ニュージーランド勢で前年度王者のハリケーンズが、サンウルブズの防御を攻略したか。SHのTJ・ペレナラ ゲーム主将が慎重に話す。「個々がいい対応をし、スペースを見つけ、スピードをつけて攻めた」 日本から参戦し昨季わずか1勝のホームチームは、…

 ニュージーランド勢で前年度王者のハリケーンズが、サンウルブズの防御を攻略したか。SHのTJ・ペレナラ ゲーム主将が慎重に話す。

「個々がいい対応をし、スペースを見つけ、スピードをつけて攻めた」

 日本から参戦し昨季わずか1勝のホームチームは、大外から接点方向へ網を被せる防御を遂行。キックオフ直後はその流れで枠組みがはまるも、次第にその網の裏へ球を通され始める。タッチライン際で、中鶴隆彰、福岡堅樹の両WTBが取り残され、しばし大柄な対面に気圧された。

 前半5分、ハリケーンズのSHペレナラ ゲーム主将、FBジョーディー・バレットは敵陣の相手ボールスクラムから右端を崩す。間もなく左の空洞をWTBジュリアン・サヴェアが突き、自身より19キロ軽い中鶴の追撃タックルを弾く。次いでSHペレナラのキックがサンウルブズの背後をえぐり、CTBンガニ・ラウマペ、FLアーディー・サヴェアとつないで先制した。0-7。

 20分、敵陣中盤右のラインアウトから左大外の空間へ展開する。以後はタックルを背負ってパスを継ぎ、SHペレナラ ゲーム主将がトライ。0-31。
 
 前半34分から登場のFL金正奎は、防御に関し「待ったら、行かれる。とにかく自信を持って前へ」。相手の巧みな継続を断つには、飛び出しをより鋭くしたいと言った。

 前主将のHO堀江翔太は続ける。

「(戦術理解の深まりは)あるけど、詳細を詰めないと。個々が勝手にやっている部分もあるかも…」

 敗者は前向きでもあった。

 背景には、終盤の交代選手の躍動があった。

 後半29分、敵陣ゴール前。10分前に登場のSH茂野海人が軽快にさばき、やはり中盤戦から現れたCTB山中亮平が「ムーブ上はミス(予定外)で僕にボールが来たけど、強気で」。向こうの壁を裂く。結局10-83と迫ったFL金は、「そこまでの過程がよかった」。結局、残り11分で12点をもぎ取った。

 2月初旬の始動後に故障者が続いたサンウルブズは、この日のメンバー中10名が初陣。悲観の色が少ない傾向は、こことも関係していた。

 田邉淳アタックコーチは、状況に応じ攻撃方向の修正ができなかったかと問われ、こう返す。

「18日間の準備で(若手に柔軟さを求めるのは)難しいと思います。むしろ十二分にチャンスを作れた」

 来季以降はより長い準備期間が求められるが、このゲームは本拠地での開幕節でもある。より明確に相手へ噛みつくのがベターでもあった。酷だがそれも現実だった。

 例えば、先取点を許した5分後に0-19とされた試合序盤。早めの選手交代があきらめぬメッセージになりえたが、控えの半数は終盤までベンチにいた。フィロ・ティアティア ヘッドコーチは「交代に関してはハッピー」。勝負への厳しさと健闘する先発陣への愛。この両者のバランスを取る難しさがにじんだのみだ。

 3月4日、準ホームのシンガポールでキングズを迎える。田邉コーチは「(会場の気温が)9度から約30度…。有効に使いたい」。早くも具体策を匂わせたのは、何より明るい材料だった。(文:向 風見也)