ユーロ2020。出場24カ国が6グループに分かれてベスト16の座を争うグループリーグは、それぞれ2試合を消化した。 混…

 ユーロ2020。出場24カ国が6グループに分かれてベスト16の座を争うグループリーグは、それぞれ2試合を消化した。

 混戦である。2戦2勝で突破を確実にしたのはイタリア、ベルギー、オランダ。一方、脱落(グループリーグ最下位)が決まったのは北マケドニアのみだ。残る12の椅子を巡る争いは、3戦目にもつれ込むことになった(決勝トーナメント進出は各組2位までと、3位6チームのうち成績上位の4チーム)。

 前回2016年大会の覇者のポルトガル。2018年ロシアW杯覇者のフランス。2014年ブラジルW杯覇者のドイツ。それにハンガリーを加えた4チームで争われているF組も、当初の予想どおり、目の離せない展開になっている。



ハンガリーに引き分け、決勝トーナメント進出を決めることができなかったフランスのキリアン・エムパベ

 ドイツは初戦でフランスに0-1と敗れるも、第2戦はポルトガルに4-2で勝利。フランスはドイツに勝利するも、ハンガリーに1-1で引き分け。ポルトガルは初戦でハンガリーに3-0と大勝したものの、ドイツに2点差負けを喫した。この結果、1位フランス(勝ち点4)、2位ドイツ(3)、3位ポルトガル(3)、4位ハンガリー(1)の順で推移している。

 ユーロを含むUEFA主催の試合では、グループリーグで勝ち点が並んだとき、優劣の優先順位は得失点差ではなく、当該チームの直接対決の結果になる。したがって同じ勝ち点3で並ぶF組のドイツとポルトガルの関係では、ドイツが勝ることになる。最終的にフランスとドイツが同じ勝ち点で並べば、フランスが上に来ることになるが、このレギュレーションに基づくと、若干優位に見えるのは、最終戦にハンガリーとの対戦を控えているドイツだろう。

 しかもドイツ対ハンガリーの会場はミュンヘンだ。ドイツがそこでプレッシャーに襲われる可能性より、地元ファンの声援に勇気づけられる可能性のほうが高いと考えるのが自然だ。コロナ禍での戦いにおいてはなおさらだ。ホーム側の有利は顕著になる。

 ドイツがポルトガルに4-2で打ち勝った一戦はやはりミュンヘンで行なわれたが、ドイツにホームの利を感じずにはいられない試合だった。

 ポルトガルは試合当初から、まさにアウェー戦を戦うかのような守備的な戦いを強いられた。必要以上に引いて構える入り方をしてしまったのだ。それは、ドイツの両ウイングバック、ロビン・ゴセンス(左/アタランタ)、ヨシュア・キミッヒ(右/バイエルン)の位置取りに現れていた。

 ポルトガルは、両サイドで、数的有利な状況にあったにもかかわらず、相手の両ウイングバックに高い位置を取られた。両サイドバック(SB)と両ウイングが、高い位置を取って、その攻め上がりを牽制することができなかった。初戦でハンガリーに3-0の勝利を収めた余裕が、そうさせた可能性も高いが、それ以上に、アウェーの意識に基づく、攻撃的精神の低さが大きかったと見る。

 今回のユーロは通常とは異なる分散開催で、以下の11都市を舞台に行なわれている。

 アムステルダム(オランダ)、バクー(アゼルバイジャン)、ブカレスト(ルーマニア)、ブダペスト(ハンガリー)、コペンハーゲン(デンマーク)、グラスゴー(スコットランド)、ロンドン(イングランド)、ミュンヘン(ドイツ)、ローマ(イタリア)、サンクトペテルブルグ(ロシア)、セビージャ(スペイン)。

 オランダ、デンマーク、イングランド、ドイツ、イタリア、スペインの6チームは、グループリーグの3試合すべてがホーム戦となる。試合間隔は3日ながら、このコロナ禍だ。移動せずに地元で3試合を戦うことができるメリットは計り知れない。イタリア、オランダがすでにベスト16入りを決めていることと、それは密接な関係がある。

 イングランドが、ブックメーカー各社がフランスに次いで優勝候補の2番手に推されている理由も、準決勝以降の3試合がウェンブリーで行なわれることと関係が深い。

 グループリーグ最終戦。一番の注目は、やはりF組のポルトガル対フランス(ブダペスト)だ。前回の2016年フランス大会決勝の再戦である。この時はクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)が前半の途中、故障で離脱。完全アウェーのポルトガルは、絶体絶命のピンチに襲われたにもかかわらず、延長戦の末、優勝を飾った。

 その背景にあったのが、フェルナンド・サントス監督のメンバーをやりくりする力だった。決勝戦に至るまでの6試合を通して、多くの選手を様々なポジションで起用してきた。「全員サッカー」が結実した格好だった。

 グループリーグは3戦3分け。ポルトガルは、グループリーグで3位だった6チーム中で3番目の成績だった。すなわち、24チーム中15番目の成績でベスト16に進出した。ギリギリの通過だったにもかかわらず優勝した。苦戦している間に、その一方で全員サッカーの態勢を着々と整えていた。

 今回はどうなのか。選手は前回より粒ぞろいだ。ポルトガルの選手層はさらに厚くなっている。24チーム中、一番といっていいかもしれない。ドイツ戦では、交代で入ったレナト・サンチェス(リール)が、可能性のあるプレーを見せていた。

 対するフランスも、準優勝に泣いた前回から、戦力をアップさせている。主力として活躍したアントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ)に、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、カリム・ベンゼマ(レアル・マドリード)を加えたFW3人の力は抜群だ。交代で入るウスマン・デンベレ(バルセロナ)も、ハイレベルのウイングとして知られる。

 最終的にはドイツ、フランス、ポルトガルが揃ってベスト16入りするだろうと予想するが、繰り返すが、注目は順位ではなく、その後の4試合に向けた可能性だ。メンバー交代5人制で行なわれていることも加味すれば、使える駒が多いチームほど、後半の戦いは楽になる。

 固定メンバーで最初から飛ばしているチームは、決勝トーナメントに入ると息切れする。スロースターター優位と言ってもいい。グループリーグ3位のチームの中で、4チームにベスト16入りのチャンスがあるというレギュレーションが、W杯などとの最大の相違点になる。

 たとえばスペインなど、現在、エンジンが暖まっていないように見えるチームにも可能性は十分あると考えられるのが、現行のユーロなのだ。

 ちなみに、強いかどうかはともかく、面白い存在に見えるのが、現在C組でオランダに次いで2位につけているウクライナだ。

 中心選手のルスラン・マリノフスキー(アタランタ)がなにより面白い。魅せるサッカーをする。ドリブルよし。ショートパスよし。視野の広さも兼ね備えた左利きだ。さらに、その脇で構えるMFオレクサンドル・ジンチェンコ(マンチェスター・シティ)、右ウイングのアンドリー・ヤルモネンコ(ウエストハム)、左SBのヴィタリー・ミコレンコ(ディナモ・キエフ)、CBのミコラ・マトビエンコ(シャフタール)も左利きだ。

 左利きの割合は約1割強だと言われる中で、ウクライナは、フィールドプレーヤーのスタメン候補10人中、その半分に当たる5人が左利きという珍しいチームだ。その影響だろうか、少々変わった雰囲気がある。相手をいなすサッカーと言うか、アンドリー・シェフチェンコ現監督が現役だった頃の、スピード豊かな直線的サッカーとは一線を画す、技巧的なスタイルだ。

 本大会出場国が16チームから24チームに増大した前回は、力の落ちるチームがいくつか存在したが、今回はそれがない。24チームの実力が僅差のため、好試合、接戦の連続だ。目が離せない。

 日本はこの中に入ったら、どれほどやれるだろうか。日本人選手で十分通じそうな選手はどれほどいるだろうか。そんな可能性を探りながら、目を凝らしたいものである。