島津アリーナ京都(京都府立体育館)で開催されたATP公認大会「第53回島津全日本室内テニス選手権大会(京都チャレンジャー)」(本戦2月20~26日/賞金総額男子5万ドル/室内カーペット)は最終日、男子シングルス決勝が行われた。チャレンジ…

 島津アリーナ京都(京都府立体育館)で開催されたATP公認大会「第53回島津全日本室内テニス選手権大会(京都チャレンジャー)」(本戦2月20~26日/賞金総額男子5万ドル/室内カーペット)は最終日、男子シングルス決勝が行われた。チャレンジャー大会では約1年半ぶりに決勝に進出した内山靖崇(北日本物産)が第6シードのブラズ・カブチッチ(スロベニア)に6-3 6-4で勝利。チャレンジャーで初タイトルを獲得した。

   ◇   ◇   ◇  初めてチャレンジャー大会の本戦に出場したのが2010年の11月。内山が17歳のときだった。それから73大会目……予選で敗れたものも含めればさらに10大会以上増えるが、今年25歳になる内山がついにチャレンジャーのタイトルを一つつかみ取った。

 振り返れば、決して上々のコンディションで迎えた大会ではなかった。今月初めのデビスカップのあとインフルエンザにかかって寝込み、1週間もの間、練習どころではなかった。

 「体力も落ちたし、体調もテニスも、気分的にもかなりダウンしました」

 しかしデ杯以来、2週間ぶりの試合でいいスタートが切れたのは、昨年後半、夏から秋にかけて2ヵ月半の間に3度チャレンジャーのベスト4に進むなど、つないできた実績と自信の証だろう。

 過去1勝1敗のカブチッチとの決勝戦。「壁のように返してくる選手」という印象通りのしぶとさを随所に見せた29歳に対し、第1セットは第7ゲームで初めてブレークに成功し、流れを引き寄せた。結局、2-3から第2セットの第1ゲームまで5ゲームを連取。第2ゲームもダブルでブレークポイントを握っていたが、それを生かせなかった後悔を多少引きずっての第5ゲーム、ダブルフーォルトで始まって0-40というこの試合最大のピンチを迎えた。

 フォアハンドのドロップショット、そしてエースで30-40としたあとのポイントが今日一番の見せ場だった。両者の執念がぶつかり合うような強打の応酬の中、ネットに出た内山はボレーでしのぎながら最後はスマッシュ。これでデュースに戻し、エースでアドバンテージ。ふたたびデュースに戻されるが、そこから2ポイントを連取した。

 これで相手の反撃の芽を潰すと、5-4で迎えたカブチッチのサービスゲームでダブルフォールトももらって15-40のチャンスを握った。その2つ目のマッチポイント、最後はカブチッチのフォアがネットにかかった。内山の我慢と攻撃力が〈壁〉を破った瞬間だ。

 世界ランキング166位と227位の差よりも大きかったのは、カブチッチがかつてトップ40を経験しているということだっただろう。

 「競ったところでの集中力が高いし、こっちのチャンスでも簡単にミスしてくれない。その中で自分がどれだけ我慢できるか、集中が切れたら持っていかれるということを意識しながらプレーしていました」

 今大会はそういう「元トップ○○」に何度か勝ってきた内山のランキングはこれで初めて200位を切り、180位あたりまで一気に上がりそうだ。

 「初優勝の実感はあまりないし、明後日からもう慶應チャレンジャーが始まるので、今は実感しないほうがいいのかもしれない」と淡々と言ったが、週明けのランキングを目にして少なからず〈実感〉を得るのではないだろうか。達成ではない。「長いことくすぶっていた」という内山にとっての〈目覚め〉。そう信じられるような1週間の戦いぶりだった。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)