2試合トータルで、最高の日本代表デビューと評していいだろう。 6月11日、オナイウ阿道はセルビアとの親善試合に後半開始…
2試合トータルで、最高の日本代表デビューと評していいだろう。
6月11日、オナイウ阿道はセルビアとの親善試合に後半開始から途中出場し、日本代表初出場を果たした。大迫勇也の負傷離脱による追加招集だったが、すぐに出場機会はやってきた。
がむしゃらに走り回ってボールを欲しがるというより、最小限の動きでタイミングよくマークを外し、パスを引き出す。そんな巧みなプレーが目についた。
64分には(映像を見直すとオンサイドに見える)オフサイドの判定で取り消されたものの、伊東純也の抜け出しに合わせてゴール前に走り込み、"幻の"デビュー戦ゴールも決めている。
大迫以外にめぼしい人材が見当たらなかった1トップ候補に、25歳の新星が名乗りを上げた45分間だった。

追加招集できっちり結果を残したオナイウ阿道
そして迎えた、4日後のワールドカップ2次予選、キルギス戦。オナイウは早くも先発メンバーに名を連ねた。2戦連続出場、しかも初先発。それは彼が自らの力でつかみ取ったものだと言っていい。
試合序盤は、いくぶんやる気が空回りしている感がないわけではなかった。ゴール前に入るも、なかなかパスやクロスのタイミングが合わず、フリーで打ったシュートも大きく枠を外れる。そんなシーンが続いた。
だが、27分、自らが得たPKを確実に決め、先制点となる自身代表初ゴールを決めると、ハットトリック達成まではあっという間だった。
31分に右からのクロスを左足で、33分に左からのクロスを頭で、ストライカーらしくいずれもワンタッチで仕留めた。わずか7分間の出来事だった。
ゴール以外にも見どころは多かった。とりわけストライカーらしい雰囲気が漂ったのは、43分のシュートシーンだ。
左サイドの小川諒也から斜めに入ってくるパスを、オナイウは少し下がりながら受けると、トラップから振り向きざまに右足を振り抜いた。
シュート自体は不正確で得点にはならなかったが、動き出しからシュートまでの一連のプレーは流麗、かつ豪胆なものだった。
「個人としてゴールや結果、数字は出せたと思うが、攻撃の起点になるような、スイッチを入れたボールに反応できる回数を増やせたらなと思う」
ハットトリック達成の試合を、そう振り返ったオナイウ。追加招集からわずか2試合に出場しただけとはいえ、今回の日本代表の活動のなかで大きく評価を高めた選手のひとりであることは間違いない。
「かなり選手を変えながら試合をしたが、より多くの選手にチームコンセプトを理解してもらい、誰が出てもチーム力を落とさずに戦える」
森保一監督がそう振り返ったように、5月28日のミャンマー戦からスタートした今回の日本代表の活動で目立ったのは、オナイウをはじめとする新戦力の台頭である。
森保監督就任後では初招集となった谷口彰悟は、セルビア戦で出色の働きを見せ、3月の韓国戦でデビューしたばかりの山根視来に至っては、すでに周囲との連係を自らリードするかのような堂々たるプレーぶりだ。
彼らがただちにレギュラー格の選手を脅かすまでにはなれなくとも、森保監督の言葉を借りれば、「選手層を厚くしながら、チームコンセプトのベースのレベルアップはできてきている。そこにおいては確実に前進できている」。しかも、そうしたチームの底上げが、国内組の力によってなされていることは頼もしく、心強い。
そこには当然、指揮官の姿勢も大きく影響している。昌子源が「僕が最初に(日本代表に)呼んでもらってデビューするまでに、確か2年か、3年かかった」と振り返り、「当時、僕の実力がなかったというのもあるが」とつけ加えたうえで、「森保監督(に呼ばれた選手)は初選出初出場があったりして、うらやましい」と語っているとおりだ。
なかでも、今回台頭してきた新戦力に共通するのは、プレーの質や強度が高いチームに所属しているということだ。オナイウの横浜F・マリノスにしても、谷口、山根の川崎フロンターレにしても、それに当てはまる。
J1連覇へ独走を続ける川崎は言うまでもないが、一昨季J1王者の横浜FMもまた、非常に高いレベルで連動した攻守を繰り返しているチームだ。オナイウの細かな、それでいて質の高い動きを見ていると、日常的に高い要求のなかでプレーしていることをうかがわせる。
少し時間をさかのぼれば、オナイウからそんな"巧みさ"は感じられなかった。U-23代表をはじめ、年代別代表に選ばれていた頃も、プレーはもっと大味で、身体能力の高さを生かしたスピードやパワーが持ち味だった。
実際、2017年、ジェフユナイテッド千葉から浦和レッズへ移籍した時は、当時のペトロヴィッチ監督が志向するサッカーに対応できず、かなり苦しんでいた。開幕前のキャンプ中から明らかに戸惑う様子が見られ、結局適応することができないまま、リーグ戦出場はわずか1試合でシーズンを終えている。
だが、今のオナイウに、当時の"粗さ"は見られない。
コンパクトな布陣で攻守が連動したサッカーを志向する横浜FMでは必然、ボールを奪い取る強度が求められると同時に、狭い局面でも正確にボールをコントロールする技術も求められる。
そんななかでも、オナイウは巧みにボールを収め、時に味方を生かし、時に自らシュートまで持ち込み、センターフォワードとしての役割を果たしている。日常的にプレーする環境が、より早い判断や、より正確な技術を彼に身につけさせていることは、想像に難くない。
Jリーグでも質の高いサッカーを実践できるチームが増え、その成果が日本代表の戦力底上げにつながる。こうした循環がさらに活発になれば、Jリーグのレベルアップはもちろん、日本代表の強化にとっても理想的だ。
次に日本代表に新戦力を送り込むのは、サガン鳥栖、あるいは浦和レッズあたりかもしれない。