今年新しく誕生したサイクルロードレースの新リーグ「三菱地所JCLロードレースツアー2021」。栃木県真岡市で開催された初戦の翌日、3月28日に同県内の宇都宮市清原工業団地内の特設コースを舞台に第2戦となる「カンセキ宇都宮清原クリテリウム」が…

今年新しく誕生したサイクルロードレースの新リーグ「三菱地所JCLロードレースツアー2021」。栃木県真岡市で開催された初戦の翌日、3月28日に同県内の宇都宮市清原工業団地内の特設コースを舞台に第2戦となる「カンセキ宇都宮清原クリテリウム」が開催された。

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クリテリウムとは、小周回のコースで開催されるレースのこと。今回のコースはT字型に設定され、1周の距離は2.3km。だが、この小周回の中に、直角コーナーが2箇所、180 度コーナーは3箇所含まれている。観戦客にとっては、走る選手を何回も見られ、さらに減速を強いられるコーナーはシャッターチャンスでもあるので、楽しめるコースなのだが、選手にとっては、コーナーごとに減速と加速を強いられ、しかもそれがかなり頻繁に現れることになる。平坦でありながらも、神経を使い、再加速のダメージがじわじわと脚に来る「たやすくはない」コースという印象を持つ選手は少なくないだろう。



出走サインをするリーダージャージ姿の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

この日のレースは 23 周回= 計50.6kmの設定で競われるが、トータルのコーナー数は100以上。このツアーでは、1レースの出走選手数は54人に絞られてはいるが、このコーナーの多いコースをいかに走るかが、大きな鍵を握ることになりそうだ。
このコースを使用したレースは過去に何回も開催されており、多くの出店ブースが並び、各地から観客が訪れ、にぎわう光景が定番だった。しかし、今年も新型コロナウィルス感染拡大防止のため、観戦の自粛が要請されており、歓声のない会場でレースが開催されることになった。



スタートラインに並ぶ選手たち。雨と風が激しくなり、波乱を予想させた



無観客ではあるが、地元の子供たちのチアリーディングがスタートを盛り上げた

朝から降っていた雨だけでなく、風も強まり、スタートを迎える頃には、嵐のような状況に。だが、宇都宮を本拠地とし、特にこのレースには絶対的な強さを誇ってきた宇都宮ブリッツェンは最前列に並び、強い闘志を見せる。個人総合首位を示す黄色いリーダージャージを着るのは増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。今年も、ブリッツェンのレースになるのだろうか。
悪天候下の難しいコースでありながらも、選手たちのモチベーションは高かった。距離の短いクリテリウムであり、強力なスプリンターを有するチームはゴール勝負へ持ち込めば有利だが、スプリント勝負に分がないチームは、レースを揺さぶり、人数を絞り込んで少人数での勝負に持ち込まなければ勝機がない。厳しい展開に持ち込みたいチームが、攻撃を繰り返し、レースはスタートからトップスピードに。



180度コーナーを慎重に回る選手たち

だが、3周目のコーナーで複数の選手がダメージを負う落車(転倒)が発生。有力視されていたスプリンター黒枝士揮(スパークルおおいたレーシングチーム)がダメージを負ってしまう。同チーム キャプテンの黒枝咲哉(スパークルおおいたレーシングチーム)も序盤でリタイヤし、多くのスプリンターを抱えるスパークルおおいたは強力な優勝候補だったが、一気に形勢が厳しくなってしまった。
レースは、有利な展開に持ち込むべく攻撃を繰り返すチームと、スプリントに持ち込むべく、攻撃をつぶしていくチームの攻防戦で膠着し、なかなか新しい展開が生まれない。



鈴木龍(レバンテフジ静岡、山本元喜・大喜兄弟(キナンサイクリングチーム)の逃げが決まる

ようやく9周目になって、スプリンター鈴木龍(レバンテフジ静岡)のアタックが決まり、ここに元全日本チャンピオンである山本元喜とアジア選手権(U23)で優勝経験を持つ弟の大喜(キナンサイクリングチーム)が合流した。強力なメンバーにこのまま行くかと思いきや、小坂光(宇都宮ブリッツェン)、宇賀隆貴(チーム右京相模原)がすかさずここに待ったをかけた。メイン集団を待ちたい小坂が入り込んだために、集団は協調できず、ペースが上がらない。



先行していた3名に小坂光(宇都宮ブリッツェン)、宇賀隆貴(チーム右京相模原)らが合流、足並みが揃わなくなる



メイン集団は増田を先頭にペースアップ、先行する集団を飲み込んだ

増田らがひくメイン集団がペースアップし、この逃げを飲み込んむ。そして11周目、レースは振り出しに戻った。

その後も集団スプリントに持ち込まず、展開を作りたいチームが激しい攻撃を続けるが、アタックを潰したいブリッツェンの動きもあり、なかなか逃げ集団が生まれない。



果敢に攻撃を仕掛けるマイヨエスポワール(新人賞)を着る本多晴飛(VC福岡)

レースは残り3周を迎え、集団スプリントでの決着という可能性が濃厚になり、全チームがスプリント勝負への体制を固め、集団内の位置取り争いが激しくなっていった。ここまで攻撃を仕掛けてきたキナンもスプリントに切り替え、トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)が集団先頭に立ち、スピードを上げる動きを見せる。



落車(転倒)発生。巻き込まれた選手らは大幅なタイムロスを強いられることになった

だが最終周回に入る手前のコーナーで再び落車が発生。中盤に逃げを作る動きを仕掛けたスプリンター鈴木龍や、沢田佳太郎(スパークルおおいたレーシングチーム)が巻き込まれ、遅れを取り、勝機を逃すことになってしまう。
勝負の最終周回。このレースを全力で取りにかかる宇都宮ブリッツェンが前方を固め始めた。このコースを用いたレースを3連覇しており、今日の最有力候補である小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)を従え、先頭を走る。
リーダージャージを着る増田が小野寺を強力に牽引し、西村大輝(宇都宮ブリッツェン)がその後を受け、さらに加速し、小野寺をひき、最終コーナーを先頭で回った。



このコースに圧倒的な強さを見せる小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が今回も勝利をもぎ取った

ここから小野寺は全身全霊をかけたロングスプリントを繰り出し、そのままフィニッシュラインに飛び込み、このコースで開催されるクリテリウム(このJCLロードレースツアーのレースとしては初の王者)の4連覇を勝ち取った。
2位には優勝候補だったチームメイトをトラブルで失いつつも、最後のスプリントにこぎつけた孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)が、3位には畑中勇介(キナンサイクリングチーム)が入った。



上位3名の表彰台。このコースでのクリテリウムの4連覇を決めた小野寺は満面の笑み



チーム全体で2連勝を叶えた宇都宮ブリッツェン

小野寺は表彰台で、このコースでのレースを連勝できている喜びを語った。逃げが生まれない状況を見て、最後の展開に集中してレースを走ったのだという。最後の局面に関しては不安もあったが「(チームメイトが)自然と自分の周りに集まって、引きあげてくれた」という。「安心感を持って最後のスプリントに行かれた」とレースを振り返った。



マイヨプリエは増田が守り、マイヨラファールは小野寺へ。マイヨエスポワールはこの日も果敢に戦った本多がキープした

リーダージャージは、個人総合リーダーは増田が守り、マイヨラファール(スプリント賞)は優勝した小野寺へ。マイヨエスポワール(新人賞)はこの日も積極的な動きを見せ、最終的にも10位に入った本多が守った。

新しく誕生したツアーとして、最初の連戦を終えた。無観客レースとしての開催になったことは残念ではあったが、迫力あるライブ配信は非常に好評で、次戦を待ち望む声が大きかったように感じる。

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【結果】カンセキ宇都宮清原クリテリウム 50.6 km

1位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)1時間09分54秒
2位/孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)+0秒
3位/畑中勇介(キナンサイクリングチーム)+0秒
4位/新城雄大(キナンサイクリングチーム)+0分01秒
5位/小山智也(チーム右京 相模原)+0分01秒

☆JCL 各賞リーダージャージ表彰☆

【マイヨプリエ(個人ランキングトップ)】
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

【マイヨラファール(スプリント賞)】
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

【マイヨエスポワール(新人賞)】
本多晴飛(VC 福岡)

画像提供:JCL ロードレースツアー(株式会社ジャパンサイクルリーグ)
リンク:三菱地所 JCL ロードレースツアー2021公式サイト