧州域内の戦いながら、面白い。なにより接戦だ。出場24チームを16チームに絞るグル…

 ユーロ2020。日本が参加していない欧州域内の戦いながら、面白い。なにより接戦だ。出場24チームを16チームに絞るグループリーグは、32チームを16チームに絞るW杯よりスリルがある。高次元でレベルが拮抗している。

 俗に「死の組」と言われたフランス、ドイツ、ポルトガル、ハンガリーが戦ったグループリーグF組はそれを象徴する。現地時間6月23日の20時にキックオフされた最終戦の2試合(ポルトガル2-2フランス。ドイツ2-2ハンガリー)は、タイムアップの笛が鳴る最後の瞬間まで、目が離せない展開になった。



フランス戦ではPK2本を決めてポルトガルの決勝トーナメント進出を決めたクリスティアーノ・ロナウド

 1位フランス(勝ち点5)、2位ドイツ(勝ち点4)、3位ポルトガル(勝ち点4)の3チームがベスト16に進出することになった(ドイツとポルトガルの順位差は、直接対決の結果によるもの)が、ハンガリーの奮闘も見逃せなかった。最終戦のドイツ戦では常に先手を取り、ドイツを慌てさせた。

 その前の試合のフランス戦(1-1)でも、ハンガリーは先制点を奪い、フランスを慌てさせている。フランス、ドイツ側がハンガリーの善戦を誘発させた面もある。フランスは2018年ロシアW杯の覇者で、ドイツは2014年ブラジルW杯の覇者。今大会でもフランスは本命に、ドイツは2番手グループに推されている。だが、それぞれのサッカーの中身は、下馬評に準じたものは言えなかった。

 フランスの最大のセールスポイントは、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、カリム・ベンゼマ(レアル・マドリード)、アントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ)が並ぶ前線になるが、そこにボールが至るプロセスが一本調子だ。3人とそれ以外とに分かれたサッカーになっている。直線的というか、コンビネーションが働いていないというか、とにかく単純だ。細工が利いていない。中でもスピード抜群のエムバペの、その走力に頼るサッカーになりがちだ。

 3戦目のポルトガル戦も、スコアは2-2だったが、あえて判定で勝負をつければ、ポルトガルに軍配は挙がった。それでも引き分け、なんとかグループリーグを首位通過する姿に底力を見る気はしたが、優勝まで残り4試合の道のりを、このやり方で貫き通せるとは思えない。現状から何かが変わらないと優勝は難しそうな気がする。

 決勝トーナメント1回戦の相手はスイス。ここは問題ない気がするが、準々決勝に進んだ場合、そこで対戦するクロアチア対スペインの勝者は、難敵だ。特にスペインが勝った場合は、面白くなりそうだ。フランスのFW3人組のような抜けた存在はいないが、スペインは粒ぞろい。スケールは小さいが「全員サッカー」的な魅力がある。一時の低迷から脱した感があるので、フランスがかつてより力を落としているならば、接戦、逆転の可能性は増す。

 ドイツはフランスよりもっと単調だ。高い身体能力と各自の遂行能力を活かした大崩れしないサッカーではあるが、リズムテンポに変化がない。

 かつてのドイツは、フィリップ・ラームを経由すると、サッカーが上品になった。ピッチ上のオアシス的な役割を果たしていたが、今回、その役を期待されているヨシュア・キミッヒ(バイエルン)は、さしたる活躍を見せていない。

 バイエルンで、サイドバック(SB)と守備的MFを務めるキミッヒは、かつてのラームそっくりで、硬質な選手が揃うドイツには欠かせない選手と言いたくなるが、ラームと違うのは、代表チームにおけるポジションだ。3-4-2-1の右ウイングバック。右SBの時よりさらに大外で構えるため、ボールに触れる機会が決定的に少ない。試合の流れに影響を与えにくいポジションでプレーしている。

 タッチラインを縦に駆け上がるオーバーラップに加え、ラームは内側にコースを取るインナーラップでも話題を呼んだが、ウイングバックではそのプレーは不可能だ。

 ラームが内側を突き、大外を右ウイングのトーマス・ミュラーが突く――というかつてのパターンは、すっかり拝めなくなっている。布陣が4-3-3あるいは4-2-3-1から3-4-2-1に変化したことも、大きな原因だ。

 攻撃がさらに直線的で強引になった。同じ監督(ヨアヒム・レーヴ)が指揮を執っているとは思えないサッカーに変化した。ハンガリー戦の後半は、布陣を4-4-2に変化させたが、ちぐはぐな印象は否めなかった。なぜレーヴは、サッカーを変えたのか。ドイツの問題はここに潜んでいる。

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 決勝トーナメント1回戦の相手はイングランドだ。ブックメーカー各社は、決勝トーナメント1回戦8試合の中で、この試合を一番の接戦カードと予想している。

 イングランドもドイツと同じ悩みを抱えている。かつてより選手のクオリティは上がっているが、同じタイプの選手が多いため、試合運びが一本調子になりがちな点だ。

 舞台はウェンブリー。下馬評ではホームのイングランドが若干優位と伝えられているが、何といっても伝統的な一戦だ。1966年W杯決勝の延長戦、イングランドのFWジェフ・ハーストの放ったシュートが西ドイツのゴールバーを叩き真下に落下。イングランドのゴールが認められたものの、ゴールを割ったか否かがいまなお議論を呼んでいる因縁の対決でもある。現地の盛り上がりは必至だ。

 F組の戦いに話を戻せば、好感度の高い戦いをしたのが前回覇者のポルトガルだ。決勝トーナメントに向けて最も可能性のある戦いをしたチームと言っていい。前回2016年大会もグループリーグは3位通過だった。3戦3分け。勝ち点3というギリギリ通過であったにもかかわらず、そこからチームは熟成していき、24チームの頂点に立った。

 今回のチームにも、前回を彷彿させるムードがある。ただし、3位通過だったことで、決勝トーナメント1回戦は厳しい相手との一戦になった。B組を3連勝で首位通過したベルギーだ。

 ベルギー対ポルトガル戦。ブックメーカーはイングランド対ドイツに次ぐ接戦のカードと見ている。問題はベルギーの戦力だ。3位になった2018年ロシアW杯から実力は上がっているのか、下がっているのか。グループリーグの戦いを見る限り、微妙だ。大きく上昇している感じではない。舞台はポルトガルにほど近いスペインのセビージャ。大接戦の可能性ありと見る。

 決勝トーナメントの「山」を見ると、F組の2チーム(フランス、ポルトガル)に、イタリア、スペイン、ベルギーなどが並ぶ側のほうが、反対側に比べて厳しく見える。逆に、ドイツ対イングランドの勝者、そしてオランダがかなり優位に見えてくる。

 ブックメーカーは、そのオランダを、決勝戦に最も勝ち上がる可能性が高いチームと予想している。2010年南アフリカW杯準優勝、2014年ブラジルW杯3位と、世界の上位に君臨しながら、前回のユーロ2016、さらには2018年ロシアW杯では一転、予選落ち。下り坂にあったチームが、右肩上がりに転じていることは確かだ。

 来季のバルセロナ入りが決まったメンフィス・デパイ、パリ・サンジェルマン入りが決まったジョルジニオ・ワイナルダム、そしてフレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)。この3人を軸にしたコンビネーションサッカーが冴えている。周囲も気が利いた脇役で固められている。

 オランダ、イングランド、ドイツと同じ山に振り分けられたチームの中で、伏兵を挙げるとすればウクライナだ。スタメンのおよそ半分を左利きが占めるという特殊なチーム。決勝トーナメント1回戦で対戦するスウェーデン、続く準々決勝(イングランド対ドイツと勝者)も、相手が直線的なチームだけに、はまると面白い。番狂わせの可能性なきにしもあらず、だ。

 フランス、イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、ポルトガル、オランダ、ベルギー。優勝チームはこの中から生まれると思われるが、力はかなり拮抗している。名勝負が生まれる可能性は高い。個人的には、メンバー交代5人制の新ルールを、有効に使ったチームが有利と見るが、結果はいかに。