19日間で9連戦。2021年5月28日から6月15日にかけ、男女A代表、U-24代表合わせ、サッカー日本代表は怒涛の日…

19日間で9連戦。2021年5月28日から6月15日にかけ、男女A代表、U-24代表合わせ、サッカー日本代表は怒涛の日程となった。五輪最終選考のための対ジャマイカ戦、ピクシーの愛称で知られたドラガン・ストイコビッチ監督率いるセルビアとのA代表親善試合、そしてなでしこ……大住良之、後藤健生のサッカージャーナリスト2人が徹底的に語り合う!

■なでしこ「代表は組みっぱなしで試合するべき」

―なでしこジャパンについて聞かせてください。(※対談終了後の13日になでしこジャパンはメキシコ代表と対戦。5−1で勝利した)

大住「なでしこは大変だよね。4月にあった試合も、2試合とも7-0だったでしょ。そして、ウクライナにはが8-0。男子のように強いチームが多くないから、マッチメイクは難しいだろうけど、それでもやっぱり監督としては頭を抱えちゃうよね。もう少し、骨のある相手と戦わないと、選手の力も分からない」

―アマチュアではなく、プロとマッチアップしたいですね?

大住「たしかにウクライナはアマチュアか。まあ、プロかどうかというよりも、なにしろワールドカップの上位に行くようなチームと対戦しないと」

後藤「それに女子の場合は、日本国内のリーグ戦がなくなったから、いわゆる実戦の場が全然ないんだよね」

大住「プレシーズンマッチだけだよね」

後藤「この間、ベレーザ(日テレ。東京ヴェルディベレーザ)のプレシーズンマッチを見に行ったけど、完全にプレシーズンマッチだった。他のチームは一生懸命やっているところもあるかもしれないけど、ベレーザに関しては完全にプレシーズンマッチだった。あれは実戦じゃないよ」

大住「どんどん選手を代えちゃう?」

後藤「そう。だから、今からこんなことを言ってもしょうがないんだけど、リーグ戦がないのなら、代表を組みっぱなしで強化をすればよかったんだよ。対戦相手は男子のチームでも良いわけじゃない?そうすれば、丁度いい強さの相手はいくらでもいるよ」

大住「そうだよね。リーグ戦がないのなら、そうやって試合を組んじゃって良いよね。外国チームにいる選手がどうできるかは分からないけど」

後藤「そこは仕方ないけどさ、現状で使える選手を集めてさ。世界最強のアメリカなんかは、そうやってやるじゃない?国際試合で弱い相手とやって、それで試合のたんびに少しずつ何かを変えているようじゃあ、全体としてその方向に進むべきかが見えてこない」

■「目先の勝利より長期育成を考えて欲しい」

―佐々木則夫監督の時に、アメリカにわたって試合を行うのは良かったですね?

後藤「今年のシービリーブスカップにも行こうとしたけど、行けなくなっちゃったじゃん」

大住「去年はそこで3連敗したんだよね」

後藤「それで、今年も行こうと思っていたのがなくなっちゃって。ならば代表を組みっぱなしにしてWEリーグ選抜と対戦したって良いわけじゃない。男子の高校生と対戦しても良いし。12日の試合の後高速バスで東京に帰ってきたんだけど、掛川からラグビーのファンがいっぱい乗ってきた。代表対サンウルヴス(事実上のトップリーグ選抜)の強化試合がエコパであったんですよ」

大住「大学生でも良いよね。今は難しいのかな」

後藤「女子の場合、自分たちより少し強いチームを探すのならば、男子チームを探せばいくらでもいるんだからさ」

―女子サッカーの強さは、高校サッカーの強豪クラスと同等くらいと考えればいいですか?

大住「強豪はどうかな……ただ、たとえば流通経済大学の2軍だろうが1軍だろうが、とにかく対戦して、それで3-0で負けてもいいんだよ。スピードとか、カットされないためにはどういうふうなパスが必要か、パスをどういうふうに受けるのか。そういった面を、試合の中でしっかりと探っていかないといけないんだから。本当に後藤さんが言うように、代表チームを長期スパンで考えて組んで、オリンピックまで時間を取らなければいけないよね」

後藤「せっかくリーグ戦がないのに、それを利用しない手はないよ」

―そういったアクションはあるんですか?

後藤「ないよ。女子のほうは、強化がちゃんと進んでいない」

大住「でも、オリンピックの成功がなければ、WEリーグでの成功もないんだから。そこは。もっとちゃんとしないと」

後藤「それに女子のワールドカップの招致にもに失敗したんだから、オリンピックで活躍するしかないんだよ」

―うまくいっていないですね?

後藤「うまくいっていない」

大住「WEリーグのクラブも、プロの興行を始めるにあたって、看板選手がずっといないというのは困る、という事態になっちゃっているのかな」

後藤「日本の代表クラスが海外にどんどん行ってるじゃない。あのリーグを成功させるためには、逆にJリーグ発足時のジーコやリネカーのように海外のトップクラスを加入させなければいけないのに、むしろ流出している。それで代表チームもうまくいっていない」

■「長谷川はイタリアに行って雑になっちゃったかも」

―試合のほうは、いかがでしたか?テレビ中継では塩越柚歩が目に止まりましたが。

後藤「ダイナミックでしょ?」

大住「なんか変わっているよね?」

後藤「浦和レッズレディースのサッカーっていうのは、ああいう感じだよ。すごいダイナミックなの」

大住「メニーナ、ベレーザからは出ないタイプの選手だよね」

後藤「そうそう。森栄次監督が浦和で作っているのは、ああいうタイプを集めたもの。わりに大きさもあるし。たとえば右サイドバックの清家貴子の突進なんてすごいよ」

―塩越がいて、菅澤優衣香がいて。この2人は浦和ですね。一方で、長谷川唯があまり目立っていませんでしたが。

大住「長谷川はイタリアに行って、ちょっと雑になった感じがするよね。僕はよく、雑という言葉を使うんだけど。日テレ・ベレーザにいた時は、もっとパスの精度や、タイミングにこだわりを持っていたような感じがしたんだけど、今は関係なしにやっている感じがするんだよね」

後藤「代表のエースだったからね。上手いことは上手い」

大住「そう。たしかに上手いんだけど、左前には出られないし、内側に入っていくだけ。内側に入っていって、もう捕まっちゃう。ウクライナ戦は、そんな感じになっていたよね」

ACミランに行って、まだ半年ですよね?それで下手になるとは……

大住「下手に、というより、どういうサッカーをしているかは知らないけど、前の良さが消えているのは感じたね。もっとチーム攻撃を引っ張っていって、彼女にボールが渡るたびに流れがスムーズになっていく選手だった。ペナルティエリアに入っても決定的な仕事ができる、点も取れる。19年のワ-ルドカップのオランダ戦のゴールは素晴らしかったしね。小さいけどスピードがあって、大きい選手に激しく詰められても、ちゃんと切り抜けられるものがあるはずなんだけど。ちょっとな……」

■「菅澤に次ぐ若い人が出て欲しいな」

後藤「よかったのはボランチだよね。三浦成美、中島依美」

大住「あれはもうガチだね」

後藤「あそこは今の代表の強み」

大住「中島がボランチになって本当に良くなった」

後藤「そういう部分部分は確実に良くなっているんだけど、チーム全体として上手くなっているかは別問題で。まあ、10日の試合はベストメンバーではなかったけどね」

大住「宝田沙織のセンターバックは良かったよね?メキシコ戦では、南萌華が出てくるのかな?」

―守備の不安はありませんか?

大住「ない。中島も三浦も、ポジショニングは良いし」

後藤「相手がウクライナじゃ守備をすることがないよ」

大住「必要なところに動くタイミング、ポジショニングが速いよね。だから、穴にはならない。パスもサイドにしっかりと振るし、三浦なんて、すごく良いパスを出すしね」

―菅澤も安定していますしね。

後藤「だけど、菅澤はシュートを打たなかったね」

大住「あれでいいのかな、とは思うけど、あれだと少し厳しいよね」

後藤「菅澤にシュートを打たないように指示しているんですか、と質問しようかと思ったけど、喧嘩を売ってもしょうがないから思いとどまったよ」

大住「ははは。トップは菅澤しかいないからね、誰か若い人が出てこないかな。スピードがないんだよね、抜けたように見えても追いつかれる、裏を取ったように見えてもシュートまで持っていけない。特にヨーロッパのスペインとかとやるとさ。そこを抜けたらシュートまで行ける選手でないと世界大会はきついよね。ならば田中美南か、というと、田中も伸び悩んでいるし」

後藤「田中も、もうちょっと使い方を考えて、なんとかならないのかな、と僕はずっと思っているんだよね。使ってくれないでしょ?」

―センターフォワードで、ということですね?

後藤「この間の国立でやった試合なんか、出てきたと思ったらサイドだったからね」

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