関東インカレから見る大学駅伝の勢力図 後編 前編から読む>> 正月の箱根駅伝でシード権(10位以内)を確保できなかった大学は、秋の予選会で本戦出場をかけた熾烈な争いに臨むことになる。各校は5月の関東インカレ(1部・2部)でどんな戦いを見せた…

関東インカレから見る大学駅伝の勢力図 後編 前編から読む>>

 正月の箱根駅伝でシード権(10位以内)を確保できなかった大学は、秋の予選会で本戦出場をかけた熾烈な争いに臨むことになる。各校は5月の関東インカレ(1部・2部)でどんな戦いを見せたのか。現時点での「戦力」をチェックしてみたい。



雨が降る中で行なわれた、昨年の箱根駅伝予選会

 予選会出場校では、箱根11位で惜しくもシード権を獲得できなかった明治大(2部)の戦力がずば抜けている。

 10000mは鈴木聖人(4年)が28分09秒24で4位、手嶋杏丞(てじま・きょうすけ:4年)が28分13秒70で7位。共に自己ベストの快走で、ケニア人留学生に混じって入賞ラインを上回った。5000mも鈴木が5位、富田峻平 (3年)が8位に入ってダブル入賞。ハーフマラソンでも小澤大輝 (3年)が5位に食い込んでいる。

 チームは箱根こそ11位に終わったが、昨年11月の全日本大学駅伝は3位。今季の駅伝シーズンでも上位争いできるだけの戦力がありそうだ。

 個人では箱根14位の日体育大(1部)の3年生、藤本珠輝(ふじもと・たつき)の快走が目立った。10000mは28分18秒52で4位(日本人2位)、同5000mは6位(日本人4位)。今大会、1部の5000mと10000mで日本人選手唯一となるダブル入賞を果たした。

 なお藤本は、今季10000mで28分08秒58をマーク。6月6日の日体大長距離競技会5000mでは、42年ぶりのチーム新となる13分32秒58を叩き出している。他にも、大畑怜士(おおはた・れお:4年)が入賞こそ逃したものの、10000mで自己ベストの28分41秒93で9位。今後の、チーム全体の戦力アップに期待だ。

 箱根17位の法政大(1部)では、1区で区間賞を獲得し、3月の学生ハーフを制した鎌田航生(かまた・こうき:4年)が活躍。10000mで自己ベストの28分30秒61で7位に入った。法大はハーフマラソンでも、河田太一平(かわだ・たいへい:3年)が5位に入っている。

 その他、箱根12位の中央大(1部)は、5000mでU20日本記録を持つ吉居大和(2年)をエントリーしなかったこともあるが、長距離3種目(5000m。10000m、ハーフマラソン)で入賞したのは、ハーフマラソン8位の倉田健太 (4年)のみ。少し寂しい結果に終わった。

 箱根13位の神奈川大(2部)は西方大珠(4年)が3000m障害で2位。箱根15位の拓殖大(2部)はジョセフ・ラジニ(3年)が5000mで6位、10000mで8位に入ったが、2校とも全体的な戦力アップはこれから。今年、7年ぶりの箱根出場を果たすも最下位の20位だった専修大(2部)は、チーム初となる留学生のダンカン・キサイサ(1年)が5000mで9位に終わったこともあり、長距離3種目で入賞者を出すことはできなかった。

 なかなか戦力が整わない大学がある中で、予選会で箱根への切符を狙う各校が着々とチーム力をアップしてきている。

 日本大(1部)は、チャールズ・ドゥンク(3年)がハーフマラソンで2位、松岡竜矢(3年)が5000mで7位。長距離3種目で2人が入賞すると、留学生2人が参戦したハイレベルの10000mでも松岡が10位、樋口翔太(3年)が12位と健闘した。

 今季から4度目の"登板"となる小川聡駅伝監督が就任。出雲駅伝を2度、全日本大学駅伝を1度制している指揮官のもと、10000mでは樋口が28分09秒06、松岡が28分21秒06をマークするなど主力がタイムを伸ばしている。昨年の箱根で6年ぶりにシード権を逃し、同年の予選会18位で今年は出場もできなかったが、名門復活の兆しが見えはじめている。

 1部の長距離部門では、留学生の活躍が目立った。

 流通経済大は13年ぶりの留学生となるサムソン・ディランゴ(1年)が、10000mを自己ベストの28分01秒80、5000mを後続に9秒差をつける13分39秒92で完勝した。ちなみにディランゴは、実業団のサンベルクスを経て26歳で入学した選手だ。

 駿河台大のジェームズ・ブヌカ(4年)は10000mで3位、5000mで4位。ハーフマラソンは国士舘大のライモイ・ヴィンセント(4年)が、日大のドゥング、山梨学院大のポール・オニエゴ(4年)とのラスト勝負を制している。一方で、留学生不在の城西大は、長距離種目の入賞者を出すことができずに2部降格となった。

 2部では、箱根シード校選手と留学生の厚い壁に阻まれ、長距離3種目での箱根予選会校の日本人入賞者は2人しかいなかった。5000mで自己新となる13分57秒83を出し、7位に食い込んだ中央学院大・吉田礼志 (1年)と、ハーフマラソンで6位に入った関東学院大・厚浦大地 (4年)だ。

 ルーキーの吉田はラスト1周まで日本人トップ争いに加わり、留学生2人に先着した。中央学大は3000m障害でも、吉田光汰(4年)が8分46秒55の自己ベストで優勝。上野航平(3年)も3位に入っている。

 4年生の吉田は、「強い1年生が入学したので、自分らもやらなきゃいけないという気持ちになっています。全日本予選に向けて、チームに勢いづけられる走りができたかなと思います」と話した。中央学大は昨年の箱根予選会でまさかの敗退。連続出場が「18」で途絶えたため、今季からユニフォームをリニューアルした。フラッシュイエローのシャツに黒のパンツというスタイルで"再出発"。なお、関東インカレは欠場したが、エース栗原啓吾(4年)が今季、10000mチーム歴代最高の28分03秒39をマークしている。

 各校の次なる戦いは、6月19日に行なわれる全日本大学駅伝の関東学連推薦校選考会。前回の全日本で8位までに入った駒大、東海大、明大、青学大、早大、東洋大、帝京大、順大はシード権を獲得しており、選考会で残りの関東枠「7校」が決まる。

 選考会には、10000m8人の合計タイム上位20校(中大、國學院大、中央学大、東京国際大、日体大、国士大、創価大、日大、神奈川大、山梨学大、拓大、大東文化大、城西大、上武大、法大、駿河台大、立教大、専大、亜細亜大、慶應義塾大)が出場。今回は立大が初参戦で、慶大が21年ぶりの出場となる。次点の麗澤大は、約13秒差で出場権を逃した。

 エントリー10000mの合計タイムで上位につける中大、國學院大、中央学大、東京国際大の4校は通過が有力。同5位~10位(日体大、国士大、創価大、日大、神奈川大、山梨学大)は53秒以内の僅差だけに、上記6校がボーダー争いの中心になりそうだ。

 他にも拓大、上武大、城西大、法大なども戦力的には大差がなく、チャンスがあるだろう。箱根の予選会を突破するためのひとつの目安は、全日本の選考会で12位以内に入ること。総合力が試されるレースだけに、まずは選考会の各校の走りに注目したい。