規格外の右サイドバックが帰ってくる。J1リーグにデビューした年に早くも世界から注目を集めて、優勝を置き土産に翌シーズン…
規格外の右サイドバックが帰ってくる。J1リーグにデビューした年に早くも世界から注目を集めて、優勝を置き土産に翌シーズン途中にドイツに旅立った男。フランスの港町のクラブに定住の地を見出すと、風の便りにその活躍は伝わって日本代表に召集、2018年のロシア・ワールドカップでは、4戦すべてに出場してベスト16に貢献した。酒井宏樹の復帰は、浦和レッズというクラブはもちろん、リーグ全体に大きな影響をもたらすかもしれない。
■リーグアンで磨き上げた唯一無二の個性
ドイツでは、綿密に戦術を組み上げるようなサッカーが主流で、今ではユルゲン・クロップをはじめとしてドイツ人監督は世界各国で活躍している。そんな戦術的なサッカーが盛んなドイツだからこそ、テックニック的には優れていてもフィジカル的に弱点のある日本人選手にとってもプレーしやすく、ブンデスリーガではこれまでも多くの日本人選手が成功を収めてきたのだった。
これに対して、リーグアンは精密な戦術に基づいたプレーというより、アフリカ系の選手によるスピードやパワーを生かしたプレーが目立つ。
つまり、フランスではサイドバックはポジション的にも、そうしたスピードやパワーを武器とする相手との対応が多くなるのだが、そうした相手にうまく対応できたのは酒井がもともと持つフィジカル的な能力の高さがあったからなのだろう。
酒井は、日本代表でもフィジカル的にタフな守備をしたかと思えば、ダイナミックにボールを持って前線まで持ち込んだりと、緻密さは感じないが、しかし非常にダイナミックなプレーを見せている。繊細なプレーが主となっている日本代表で、酒井のプレーは一つのアクセントになっている。もちろん、柏にいた若い頃に比べれば戦術的な幅も大きく増しているのではあるが……。
選手の入れ替わりの激しいフランスでは、チームメートの顔ぶれもどんどんと変り、また相手チームのさまざまなタイプのウィンガーと対峙したことによって、酒井の戦術的な幅は大きく広がっている。
■ロドリゲス監督の求めるサイドバック像は?
さて、そんな酒井の加入によって浦和レッズのサッカーにはどのような変化が生まれるのだろうか?
今シーズンから浦和を率いるリカルド・ロドリゲス監督は戦術家である。
昨シーズンは徳島ヴォルティスを率いて可変システムのモダンなサッカーを実践。徳島をJ2優勝、J1昇格に導いてからJ1のビッグクラブである浦和にやって来た。
その徳島のサッカーの一つのポイントが右サイドバックの藤田征也(あるいは岸本武流)だった。4バック・システムのサイドバックが攻撃時には高い位置を取って攻撃の幅を広げる流動的なサッカーだった。
活動の舞台を浦和に移した2021年シーズンでもそうした戦術的なサッカーが期待されたが、今のところまだチームの完成度は上がっていない。
今シーズンの浦和は、右サイドバックとしてはこれまで左を主戦場としてきた宇賀神友弥が起用されることが多く、試合によっては宇賀神がタッチライン沿いをオーバーラップしたり、インサイドハーフ的なポジションを取ったりすることに挑戦しているが、必ずしも機能はしていない。宇賀神は慣れているポジションが左であるうえ、従来型のサイドバックだからだ。
そんな中、左サイドバックは山中亮輔が使われることが多かったが、最近は明本考浩が起用されることもある。これまで、MF起用が多かった選手だ。
リカルド・ロドリゲス監督としては、戦術的な幅を持ったサイドバックがほしいところなのだろう。