ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)の第2ステージは5月29日、今年初となる相模原で開かれた。※富士山ステージのレポートはこちら宮ヶ瀬湖畔に設定された周回コース平らな箇所がなく、ギザギザばかりのコースプロフィール。キツいアップダウンが続くスター…

ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)の第2ステージは5月29日、今年初となる相模原で開かれた。

※富士山ステージのレポートはこちら




宮ヶ瀬湖畔に設定された周回コース



平らな箇所がなく、ギザギザばかりのコースプロフィール。キツいアップダウンが続く

スタートは橋本公園。パレード走行を経て、東京五輪の個人ロードレースコースに合流、宮ヶ瀬湖畔に設定された13.8kmの周回を7周する108.5kmのコース。周回はほぼアップダウンのみで構成されており、獲得標高は1728mにも達する。この日で総合順位は決まると予想されており、展開を考えれば、非常にタフなステージになることが予想された。



レース前にウォーミングアップする選手たち



この地域にありサイクリストに圧倒的人気の「オギノパン」の人気商品「あげパン」が描かれたタイム表示ボード

スタートラインには各賞のリーダージャージが並ぶ。個人総合リーダーのグリーンジャージは第1ステージを制した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、赤い山岳賞ジャージは、昨日2位のトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)が繰り上げで着用し、ブルーのポイント賞ジャージは草場啓吾(愛三⼯業レーシングチーム)が、ホワイトの新人賞ジャージは留目夕陽(日本ナショナルチーム)だ。



4部門のリーダージャージ



相模原を拠点とするチーム右京相模原が最前列に並んだ

このステージをホームとするチーム右京 相模原のメンバーを最前列に、パレード走行が始まった。



スタート。まずはパレード走行だ



小倉橋を渡り、レースが始まる

スタート後、早々に16名の逃げが形成される。この中に唯一、那須ブラーゼンが谷順成、佐藤宇志、渡邊翔太郎(以上、那須ブラーゼン)の3名を送り込んだ。2名を送りこんでいるのは、3チーム。メンバーは前日、2位、3位を占めたキナンサイクリングチームの畑中勇介、山本元喜(以上、キナンサイクリングチーム)、ホームチームであるチーム右京相模原の小石祐馬、横塚浩平(チーム右京)、マトリックスパワータグのホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア、安原大喜(マトリックスパワータグ)だ。
1名ずつ入ったのは、リーダーチームの小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)、日本チャンピオンジャージの入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、MTBを主戦場に戦う沢田時(チーム・ブリヂストンサイクリング)、さらに寺澤アンドリュウ(チームユーラシア・IRCタイヤ)、仮屋和駿(日本大学)、昨日も健闘した小出樹(京都産業大学)、平井光介(日本ナショナルチーム)と若手選手もこの中に入り込んでいる。
この集団の中で、個人総合順位で良い位置につけているのは、7位の谷(2分51秒差)、8位の小石(2分57秒差)。ここに多くのチームが選手を送り込んでおり、力のある選手も多く含まれている。タイム差をつけて逃げ切れば、個人総合をひっくり返す可能性も否めない。増田を擁する宇都宮ブリッツェンにとっては気の抜けない展開になった。



16名の逃げ集団が形成された



集団には力のある選手も含まれている



メイン集団に残った個人総合1、2位の増田(宇都宮ブリッツェン)、トマ(キナンサイクリングチーム)

第2ステージにはスプリントポイント、山岳ポイントが3回ずつ設定されている。最終ステージには山岳の設定がないため、山岳賞ジャージの行方はこのステージの結果で決定することになる。
スプリントポイントは渡邊が先頭通過、最初の山岳賞ポイントは、小野寺、小出、沢田の順に通過。



リーダー増田を守りながら、集団のコントロールをするブリッツェン

メイン集団とのタイムギャップは3分まで開いた。このままゴールした場合、集団内の増田は首位を失うことになる。バーチャルリーダー(この状態のままレースが終了した場合のトップ選手)は集団内最高位の谷(2分51秒差)だ。
先頭16名への合流を目指して天野壮悠(日本ナショナルチーム)と小村 悠樹(チームユーラシア・IRCタイヤ)がメイン集団から飛び出した。
先頭に1名しか送り込んでいない宇都宮ブリッツェンにはメイン集団のコントロールをする大きなモチベーションがあるが、増田の温存を考えると、集団を引き上げるメンバーは3名しかおらず、負担の大きい状況に。ブリッツェンは集団のペースアップのために小野寺をメイン集団に呼び戻した。追走2名は吸収され、15名になった先頭とメイン集団の構図に戻る。



スプリントポイントが設定されたオギノパン前を通過



タイム差は4分を超えた



先頭集団の逃げ切りも濃厚になってきた。ペースを上げる選手たち

だが、小野寺が集団に戻る頃、集団とのタイム差は4分まで開いていた。
2回目の山岳賞は、ホセ、横塚、渡邊の順に通過。
4周目に入る頃には、タイム差は5分46秒まで開き、先頭集団の逃げ切りの可能性がかなり濃厚になってきた。さらには、このタイム差のままでは上位選手が入れ替わってしまう。



集団内の動きも盛んになってきた



入部(弱虫ペダルサイクリングチーム)がアタックし、平井(日本ナショナルチーム)が追随

5周目に入り、入部が単独アタック。振り返ることなく、全力でペダルを踏んでく。ここに平井が食らいついた。



補給するサポートスタッフにも力が入る

2名はしばらく先行したが、先頭集団は落ち着いて、ほどなく2名を捉え、レースは仕切り直しに。
だが、この動きで横塚、佐藤、渡邊、寺澤の4名が遅れ、先頭集団は11名に絞り込まれた。残すは2周。バーチャルリーダーである谷、次点の小石はここまでにチームメイトを失い、単独での戦いが必要な状況になっていた。
先頭集団から勝者が出ることは、ほぼ確実なものとなり、動きも盛んになってくる。
同時に、メイン集団に残された上位選手の順位を守りたいチームは、先頭集団にいる谷、小石選手との差を1秒でも縮めねばならない。



小石(チーム右京相模原)がアタック



先行する小石を追う追走集団

最終周回を前に、小石がアタック。単独で先頭を行く小石を、小出、仮屋、ホセ、山本元喜が追う。

先頭集団は、集団内の駆け引きや牽制でペースダウンし、メイン集団からの渾身の引き上げもあり、タイム差は3分強まで縮まっていた。谷との差が2分51秒以内、小石との差が2分57秒以内に収まれば、増田はリーダーを守ることができる。



小出(京都産業大)、仮屋(日本大学)、山本(キナンサイクリングチーム)らが小石を追う。若手の健闘も今大会の特徴だった

軽快な走りの小石には余裕があるかと思われたが、ラスト5km、追走から抜け出した山本が仕掛け、ホセとともに小石を捉えた。増田とのタイム差を開くほど、個人総合でジャンプアップを望める小石は1秒でも差を詰めるべくスピードアップに全力を賭け、ひた走る。個人総合、ステージ優勝、さまざまな思いが交錯する。小出、仮屋が追いつき、先頭は5名に。



全力でゴールを目指す小石



小石を捉え、5名となった先頭集団

全力で走ってきた小石が脱落、ステージ優勝争いは4名の戦いに。



ゴール勝負に向かう先頭集団



3名のスプリント勝負に



フェンス際から差し込み、勝利したホセ。山本の走行ルートについて、不満をぶつけていた

スプリント勝負に挑んだのはホセ、山本、仮屋の3名。先行したかに見えた山本を見事に交わし、フェンス際からねじ込んだホセが、僅差でステージ優勝をもぎ取った。(審議の結果、山本の走路妨害があったとし、降格となり、仮屋が繰り上げで2位になった)
すべてを個人総合のジャンプアップに賭けた小石は4位でフィニッシュ。だが、増田らは驚異の追い上げで、先頭との差を1分35秒まで縮めており、グリーンジャージを守り抜いていた。同集団で、2位のトマ・ルバ、3位の山本大喜(ともにキナンサイクリングチーム)もフィニッシュしており、個人総合上位3名の順位、タイム差に変動は生じなかった。逆転が期待された谷は1分06秒遅れでフィニッシュ、小石は1分31秒差の5位まで順位を上げる結果になった。



個人総合1、2位の増田、トマは見事にタイム差を縮め、上位の順位やタイム差には変動がないままだった

山岳賞は増田がキープ、ポイント賞はゴールポイントを25獲得したホセの手に移った。新人賞も留目がキープしている。



優勝したホセ

優勝したホセは表彰台で、前日よりコンディションもよく、後続集団との差もキープできたとレースを振り返った。「最後の最後まで勝てるかどうかはわからなかった」と語ったが、個人総合の順位が上位ではなかったため、動きやすく、チャンスがあるのではと思っていたという。ゴール勝負は審議がかかる形になったが、表彰台では終始笑顔だった。また、ポイント賞ジャージもあわせて獲得することになった。TOJのブルージャージを着るのは初だというホセは「ジャージの色に関わらず、特別なジャージを着られることはとても幸せです」と、にこやかに語った。



リーダーの座を見事に守った増田

グリーンジャージを守った増田は「『なんとか』(ジャージを)守り切った」と苦笑いで語った。「6分近くまで差が開き、正直厳しいかと思うシーンもあった」という。この日はチームメイトの落車もあり、助けを得られない局面もあったが、利害が一致するチームと協力しあい、タイム差を縮めることができたという。最終ステージはチームのスプリンターのステージ優勝も目指し、チームとして、リーダージャージを守り抜いていきたい、と力強く語った。
「短縮されたとはいえ、走る場を与えてもらい、幸せに思う」と増田らしく、大会関係者への感謝の言葉も忘れなかった。



各カテゴリーのリーダーたち。増田がグリーンとレッドを、留目(日本ナショナルチーム)がホワイトを守った。ブルージャージはホセの手に

新人賞を守った留目は「守り抜くことができました」と明るく語った。「チームとして、自分の地位を上げつつ、ステージ優勝をということになるが、チームで協力し合いながら、がんばりたい」とコメントを残した。

最終ステージは、東京大井埠頭の特設コースで開催。平坦でタイム差の付きにくいコースではあるが、増田を追うチームは個人総合順位の大逆転をかけ、また、スプリンターを擁するチームを中心に、一勝をもぎとるために、全力で挑んでくることが予想された。

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2021ツアー・オブ・ジャパン 第2ステージ相模原
【ステージ順位】
1位/ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ) 2時間38分44秒
2位/仮屋和駿(日本大学)+0秒
3位/山本元喜(キナンサイクリングチーム)

【個⼈総合時間賞(グリーンジャージ)】※第2ステージ終了時
1位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 5時間16分11秒
2位/トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)+11秒
3位/山本大喜(キナンサイクリングチーム)+44秒

【個⼈総合ポイント賞(ブルージャージ)】※第2ステージ終了時
1位/ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ)25p
2位/仮屋和駿(日本大学)20p
3位/小出樹(京都産業大学)15p

【個⼈総合⼭岳賞(レッドジャージ)】※第2ステージ終了時
1位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)15p
2位/トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)12p
3位/山本大喜(キナンサイクリングチーム)10p

【個⼈総合新人賞(ホワイトジャージ)】※第2ステージ終了時
1位/留目夕陽(日本ナショナルチーム)
2位/小出樹(京都産業⼤学)
3位/仮屋和駿 (日本大学)

【チーム総合成績】※第2ステージ終了時
1位/マトリックスパワータグ 15時間54分59秒
2位/キナンサイクリングチーム +5秒
3位/チームブリヂストンサイクリング +12分48秒

写真、画像提供: 2021ツアー・オブ・ジャパン